9月14日、Anton Shilovが「Russian freelancers use Claude to program autonomous combat drone swarm」と題した記事を公開した。ロシアを拠点とするフリーランス開発チームがAnthropicのAI「Claude」を悪用し、自律型戦闘ドローン群の制御ソフトウェアを構築していた事実が、Anthropicの公式スレットレポートによって明らかになった。
人間不在で標的を選択・爆破——Claudeを悪用した自律ドローン兵器開発
Anthropicが2026年9月に公開したスレットレポート(脅威動向報告書)で、ロシアを拠点とする小規模なフリーランス開発チームが、Claudeを利用して「DronDoc」または「Serafim」と呼ばれる自律型戦闘ドローン群のソフトウェアを構築していたことが確認された。
このシステムの核心は、「ヒューマン・イン・ザ・ループなし」での標的選定と起爆にある。「ヒューマン・イン・ザ・ループ」とは、システムが重要な判断を下す際に人間が確認・承認ステップを担う設計思想を指す用語であり、自律兵器の倫理議論では中心的な概念となっている。本件のシステムはこの人間による確認を排除し、AIが自動で標的を判定して起爆コマンドを発行する設計だった。具体的にClaudeが関与したのは以下の領域だ。
- スウォーム(群れ)制御:複数ドローンの協調動作
- コンピュータビジョン:ウクライナの実戦映像を学習データとして使用した標的識別
- ターミナルガイダンス:ドローンが最終的に標的へ向かう誘導フェーズの制御
- 起爆コマンドの発行:人間の判断を介さない自動判定
ウクライナの実際の戦闘映像でコンピュータビジョンシステムをトレーニングし、ウクライナ国内の地点を模擬任務のシミュレーション対象として使用していた。実際の開発ボードへのソフトウェア搭載(ハードウェア・イン・ザ・ループ・テスト)まで行っていたことも確認されているが、フィールドテストが実施されたかどうかは不明である。
Claude Codeを駆使し、VPNで地理制限を回避
開発チームはClaude Code(コーディング特化の機能)を多用してソフトウェアの構築とテストを進めた。Anthropicが設けている地理的アクセス制限については、商用VPNを経由してトラフィックをルーティングすることで回避していた。
Anthropicの利用規約では、兵器開発や軍事用途への使用を明示的に禁止しており、今回の行為はこれに直接抵触する。Anthropicは当該アクティビティを兵器開発の疑いと判断した時点でアカウントを凍結し、得た知見を追加のセーフガードに反映させたという。ただし、レポート自身が認めているとおり、セーフガードはプロジェクトを即時に止めることができなかった。Claudeを利用したコーディング支援が自律型ドローン群プログラムの開発を実際に前進させた事実は変わらない。
Anthropicはこのチームが「ロシアの国家機関ではない」と評価しているが、背後にある組織名は公表していない。
ドローン開発以外の悪用事例も複数
同レポートではドローン開発以外にも複数の悪用事例が記載されており、Claudeを通じた安全保障上のリスクが多岐にわたることが示されている。
ロシア国家関与のサイバースパイ活動:インフラ構築、フィッシング、マルウェア開発、データ窃取まで一連のサイバー攻撃をClaudeで自動化していた。ウクライナ・欧州の政府、軍、情報機関、防衛関連組織を含む20以上の組織が標的となった。
プロパガンダ工作:中央アフリカ共和国を舞台としたロシア国家主導のキャンペーンで、親ロシア・親ワグネルのコンテンツをラジオ、現地メディア、Telegramに向けて生成していた。
生物兵器リスクへの言及——Anthropic自身が「保証できない」と認める
レポートのもう一つの重要な点は、Anthropicが生物兵器リスクについて踏み込んだ表明をしていることだ。これはドローン悪用と同様、AIの能力向上が安全保障上の新たな脅威を生み出しつつあることを示す文脈で言及されている。
旧モデル(Claude Opus 4やSonnet 4.5)は「高度な生物学研究を有意に支援するレベルには達していない」と言えた。しかし、現行モデルについては同じ保証が与えられないとAnthropicは明言している。
レポートでは、国家支援プログラムや軍事機関に関与する研究者を含む5件の「生物的悪用」事例が確認された。対象の国・組織・個人名はいずれも公表されていない。なお、自律型兵器システム(LAWS:Lethal Autonomous Weapons Systems)をめぐる国際的な規制議論は国連レベルでも続いており、今回のような事例はその文脈でも注目される。
AIが「チームの仕事」を一人でこなす時代
このレポートが示す本質的な変化は、AIが以前なら複数のソフトウェアエンジニア・情報アナリスト・セキュリティ専門家のチームを要した作業を単独でこなせるようになったという点だ。Anthropicのセーフガードが多くの悪意あるリクエストをブロックしていることは事実だが、すべてを防ぐことはできないと同社自身が認めている。
詳細はRussian freelancers use Claude to program autonomous combat drone swarmを参照していただきたい。