9月14日、The Next Webが「Anthropic has chosen Nasdaq for its October IPO, in the week OpenAI ruled one out」と題した記事を公開した。AnthropicがNasdaqでの10月上場に向けて準備を進めている一方、OpenAIが同週に2026年のIPOを見送ると表明した対照的な状況について詳しく報じている。
AnthropicがNasdaqを選択、10月上場へ
Business Insiderが報じた計画に詳しい関係者によれば、AnthropicはIPO先の取引所としてNasdaqを選定した。申請は現時点で非公開のまま進んでおり、評価額は確定していないが、関係者の間では約2兆ドルという数字が流通している(円換算は報道時点の為替レートによって大きく変動するため、ドル表記を基準とされたい)。
Nasdaqにとってこの件は大きな意味を持つ。同取引所は今年初め、評価額1.75兆ドルでSpaceXも獲得しており、これで2026年における最大規模の2件をいずれも抑えることになる。歴史的に大型IPOを集めてきたニューヨーク証券取引所(NYSE)にとって、2026年は明確な転換点となりつつある。
両取引所の競争は手数料の奪い合いというより、「AI上場の本拠地」というポジションを巡るものだ。
OpenAIとの判断の分岐
同週に起きた対比が際立っている。
2日前、OpenAIのSam Altman CEOはFortuneのインタビューで、2026年のIPOを見送ると明言した。理由として「安全性をめぐる状況を考えると、今は上場に適したタイミングではない」と述べている。
Anthropicはその同じ時期に、ロードショー(投資家向け説明会)を進めようとしている。ただし、両社が「同一の状況認識」を共有していたうえで別々の結論を出したかどうかは、元記事からは明確に読み取れない。OpenAIが安全性を理由に挙げたのに対し、AnthropicがIPOに踏み切る理由として安全性への言及は報じられておらず、両社の判断軸が同一かどうかは慎重に見る必要がある。
さらに文脈として注目されるのが、Anthropicの元研究員による退職声明だ。同氏は「各ラボは人々の命をギャンブルにかけている」と主張し、Business Insiderによれば人類絶滅リスクを10%超と見積もっていたという。この警告がここ数週間で広く話題を集めた。そのAnthropicが、公開市場に評価額を問おうとしているという事実は、引き続き注目点となるだろう。
上場の具体的な経緯
Anthropicのここまでの動きを整理すると:
- 評価額9,650億ドルで機密申請(Confidential Filing)を実施
- 主幹事にMorgan StanleyとGoldman Sachsを指名
- 150億ドルのクレジットファシリティ(融資枠)を確保
- 投資家向けにはTAM(想定市場規模)30兆ドルを訴求する方針
- 調達額1,000億ドルを達成すれば史上最大のIPOとなる見込み(元記事はこの数字に関する比較対象の詳細には踏み込んでいない)
なお、「150億ドルのクレジットファシリティを確保し、米国中間選挙直前を目標に設定」という記述については、元記事に基づく関係者情報として紹介されているものの、10月の上場時期と中間選挙の関連付けはTNWの報道の範囲内での言及にとどまる。
また、これらの数字はいずれも目論見書(Prospectus)ではなく、関係者が記者にブリーフィングした情報に基づく点には留意が必要だ。
Nasdaq選択の実質的な意味
取引所の選択が株価パフォーマンスに影響するという確たる証拠はなく、実務上の違いはオープニング価格の設定プロセス(マーケットメイカーの仕組み)に限られる。ただ一点、実質的に重要な差異がある。Nasdaq 100への組み入れ資格はNasdaq上場銘柄のみだ。インデックス採用は、誰かが能動的に買い判断をしなくても、パッシブ資金を自動的に呼び込む効果がある。
一方でリスクも歴史が示している。2012年のFacebook(現Meta)IPO初日、Nasdaqのシステムは障害を起こした。大型上場が来るたびに引き合いに出される警戒事例だ。
財務情報の公開は数週間以内
ルール上、Anthropicはロードショー開始の少なくとも15日前に財務情報を公開しなければならない。10月という日程であれば、誰でも確認できる最初の数字が数週間以内に明らかになる。これまで評価額も調達規模も「関係者情報」でしか語られてこなかった実態が、ようやく変わることになる。
詳細はAnthropic has chosen Nasdaq for its October IPO, in the week OpenAI ruled one outを参照していただきたい。