9月20日、Futurismが「US Federal Register Caught Using Chinese AI Model for Document Search」と題した記事を公開した。米国連邦政府の公式官報「Federal Register」の文書検索インターフェースに、中国製AIモデル「Qwen」が組み込まれていたことが発覚した件について詳しく報じている。
連邦政府の公式文書検索にAlibaba製モデルが存在
発端は、スイス在住のコモディティ・ポートフォリオマネージャーがXに投稿した1枚のスクリーンショットだ。
米国連邦政府の公式官報であるFederal Registerの文書検索UIには、「検索モード」の選択欄が存在する。デフォルトは「semantic(セマンティック検索)」だが、そこに「Qwen3:0.6B」を使う2つのオプションが存在していた。Qwen(通義千問)は、中国のAlibaba Cloudが開発した大規模言語モデルだ。
提供されていた2つのオプションのうち、一方は「hybrid」モデルと表記され、「512D, Recursive Splitting, Distilled, Prefixed」と説明されていた。もう一方はQwen3:0.6B——パラメータ数約6億という比較的軽量なモデルだ。
この投稿が拡散されてから約1日後、両方のQwenオプションはFederal Registerの検索UIから削除された。なお、Wayback Machineに保存されているスナップショットは9月16日付であり、元記事の公開日(9月20日)より前の時点でUIにQwenのオプションが存在していたことを示している。当時の状態はWayback Machineのアーカイブで確認できる。

「悪意ある混入」ではなく、コスト最適化の結果
記事が強調しているのは、これは悪意のある工作ではないという点だ。Federal Registerの掲載内容はそもそも一般公開されており、中国に機密情報が流出するような性質のものではない。
むしろ実態は、サイトの検索機能を担当していた担当者が、コストと性能のバランスからQwenを選んだというだけの話だ。OpenAIやAnthropicなど米国の主要AIプロバイダーは、各省庁との大型契約を持ちながらも、APIのトークン単価は高い。一方で中国発のオープンソースモデルは、それと比べて大幅に安く動かせる。
Xのユーザーはこの状況を端的に表現した。
「米国政府でさえ、米国AI企業のトークン単価を払えないということだ」
これはあくまでXユーザーによる推測的なコメントだが、コスト面での選択がQwen採用の背景にあることは十分に示唆されている。
トランプ政権の「中国AI脅威論」と現実のギャップ
この発覚が皮肉なのは、タイミングだ。トランプ大統領は今週、「中国のAI産業に先を越されるわけにはいかない」として、AI開発の減速を拒否する姿勢を改めて示したばかりだった。シリコンバレーの著名な経営者たちが慎重論を唱える中でのことだ。
Dario Amodei(Anthropic CEO)をはじめとする米国のトップ起業家が中国製AIへの警戒を訴えている一方で、連邦政府の公式文書をその中国製AIで検索可能にしていた——この構図が問題の核心だ。
削除が静かに行われたことからも、Federal Register側がこの「見栄え」を問題視したことは明らかだ。
背景:中国製モデルの台頭
QwenはAlibaba Cloudが開発・公開しているオープンソースのLLMシリーズで、Qwen3ファミリーは2025年以降に急速にベンチマーク性能を向上させてきた。DeepSeekに続く形で、低コスト・高性能な中国製モデルが米国のビジネス・政府機関にも浸透しつつある状況を、この件は象徴的に示している。
詳細はUS Federal Register Caught Using Chinese AI Model for Document Searchを参照していただきたい。