9月15日、Search Engine Journalが「Google Tests Paying Publishers For AI Answers Via Search Console」と題した記事を公開した。GoogleがパブリッシャーのコンテンツをAI回答に活用しながら対価を支払わないことへの批判が高まる中、同社がSearch Consoleを通じた報酬支払いのパイロットプログラムをテストしていることが明らかになった。ただし支払い額の算出ロジックは一切開示されず、初期収益は広告収入と比べて「雀の涙(peanuts)」と評されるなど、業界内では慎重な見方が広がっている。
背景:AI Overviewsとパブリッシャーの緊張関係
このパイロットが注目される背景には、AI Overviewsの普及がパブリッシャーにもたらしたトラフィック減少問題がある。Googleの検索結果ページでAIが直接回答を生成するようになったことで、ユーザーが元記事へクリックする機会が減り、広告収入への依存度が高いパブリッシャーを中心に収益への打撃が顕在化している。こうした状況の中でGoogleとパブリッシャーの緊張関係は高まっており、今回のパイロットはその文脈で捉える必要がある。
GoogleがAI回答への貢献に報酬を支払う仕組み
Digidayの報道によれば、GoogleはパブリッシャーのコンテンツがGeminiアプリ、AI Overviews、AI Modeでの回答生成に貢献した場合に報酬を支払うプログラムをテスト中だ。プログラムはSearch Console上で動作し、Googleも「初期段階のパイロット」であることを認めている。
少なくとも数十社のパブリッシャーにアプローチがあったとされるが、総数は不明だ。Googleは6月18日の公式ブログ投稿でこのパイロットに言及しており、生成AIの回答の「新鮮さと事実性(freshness and factuality)」に貢献するウェブサイトとの新たな提携方法をテストしていると述べている。ただし、その投稿では支払い条件などの詳細には触れていなかった。
何が報酬の対象になるか
Digidayが公開したSearch Consoleのスクリーンショットには、「AI contribution pilot(AI貢献パイロット)」というパネルのヘルプテキストが掲載されている。報酬の対象は、コンテンツがAI回答の生成フェーズに「著しく貢献した」場合に限定される。
「ウェブコンテンツは、回答が生成された後に事実を確認したり、GoogleのAI内でリンクされたりすることもあるが、これらはAI貢献としてカウントされない」
つまり、引用リンクとして掲載されるだけでは報酬は発生しない。回答の内容そのものを形成した場合のみが対象だ。
パブリッシャーがプログラム規約に同意すると、Search Console上にAI貢献のパネルが表示され、月次の収益と過去のデータを確認できる。なお、税控除や現地の支払い最低額の影響で、表示される収益額と実際の支払額は異なる場合があると明記されている。参加は任意で、いつでもSearch Consoleの設定から離脱できる。
「ブラックボックス」な算出ロジック
このパネルが示すのは支払い金額だけで、その金額がどう算出されたかは一切表示されない。プログラムの内情を知る幹部の一人はDigidayに対し「かなりブラックボックスだ」と語っている。
また、8月31日に全サイト向けに展開されたSearch ConsoleのAIパフォーマンスレポートはAI機能からのインプレッションを表示するが、クリック数は含まれない。AI貢献パネルも支払い額は示すが、その背景にある利用状況(どのクエリにどれだけ使われたかなど)は見えない。
パイロットに参加している2社の幹部は、現時点で確認できる情報は「基本的なもの」にとどまると述べつつ、紹介トラフィックの回復を待つよりも直接支払いのテストに参加する方がよいという判断をしたと語った。一方、別の情報筋は初期の収益を広告収入と比べて「雀の涙(peanuts)」と表現している。
パブリッシャーにとってのリスク
このプログラムをめぐっては、業界内で慎重な見方もある。あるパブリッシャー幹部は、パイロットへの参加がより良い条件を求める交渉力を弱める可能性があると指摘した。Googleが「すでに支払いをしている」と主張する根拠に使われかねないためだ。
Madison and WallのLuke Stillman氏(マネージングディレクター、日本語では事業部長に相当)はDigidayに対し、このようなプログラムは「パブリッシャーに若干の上乗せ収益をもたらしつつ、コンテンツ利用に関するGoogleの法的・評判リスクを軽減する効果もある」と語っている。
Googleのこれまでの有料プログラムはニュースパブリッシャーとの個別交渉で運用されてきた。今回のパイロットはSearch Consoleという日常的なツール上に組み込まれており、対象はニュース以外のサイトにも開かれている点が異なる。参加の是非については、プログラム規約を精査したうえで、支払い条件が自社にとって妥当かどうかを判断する必要があるだろう。
詳細はGoogle Tests Paying Publishers For AI Answers Via Search Consoleを参照していただきたい。