9月19日、The Decoderが「Qwen3.8-Omni-Flash undercuts Google's Gemini Flash pricing while matching its multimodal benchmarks」と題した記事を公開した。AlibabaのQwenチームが新たに公開したマルチモーダルモデル「Qwen3.8-Omni-Flash」が、GoogleのGemini Flashに匹敵するベンチマーク性能をより大幅に低い価格で実現しているという内容だ。中国系OSSモデルが商用APIの価格水準を揺さぶりつつある流れの中で、今回の発表はその典型例といえる。
背景:Qwenシリーズとは何か
Qwenは、中国のAlibaba Groupが開発・公開しているLLMおよびマルチモーダルモデルのシリーズだ。Qwen公式GitHubでは主要モデルがオープンソースとして公開されており、Meta系のLlamaシリーズと並んで、中国系OSSモデルの代表格として国際的な認知を得ている。2024年以降、Qwen2・Qwen2.5と短期間でアップデートを重ね、マルチモーダル対応(テキスト・画像・音声・動画)も着実に拡張してきた。
Alibabaは自社クラウドであるAlibaba Cloud(阿里雲)のAI基盤強化を軸に、Qwenシリーズを対外的なAI競争力の柱に据えている。今回のQwen3.8-Omni-Flashは、そのマルチモーダル路線の「軽量・低価格帯」を担うモデルとして位置づけられる。
価格差が最大のポイント
エンジニアがモデルを選定する際、性能と価格のバランスは最重要項目だ。その観点でQwen3.8-Omni-Flashは注目に値する数字を出している。
APIの価格は入力100万トークンあたり$0.15、出力100万トークンあたり$0.47。音声入力は1時間あたり$0.01未満、720p・1fps相当の動画(音声込み)は約$0.20と見積もられている(レスポンスコストを除く)。
対してGoogleのGemini Flashは、現在の導入価格で入力$0.75、出力$3.75(いずれも100万トークンあたり)だ。なお元記事では「Gemini 3.8 Flash」という表記が用いられているが、これはGemini 2.0 Flash系列の派生版を指している可能性があり、Googleの公式モデル命名規則とは異なる表記である点に留意されたい(※本稿では元記事の表記に従い「Gemini Flash」と記載する)。さらにこの価格は2027年1月1日に倍額になる予定とも元記事は伝えているが、この日程はGoogleの公式発表に基づくものとみられ、変更される可能性もある。
単純比較すると、入力コストで約5分の1、出力コストで約8分の1という差になる。
マルチモーダル性能はGemini Flash相当と主張
Qwen側の説明によると、音声・動画タスクのベンチマークでGemini Flashに近い性能を発揮するとしている。

Qwen 3.8 Omni FlashのマルチモーダルベンチマークとGemini Flashの比較。Image: Qwen
対応するモダリティ(※モデルが扱える入出力の種別。テキスト・画像・音声・動画などがある)は音声と動画の同時処理で、コンテキストウィンドウ(※モデルが一度に処理できるテキスト・トークンの最大量)は100万トークン。動画の編集・短尺動画の翻訳・映画の要約といったタスクを念頭に設計されており、ツール呼び出しを自律的に行うAIエージェント(※ユーザーの指示に基づいて外部ツールやAPIを呼び出しながらタスクを自律的に遂行するAIシステム)向けのモデルとして位置づけられている。
エージェント連携とオープンソースのプラグイン
モデル単体の利用にとどまらず、既存のAIエージェントに組み込むための周辺OSSも合わせて公開されている。
- **Qwen-MM-Plugins**:動画編集・話者認識・PDFの動画ノート生成・再利用可能なワークフローなどをエージェントに追加するプラグイン群。Claude Code、Gemini CLI、Qwen Codeといった既存のコーディングエージェントに対応している。
- **Qwen-Live Harness**:カメラとマイクを使ったリアルタイムインタラクションを実現するツール。
モデル自体はQwen Studio、Qwen Cloud、およびAlibaba CloudのAPIから利用可能だ。
注意点と読み解き方
ベンチマーク結果はQwen自身が公表したものであり、独立した第三者評価ではない点は留意が必要だ。価格優位性は数字として明確だが、実運用での品質差については自前での検証が求められる。
中国系OSSモデルの台頭という文脈で見ると、今回のような低価格・高性能を訴求するリリースはQwenに限らず続いており、商用APIの価格競争を加速させる要因となっている。コスト重視のプロダクト開発においては、選択肢の一つとして評価する価値があるだろう。関連する動向としては、Qwen公式ブログでも詳細な技術解説が継続的に公開されている。
詳細はQwen3.8-Omni-Flash undercuts Google's Gemini Flash pricing while matching its multimodal benchmarksを参照していただきたい。