9月10日、CIO.comが「How AI and cybersecurity are reshaping ServiceNow」と題した記事を公開した。AIツールの普及後、セキュリティ運用センター(SOC)へのアラート件数は685%増加した。しかしそのうち94%はノイズ——対応不要な誤検知や低優先度のイベントだ。AIが攻撃面を広げながら防御側の負荷をも爆発的に増やすという構造的矛盾の中で、ServiceNowはITSMとサイバーセキュリティの一元管理を目指す戦略に大きく舵を切っている。
SOCアラートが685%増加、そのうち94%はノイズ
AIの全社導入が進む中で、SOCが直面している現実は厳しい。増加したアラートの大半はノイズであり、セキュリティチームは「より多くのアラートを、より少ない文脈で処理する」状況に追い込まれている。
この数字が示す問題は明確だ。AI自体がサイバー攻撃のアタックサーフェスを拡大しながら、同時に防御側のアラート処理負荷をも爆発的に増やしている。本来AIは運用効率を高めるはずのツールだが、セキュリティ文脈では「問題を解決しながら新たな問題を生む」という二重構造が顕在化している。
ServiceNowがArmisを買収した理由
ServiceNowはこの課題に対して、同社史上最大の買収で応じた。ターゲットは**Armis**——エージェントレス型の資産可視化・セキュリティプラットフォームを提供する企業だ。
過去のセキュリティ関連買収(2025年のVezaなど、権限管理・アクセスガバナンスの強化が主目的)と比べて、Armisはアプローチが根本的に異なる。エージェント(ソフトウェアのインストール)なしに、ワークステーション、ルーター、スイッチ、ファイアウォール、さらには医療用スキャナーやIoTデバイスといった「管理されにくい末端デバイス」まで可視化し、隔離やブロッキングといったアクションを自動的にオーケストレーションできる点が特徴だ。
エージェントレスという点は実務上の意味が大きい。従来のエンドポイント管理ツールはOSやエージェントのインストールが前提だが、医療機器や組み込み機器にそれは現実的でない。Armisの手法はそこにリーチできる。Armis買収によってServiceNowは、ソフトウェア資産だけでなく物理デバイスレベルまで管理範囲を一気に広げたことになる。
ITSMとサイバーセキュリティの境界が溶ける
元記事が指摘するより大きな文脈がある。**ITサービス管理(ITSM)とサイバーセキュリティという、従来は別々の領域とされていた分野が、AIをフロントエンドとして統合されつつある**というトレンドだ。
ServiceNowは2018年にVirtual Agentチャットボットを導入して以来、Element AI(検索)、Passage AI(チャットボット)、Loom Systems(AIOpsの先駆け)と段階的に買収を重ねてきた。2025年にはこれらを統合する形で**ServiceNow AI Platform**(旧: Now Platform)を発表。「AI Control Tower」と呼ばれる統合管理レイヤーが加わった。
従来のITSMはコーディング不要のワークフロー構築が強みだった。AIが加わることで、ワークフローを「生成する」だけでなく「推論して実行する」ことが可能になる。インシデントの検知から対応アクションまでを、人手を介さずに処理するループが成立しつつある。この変化はITSM単体の話ではなく、セキュリティ運用のあり方そのものを変えうるものだ。
「AIがAIのリスクを管理する」構造の現実
この方向性が示すのは、AIエージェントが増えるほどセキュリティの管理対象も増えるという循環だ。ServiceNowの戦略は、その複雑性をプラットフォームレイヤーで吸収し、SOCの負荷を下げることにある。アラートの94%がノイズである現状において、トリアージ(優先度判定)と自動応答の精度をいかに上げるかが、実装上の核心になる。
エンタープライズのセキュリティ運用を一元化するプラットフォームとして、ITSMとセキュリティの両方を同一の管理画面で扱う世界を目指す——それがArmis買収を含む一連の動きが示す方向性だ。AIによる攻撃の高度化と、AIによる防御の自動化が同時進行するこの構造において、プラットフォームの統合度が実質的な防御力の差を生む局面が増えていくだろう。
詳細はHow AI and cybersecurity are reshaping ServiceNowを参照していただきたい。