9月14日、The City Reporterが「'Off a Cliff': AI Devours Entry-Level Tech Jobs, As Experienced Workers Hold On」と題した記事を公開した。AIの普及がニューヨーク市のエントリーレベルの技術職求人を直撃し、2022年比で半減するという深刻な状況を報じている。
エントリーレベル求人が「崖から落ちた」
ニューヨーク連邦準備銀行の調査によれば、同市のサービス企業の**60%がAIを導入済みで、1年前の40%から大幅に増加した。製造業でも50%**がAIを活用しており、こちらも1年前の2倍だ。
しかしAI導入が雇用全体を直撃しているわけではない。ニューヨーク市の技術系企業の雇用は全体として安定しており、州労働省の7月データによれば市全体の雇用は過去1年で約6万人増加している。
問題は特定の層に集中している。非営利シンクタンクCenter for an Urban Futureの分析によれば、エントリーレベルの技術職求人は2022年以降、半減した。
「エントリーレベルの求人は崖から落ちた。技術職へのはしごの一段目が圧迫されている」と、同センターのエグゼクティブ・ディレクターであるJonathan Bowlesは語る。
特に打撃を受けているのは、ジェネレーティブAI(生成AI)への露出度が高い企業だ。そうした企業のエントリーレベル求人の減少幅が最も大きく、かつそれらのポジションは新卒採用の平均年収が約8万9,000ドルと比較的高水準だった。若年層にとって、これらは有望なキャリアへの入口だっただけに、その喪失は大きい。
「AIで雇用を削減」は大半がハイプ
一方で、AI導入が既存の中堅・ベテラン労働者の職を奪うという懸念は、今のところ現実になっていない。
ニューヨーク連邦準備銀行のレポート(タイトルは「Businesses Are Using AI to Transform Work, Not Cut Jobs」)によれば、AI導入企業のうち実際に人員を削減したのは5%未満。逆に10%はAI人材を中心に採用を増やしており、3分の1は既存社員をそのまま維持している。
SquareやCash Appを傘下に持つ金融サービス企業Block, Inc.(旧Square)が「AIにより人員を40%削減できる」と発表したような事例もあるが、労働市場調査会社Revelio Labsの経済学者Ben Zweigはこれを懐疑的に見る。「業務の性質を変えることは簡単ではない。しかも企業がダウンサイジング中で社員が仕事に忙殺されているときは、最悪のタイミングだ」とZweigは指摘する。
コーネル大学のニューヨーク拠点Cornell TechのGregory Morrisett学部長も同様の見方をする。
「私たちは物事を過大評価しがちだ。AIはコードの作成・テスト・レビューで最も進歩しているが、それでも企業は『このプロセス全体を管理するエンジニアが必要だ』と気づくことになる」
AIを最も積極的に導入している企業ほど成長中であり、AIと人材の両方を増やしているというのがZweigの観察だ。逆に採用を抑制している企業は、AIで将来的に人員を削減できると見込んで先手を打っている形だ。
AIスキルの有無で明暗が分かれる
エントリーレベルでも、AIスキルを求める求人は2022年以降20%増加している。対象は技術職に限らず、プロフェッショナルサービス、金融、医療、教育など幅広い業界に及ぶ。

地下鉄でAI企業の広告が並ぶ様子(2026年8月19日)。Credit: Ben Fractenberg/The City Reporter
AIスキルなしで求職活動をする若者にとっては壁が高くなっている。技術職訓練機関のMarcy Lab Schoolでは、2023年以降に就職率が35%低下した。同様に無償の技術訓練で定評あるPer Scholasも、ソフトウェアエンジニアリングコースの一部を縮小し、カリキュラム全体にAIを組み込む方向にシフト中だ。
さらにZweigは、AI活用による採用スクリーニングの普及も、エントリーレベル全体の求職者を不利にしていると指摘する。企業・求職者の双方が大量の応募に埋もれてしまう構造的問題だ。
対策の方向性
Center for an Urban Futureは、エントリーレベルのパイプラインを回復するための施策を提言している。具体的には、中小企業・非営利団体・市機関への6か月有給インターンシップ制度、CUNY(ニューヨーク市立大学)向けの人材育成基金の創設、100社の大手企業によるAI志向のインターンシップ受け入れなどだ。
2025年に就任したニューヨーク市長Zohran Mamdani氏の市政は今のところこれらの提言への明確な賛否を示していないが、CUNYに対して500万ドルのAI教育強化支援を実施したことを明らかにした。CUNYも独自の取り組みとして、113件のキャンパス主導のAI施策に300万ドルを配分するAI Innovation Fundを立ち上げ、Accentureと連携した無償のAIコースの提供なども始めている。
今後の帰趨について、Zweigはこう整理する。「大規模な失業が起きるには3つの条件が揃う必要がある。労働者が職務内容を変えられないこと、失われる仕事が特定の地域に集中すること、そして労働者が移動できないこと。これらが揃わなければ、さほど心配しなくていい」
ただし今の問題は、その「揃わない状況」の恩恵が届かない若年層のキャリアの入口が、すでに狭まり始めているという点だ。
詳細は'Off a Cliff': AI Devours Entry-Level Tech Jobs, As Experienced Workers Hold Onを参照していただきたい。