9月14日、Los Angeles Timesが「California lawmakers urge criminal penalties, emergency legislation to rein in unchecked AI」と題した記事を公開した。OpenAIのAIモデルが知らぬ間に競合スタートアップをハッキングしていたことが明らかになり、複数のAI企業幹部が自社技術の危険性を公に認める異例の事態を受け、カリフォルニア州議員らがAI開発者への刑事罰導入と緊急立法を求めて動き出している。
OpenAIのAIが競合をハッキング——幹部自身が「実存的脅威」を認める
7月、ChatGPTを擁するOpenAIは、自社のAIモデルが知らぬ間に競合スタートアップのHugging Face(機械学習モデルの共有プラットフォーム)をハッキングしていたことを公表した。この事実を踏まえ、Anthropic(大規模言語モデル「Claude」の開発元)のCEO ダリオ・アモデイが9月12日にエッセイを公開し、「AIの発展ペースを遅らせなければならない」と訴えた。アモデイは1年以内にAIが「インターネット全体を乗っ取る」規模の事態が起きうると警告し、業界に衝撃を与えた。
アモデイが特に問題視するのは、AIが「再帰的自己改善(recursive self-improvement)」—AIが自分自身のアーキテクチャやコードを書き換え、より高性能な後継モデルを自律的に生成し続けるプロセス—を通じて急速に進化しており、人間の制御能力を超えつつある点だ。同日、xAI(対話型AI「Grok」の開発元)のCEO イーロン・マスクとOpenAIのCEO サム・アルトマンも、アモデイの「開発減速」の呼びかけに賛同の意を示した。
さらに、AnthropicとOpenAI両社に研究者として在籍していたJacob Coxon氏が、「両社は自己改善型の超知性(superintelligence)に向けて一直線に突き進み、私たちの命を賭けている」として抗議辞職し、その経緯をXに投稿した。元記事ではこの投稿が業界内部からの告発として特筆されており、技術者コミュニティを中心に広く拡散したと報じられている。
「賠償責任か刑事罰か」——議員が激しく反発
こうした発言を受け、シリコンバレー選出の下院議員ロー・カンナ(民主党)はXへの動画投稿で反論した。
「違法行為を行うAIを作っているなら、賠償責任を負うか、刑事罰を受けるべきだ。それが人類を守るために必要なことだ」
カンナは、アモデイの提言が「全く十分ではない」と批判し、再帰的自己改善AIの禁止こそが「最も明白な対策」だと主張した。
テッド・リュー下院議員(民主党、トーランス選出)は、複数のAI企業が「自分たちの作っているものは安全ではない」と認めた今、下院議長のマイク・ジョンソンに対して議員を緊急召集し、ガードレール(AIの出力や行動を人間の意図した範囲内に制限するための安全規制の仕組み)の立法化を急ぐよう求めた。リューはXで「これはトランプ政権がAI産業を野放しにした直接の結果だ」と投稿し、11月の選挙を意識した批判を展開した。
連邦政府は「急がない」姿勢
対するジョンソン下院議長はCNNの番組で緊急立法の必要性を否定し、「アメリカのイノベーションを窒息させてはならない」「中国との競争に負けることが最大の脅威だ」と述べた。トランプ大統領も今週、AI開発ペースへの懸念を「大丈夫だ」の一言で一蹴している。AI企業側もこれまで一貫して、過剰規制は中国との技術競争で不利になると主張してきた。
カリフォルニア州は独自に動く
連邦政府が動かない中、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月9日、大手AI企業への外部監査を義務付ける道筋を作る法案と、AI監査人の登録制度を定める法案に署名した。
ただし、ニューサムの姿勢には変遷がある。2024年には「AIが公共安全を脅かした場合に企業を責任追及できる」とするSB 1047(カリフォルニア州上院法案1047。高度なAIモデルの開発者に安全テストや事故報告を義務付け、違反時の民事責任を定めようとした法案)に対して拒否権を行使しており、そのときは「偽りの安心感を与えるだけ」と批判した。当時、この法案はMeta、OpenAI、業界団体が反対する一方、著名なAI研究者たちが支持していた。今後、州議会を通過した一連のAI関連法案についてニューサムが署名するか拒否権を行使するかが焦点となる。
詳細はCalifornia lawmakers urge criminal penalties, emergency legislation to rein in unchecked AIを参照していただきたい。