9月16日、PCMagが「Nvidia, Meta CEOs Argue Against Anthropic's AI Slowdown Plan」と題した記事を公開した。NvidiaのJensen HuangとMetaのMark Zuckerbergが、AnthropicのCEO Dario Amodeiによる「AI開発を政府主導で減速させるべき」という提言に対し、相次いで公式に反論した。AI開発の主導権を誰が持つべきか——企業か、政府か——をめぐる業界の亀裂が、明確な形で表面化した。
Anthropicの「減速論」とは何か
発端は、AnthropicのCEO Dario Amodeiが公表した提言だ。AI開発ペースを業界全体で落とし、安全性が確認されたモデルだけをリリースするよう政府が介入すべき、という内容である。
Amodeiの提言の具体的な内容は以下の3点だ。
- 各AI企業内でのサードパーティ評価者の拡充
- 米政府と共同で策定するAI安全基準の整備
- AIの危険な用途を制限するための米政府による国際合意の推進
これに対し、HuangとZuckerbergが相次いで反論した。元記事によれば、両者はAmodeiの提言が公表されてから最初の数日間はこの議論に加わっていなかったが、今回の発言で「政府規制なし・企業責任」という立場を明確にした形だ。
Huang「新しい規制は不要。既存の法律で十分だ」
NvidiaのCEO Jensen HuangはCNBCのインタビューで真っ向から反論した。
「新しい法律や新しい独禁法、新しい規制が必要だという主張は、まったく不要だ。我々にはすでに製品の信頼性と機能を管理する十分な法律と規制がある」
Huangはただ安全性を軽視しているわけではない。重要なのは「誰が責任を持つか」という点だ。彼の立場は明快で、「製品を作って適切にテストする。リリース準備ができていなければ、準備が整うまでテストと開発を続ける。それだけだ」というものだ。政府主導ではなく、各企業のエンジニアリング責任を主軸に置いた議論である。
Zuckerberg「Metaはすでにやっている。他社もそうすればいい」
MetaのCEO Mark ZuckerbergもXへの投稿で反論した。安全性の重要性は認めつつも、政府介入なしに自社で対処できると主張した。
「誰にとってもポジティブな未来を築く鍵は、適切なパワーバランスを維持することだ。これは我々の力で実現できる」
具体的な根拠として、Zuckerbergは最新のAIモデルのリリースを内部的な安全懸念から数ヶ月間延期したことを明かした(元記事ではモデルの正式名称は明示されていない)。「他社に要求してからやったわけではない。正しいことだから、日常業務の一環としてやった」と述べている。
さらにZuckerbergは、ライバル企業に対して独立した外部評価者やアドバイザーの積極活用を提案した。Metaはすでにそれを実践しており、「他のラボも同じことをすればいい」と言い切っている。サードパーティAI評価者産業の拡大も望むとしており、業界の自主規制で十分だという立場だ。
トランプ大統領も規制に否定的
米国のDonald Trump大統領もAmodeiの提言に反対しており、AI安全性への懸念について「誇張された議論だ」と批判した(元記事では原文の引用表現を確認されたい)。「ガードレールを設けることはできる。ただ、起きもしないことを誇張して騒ぎ立てる非常にネガティブな勢力が多くいる」と発言している。
業界を二分する構図
Amodeiの提言を機に、主要CEOの立場が可視化された。元記事によれば、Sam Altman(OpenAI)、Demis Hassabis(Google DeepMind)、Elon Musk(xAI)らがAmodeiの提言に沿った立場を示している一方、HuangとZuckerbergは明確に反対派として名乗りを上げた。
| 減速論に沿う立場 | 反対・懐疑的な立場 |
|---|---|
| Sam Altman(OpenAI) | Jensen Huang(Nvidia) |
| Elon Musk(xAI) | Mark Zuckerberg(Meta) |
| Demis Hassabis(Google DeepMind) | Donald Trump(米大統領) |
※上表の各人物の立場は元記事の記述に基づく。発言の詳細なニュアンスについては元記事を直接参照されたい。
HuangとZuckerbergの共通点は「安全性の重要性は認める、しかし規制ではなく自律的なエンジニアリング判断で対処すべき」という点にある。政府主導の標準化に対し、業界の自主規制を対置させた構図であり、今後のAI政策論争の軸になりそうだ。AI規制をめぐる議論の背景については、EUのAI Actや米国のAI行政命令(Executive Order on AI)も参照すると理解が深まる。
詳細はNvidia, Meta CEOs Argue Against Anthropic's AI Slowdown Planを参照していただきたい。