9月15日、tintotint.euが「How much of F-Droid is LLM generated?」と題した記事を公開した。Android向けのFOSS専用アプリストア「F-Droid」に登録されているアプリのリポジトリを実際に調査し、どの程度がLLMによって生成されたコードかを分類・検証した結果を報告している。
102件の更新バッチを目視で判定したところ、30件超——約3割——が「ほぼAI生成」と判定された。LLMが生み出す低品質コンテンツを指す「スロップ(slop)」という言葉はブログ記事や画像生成の文脈で広まってきたが、OSSのコードベースにも同様の現象が静かに侵食しつつある実態を、具体的な数字と個別事例で示した調査だ。
調査の発端:AI生成アイコンの発見
F-Droidをブラウズしていた筆者は、あるアプリに「明らかにAI生成とわかる不格好なアイコン」が使われているのを発見した。それをきっかけに「F-DroidにあるアプリのどれくらいがAI製なのか」という疑問が生まれ、実際の調査へと発展した。
F-DroidはAndroid向けのFOSS(フリー&オープンソースソフトウェア)専用アプリストアだ。プライバシーや自由を重視するユーザーに支持されており、Google Playに依存しない代替エコシステムとして知られている。F-Droidは再現可能ビルドの確認を重視するプラットフォームであり、コードの内容そのものをはじく仕組みは持っていない。そのため、LLM生成コードが混入しやすい構造的な背景がある。
結果:102件中30件超が「ほぼAI」
調査対象は2026年9月12日にF-Droidへプッシュされた更新バッチ、計102アプリだ。機械的な検出ツールは使用せず、筆者が設定した3段階の評価基準をもとに目視で判定している。
- Mostly AI(ほぼAI):LLMの痕跡が顕著で、コードの50%超がLLM作成と推定。Claude CodeやCodexなどのエージェント型インフラが存在する場合は自動的にこの区分
- Hard to say / Mostly human(判断困難/ほぼ人間):一部のLLMコミットは見られるが、全体的には人間が書いたと判断できる
- No signs of AI(AIの痕跡なし):不審な点が見当たらないか、厳格なLLM禁止ポリシーを持つ
判定の根拠は「最近のコミット内容」「READMEの文体」「エージェントインフラの存在」「Co-authored-by: Claudeなどの署名」など、いわゆる「LLMの痕跡」だ。結果として、102件のうち30件以上(約30%)が「Mostly AI」と判定された。
個別の判定結果:具体例から見えるもの
「Mostly AI」と判定されたアプリの例を挙げる。
Amber(Nostr向けイベント署名アプリ。Nostrは分散型ソーシャルプロトコル)は、直近のコミットがすべてLLM作成で、Claude CodeとCodexのエージェントインフラも確認された。
Feeder(RSSリーダー)は、筆者自身が実際に使用しているアプリだと断りつつ、最近のコードコミットがLLM生成に見え、エージェントからのPRも受理されているとして「Mostly AI」と判定した。「残念ながら、動くことは動く」というコメントが印象的だ。
BayesianBahn(ドイツ鉄道の遅延統計アプリ)は全コミットがClaude共著。筆者は「ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)のひどさがvibe-codingで非公式時刻表を作らせるほどになった、というのは確かに笑える」と皮肉を述べている。vibe-codingとは、LLMに曖昧な指示を出しながらその場の感覚でコードを生成させる開発スタイルを指す。
Chompass(カロリートラッカー)は、ホスティング先であるCodebergの利用規約に違反している可能性があると指摘されている。Codebergは欧州を拠点とするOSS向けGitホスティングサービスで、AI生成コンテンツに関する規約を設けている。
一方でBinary Eye(バーコードスキャナー)やAves Libre(ギャラリーアプリ)などは「No signs of AI」と評価されている。また別の意味で異彩を放ったのがDuressKeyboardだ。開発者がGitの使い方を理解しておらず、GitHubのWebエディタ上でファイルを手コピペしてコミットし続けているという、AI生成とは異なる種類の奇妙さがある。
調査の限界とOSSエコシステムへの含意
筆者は自身のバイアスについても正直に開示している。LLMは「非常に有用で能力が高い」と認めつつ、「プログラミングや社会全体に対して行ったことが本当に嫌いだ」と述べている。自分でコードを書く達成感が薄れること、vibe-codingすると「自分は何もしていない、機械がやった」という感覚になることを問題視しており、調査自体がその感覚への反応という側面もある。
「あくまで表面的な評価であり、誤りが含まれる可能性がある」とも認めており、エンジニアリング的な厳密性よりも「観察に基づく調査報告」として読むべき内容だ。
それでも、エージェントが自動でPRを投げ、レビューなしでマージされ、F-Droidに公開される——このパイプラインがすでに動いているという事実は、OSSコミュニティにとって無視しにくい問題だ。F-Droid側のポリシー対応や審査基準の見直しが今後問われる可能性がある。
詳細はHow much of F-Droid is LLM generated?を参照していただきたい。