9月20日、Matthias Bastianが「Trump announces "AI Force" and plans for an "AI czar" as he pushes unchecked AI growth」と題した記事を公開した。トランプ大統領がAI規制を排した成長路線を掲げ、「AIフォース」創設と「AI担当長官(AI czar)」任命を表明したことについて詳しく伝えている。
トランプ、「AIフォース」創設を宣言
トランプ大統領はTruth Socialへの投稿で、AIと新規データセンターへの批判を「左翼の攻撃」と位置づけ、ロシア疑惑や気候変動をめぐる議論と同列に扱った。
米国内では、データセンターの建設に対して地域住民からの反発が強まっている。水・エネルギーの大量消費、環境負荷、電力料金の上昇などが主な懸念として挙がっており、AIによる雇用喪失への不安もPew Research Centerの調査が示すように世界的に拡大しつつある。
こうした状況に対してトランプが打ち出したのが、**宇宙軍(Space Force)をモデルにした「AIフォース(AI Force)」の創設**と、政府内に「AI担当長官(AI czar)」を置く構想だ。Space Forceは2019年にトランプ政権下で創設された独立軍種であり、今回の「AIフォース」構想もその延長線上に位置づけられる。AI czarという役職名は、米国政府が特定政策領域の統括者に与えてきた慣用的な呼称で、薬物政策担当の「Drug czar」などに倣ったものだ。任命候補については「高いIQ」を持つ者に限ると述べるにとどめ、具体的な人名は明かさなかった。
規制より既存法の活用、AIは米GDPの25%へ
AIの悪用リスクへの対処方針として、トランプは新たな規制立法ではなく、既存の刑事法・民事法を活用する姿勢を明確にした。成長を妨げかねる規制の導入には否定的で、立法によるガードレールを設けない方針を示している。
また、AIが米国のGDPの**25%**に達する可能性があると主張し、中国に対する米国の優位を維持すると宣言した。この数字の根拠については記事内で詳述されていないが、AIを国家競争力の中核に据える姿勢を強調するものとして提示されている。
バイデン前政権が2023年に署名したAI安全に関する大統領令(Executive Order on Safe, Secure, and Trustworthy AI)は、AIシステムの安全評価や透明性確保を義務づける内容を含んでいたが、トランプ政権はこうした規制的アプローチと明確に距離を置いている。
AI安全性の懸念とのすれ違い
この発言は、AIラボのリーダーや研究者たちが相次いで発した警告の直後に出たものだ。
- サム・アルトマン(OpenAI)、イーロン・マスク、デミス・ハサビス(Google DeepMind)らは、アンソロピックのダリオ・アモデイが提唱した独立した監視機関の設置という考え方に対して関心や支持を示している。
- 42人の著名な数学者が連名で、AIの実存的リスクは「現実かつ緊急」だと警告する声明を出した。
- アンソロピックの研究者は、今後10年以内にAIが人類に壊滅的な影響をもたらす確率を10%超と見積もっている。
これらの警告は、AIの能力向上ペースに対してガバナンスの整備が追いついていないことへの懸念を共通の背景として持つ。EU AI Actなど規制強化の動きが進む欧州とも対照的で、トランプの路線はこうした世界的潮流とも一線を画す形になっている。
AIガバナンスをめぐる対立の構図
トランプの方針は、規制当局・研究者・一部のAI企業幹部が求める安全性確保の枠組みと真っ向から対立する。「AIフォース」という新機関の設置が実際にどのような権限と予算を持つのか、「AI czar」がどの省庁に属しどのような政策決定権を持つのかといった制度的詳細は現時点では不明だ。
一方で、AIインフラへの投資拡大や中国との技術覇権争いを重視する立場からは、過度な規制がイノベーションを抑制するという論拠も一定の説得力を持つ。トランプ政権のアプローチが実際の政策・予算・立法にどう落とし込まれるかは、今後の注目点となる。
AIガバナンスをめぐる米国内の議論の分断は一層深まっており、「AIフォース」構想の具体化とともにその行方が問われることになる。
詳細はTrump announces "AI Force" and plans for an "AI czar" as he pushes unchecked AI growthを参照していただきたい。