9月13日、The Decoderが「Elevenlabs makes Music v2.5 available via app and API with free and pro tier options」と題した記事を公開した。音楽生成AIの品質競争が激化するなか、ElevenLabsは47,885ペアのブラインドテストという大規模な比較データを引っ提げて新モデル「Music v2.5」を正式リリースした。無料ティアでも1日5曲のロスレスダウンロード(※後述)が可能で、APIからの利用にも対応している。
約4.8万ペアのブラインドテストで旧版を上回る
ElevenLabsが音楽生成サービス「ElevenMusic」向けにMusic v2.5をリリースした。公式によれば、生成された楽曲の音はより豊かで自然になったという。
裏付けとして示されたのが、47,885ペアのブラインドテストだ。リスナーはほとんどの場面でv2.5を好み、特にR&B、ソウル、ヒップホップ、ロック、オーケストラ音楽で顕著な差が出た。単なる主観的な「改善した」という主張にとどまらず、比較テストの規模をそのまま数字で公開している点は誠実さが伝わってくる。音楽生成AIの評価は聴く人によって大きく左右される主観的な領域だけに、これだけのサンプル数を用意して客観性を担保しようとした姿勢は注目に値する。
無料でも1日5曲、APIからも利用可能
利用形態は2段階に分かれている。
- 無料ティア:1日5曲までロスレスダウンロード可能。商用利用は条件付きで許可されるが、クレジット表記が必須
- Proティア:月400曲のロスレスダウンロード。商用利用の制限が緩和される
※ロスレスダウンロードとは、音声データを圧縮せずに元の品質のまま保存・取得できる形式のこと。MP3などの非可逆圧縮と異なり、音質の劣化が生じない。楽曲制作やプロの現場での利用を想定する場合に重要な要素となる。
さらにAPIからも利用可能で、旧バージョンのv2も引き続き選択できる。APIエンドポイントはElevenLabsの公式APIドキュメントに詳細が記載されており、テキストプロンプトから楽曲を生成するシンプルなリクエスト構造を採っている。開発者がプロダクトに音楽生成機能を組み込む際、最新のv2.5と安定稼働実績のあるv2を用途に応じて使い分けられる構成は実用的だ。料金体系はElevenLabs全体のクレジット制に準じており、API経由の生成もサブスクリプションのクレジットから消費される。
著作権まわりの整理
音楽生成AIにとって最大の問題が著作権だ。ElevenLabsは以下の対応を明示している。
- ユーザーは生成した楽曲の権利を保持する
- 既存アーティストの楽曲をベースにしたトラックのダウンロードはブロック
- 既存ミュージシャンの模倣は禁止
- 学習データは「ライセンスされたステムと音楽」としているが、詳細は非公開
※ステム(Stem)とは、楽曲を構成するパート(ボーカル、ドラム、ベース、ギターなど)ごとに分離した音声トラックのこと。音楽制作やリミックスの現場で広く使われる素材形式で、AIの学習データとしても利用される。
また、ElevenLabsは先日Universal Music Group(UMG)とライセンス契約を締結している。ただし、この契約はMusic v2.5には適用されず、将来の別プロダクトが対象だという。学習データの「ライセンス済み」という説明は一定の透明性を示すものの、具体的なデータセットの内訳が非公開である点は、今後も問われ続ける部分だろう。
ライバルSunoとの明確な差
同週には競合のSunoもv6モデルをリリースしている。Sunoはレコードレーベルと提携しているものの、旧モデルでは権利者の同意なく著作権コンテンツで学習したとして訴訟を抱えており、バリュエーションは54億ドルまで跳ね上がっている。ElevenLabsがライセンス済みデータで学習したと明言している点は、少なくとも姿勢の面でSunoとは一線を画す。
音楽生成AIは現在、単なる生成品質の競争から、著作権対応の透明性がサービスの信頼性を左右する段階へと移行しつつある。アーティストや音楽プロデューサーがAI生成楽曲を実制作フローに組み込むうえで、権利の所在と学習データの出自は無視できない選定基準になっている。ElevenLabsがどこまで学習データの詳細を開示していくかは、今後の競争軸のひとつになりそうだ。
詳細はElevenlabs makes Music v2.5 available via app and API with free and pro tier optionsを参照していただきたい。