9月15日、El Paísが「US and China bare their teeth over AI: from fear of the apocalypse to a tech cold war」と題した記事を公開した。この記事では、AIをめぐる米中の覇権争いが「テック冷戦」として新たな局面を迎えていることについて詳しく紹介されている。
「AIを制する者が勝つ」——トランプが示した構図
トランプ大統領はこう言い切った。「AIを制する者が勝つ」。そして翌日には、AIやデータセンターへの規制論を「中国だけが喜ぶ陰謀だ」と切り捨てた。
この発言の背景には、Anthropicの研究者Jacob Coxonが投稿したSNSへの投稿がある。「AIを開発している人々は、今decade(10年)が終わるまでにAIが人類を滅ぼしかねないと本気で信じている」——この一文が公開討論に火をつけ、「AI黙示録」の修辞が米中間の政治的摩擦にまで波及した。
北京はすぐさま反発した。外務省報道官の郭嘉昆は「危機感の煽動や対立、無慈悲な競争は、AIのグローバルガバナンスを乱すだけで誰の利益にもならない」と述べた。
Anthropicのアモデイ、米中双方から攻撃される
今回の論争で最も興味深い構図は、Anthropic CEOのDario Amodeiが米中両サイドから批判を受けた点だ。
Amodeiは自身のエッセイで、AIエージェントの群れがウェブを荒廃させる未来を描いた。「AIの能力開発が加速する現状では、6〜12か月以内にそのような群れが持続的なボットネットでインターネット全体を掌握できるようになると懸念している。被害は数千億ドル規模に達し得る」と記した。
その上でAmodeiは、「中国のAI優位は米国と世界にとって重大な危険をもたらす」とし、先端チップの対中輸出規制継続を求めた——にもかかわらず、ホワイトハウスもAmodeiを攻撃した。
トランプ政権が嫌ったのは、Amodeiが提案した「外部の組み込み評価者(embedded evaluators)」によるモデル審査の仕組みだ。AIの能力が数週間で倍増するような市場で、製品ローンチ前に監査を義務付ければ、中国企業に追い越される隙を与えると判断した。
DeepSeekが示した「制裁の抜け穴」
2025年1月、中国のDeepSeekがChatGPTに匹敵する性能のAIツールを無償・オープンソースで公開した。DeepSeekは杭州拠点の量子ファンド系スタートアップで、それまで西側ではほぼ無名の存在だった。しかも米国による先端チップの対中輸出規制(いわゆるチップ禁輸措置)が敷かれた状況下で、米国勢より圧倒的に少ない計算資源で開発されていた。米国企業が数十億ドルを費やして競い合う中、DeepSeekは計算コストを大幅に削減できる「ショートカット」——具体的には効率的な学習アルゴリズムや蒸留技術の活用——を見つけていた。
米国側からは「中国が米国技術を模倣している」との批判がすぐに上がったが、より深刻なリスクは別にある。DeepSeekのモデルがオープンソースで公開されたことにより、世界中の開発者が無償で利用・改変でき、中国企業が安価なチャットボットで米国企業の市場シェアを奪う可能性が現実味を帯びた。チップ禁輸で中国のAI開発を封じ込めるという米国の戦略が、少なくとも一部において機能していない可能性を示した事例として、業界に大きな衝撃を与えた。
自主規制という「囲い込み」戦略
こうした状況を受け、OpenAI・Anthropic・Googleの3社が自主規制の枠組みを議論していると、シリコンバレーメディアのThe Informationが報じた。
Amodeiがまず提案を公開し、GoogleのDemis Hassabisが続き、OpenAIのSam Altmanが「フロンティアリスク(frontier risk)を管理する一貫したルール」の必要性を訴えた。フロンティアリスクとは、現時点で最先端に位置するAIモデルが社会・安全保障にもたらし得る未知のリスクを指す概念で、AIガバナンス議論における主要な論点のひとつとなっている。
米国の主要テック企業が自国市場で規制標準を作れれば、アジア系競合のウイングをクリップできる——という含意がある。
※編集部の考察:元記事はTikTokに対してバイトダンスを締め出した国家安全保障論理との構造的類似を示唆しているが、自主規制議論とTikTok規制を直接結びつける記述が元記事のどの箇所に対応するかは明示されていないため、この点は解釈として読んでいただきたい。
9月24日、習近平がホワイトハウスへ向かう予定
9月24日、トランプはホワイトハウスの執務室で習近平を迎える予定だ。米中両国はすでに、最強力なAIモデルの安全性について議論する準備を進めている。
前回、2025年9月の電話会談でTikTokの行方を決めた2人の首脳は、今度は「テクノロジーの黙示録」をどう止めるかを議論しなければならない状況に置かれている。
詳細はUS and China bare their teeth over AI: from fear of the apocalypse to a tech cold warを参照していただきたい。