9月12日、Brandi Vincentが「DOD poised to move all classified AI workloads off Anthropic by October」と題した記事を公開した。この記事では、米国防総省(DOD)が10月末までにAnthropicのAIモデルへの依存を完全に脱し、複数の代替AIベンダーへの移行を完了しようとしている動きについて詳しく紹介されている。
移行はすでに9割完了
国防次官(研究・工学担当)のEmil Michael氏は、NDIA(全米防衛産業協会)の新興技術カンファレンスで記者団に対し、機密システムのAnthropicからの移行は現時点で約90%完了していると明かした。
「MavenスマートシステムやPalantirの作業はすでに数ヶ月前に移行済みだ。月末までに完了する見込みだ」とMichael氏は述べた。
Mavenスマートシステムとは、米軍が運用する画像・映像解析AIプラットフォームで、Palantirが主要ベンダーとして関与している。この種の機密インフラからAnthropicが切り離されるという事態の背景には、DODとAnthropicの契約交渉の決裂がある。
決裂の経緯:「全ての合法的目的」をめぐる対立
事の発端は、AnthropicがDODとの契約に一定の利用制限を設けようとしたことだ。Anthropicは、米国市民の大規模監視や完全自律型の致死的兵器システムへの利用を制限する条項を求めた。これはAnthropicが公開している使用ポリシー(Acceptable Use Policy)に基づく立場であり、同社は商業・政府契約を問わず一定の用途制限を課す方針を採っている。これに対しDODは、防衛ソフトウェアは「全ての合法的目的」に制約なく利用できなければならないとして拒否した。
DODはその後、Anthropicを国家安全保障上のサプライチェーンリスクに指定した。この指定は、国防権限法(NDAA)に基づく調達規制の枠組みを根拠とするもので、安全保障上の懸念があると判断されたベンダーを政府調達から排除・制限できる手続きだ。現在は法廷での争いに発展している。
Michael氏はカンファレンスでの発言でこう説明した。「件の訴訟については、カリフォルニア北部地区でAnthropicが判断を得たが、あれはフォーラムショッピング(自らに有利な法廷を選ぶ戦略)だ。より重要なのは第2の訴訟で、DC巡回裁判所が管轄する。最高裁の一段下の高位裁判所であり、国家安全保障に関する問題をより重視するフォーラムだ。1〜2ヶ月以内に判断が出るだろう」。
なお、DC巡回裁判所は予備的差し止め命令を出していないため、現時点ではAnthropicのサプライチェーンリスク指定は有効なままだ。訴訟の帰趨次第では移行計画にも影響が生じ得るが、DODは10月末という期限を変えずに移行を進めている。
後継は「マルチモデル」体制:OpenAI、xAI(Grok)
DODが移行先として採用しているのは特定の1社ではない。xAIはイーロン・マスクが創業したAIスタートアップで、同社が開発する大規模言語モデルが「Grok」だ。Michael氏はマルチモデル戦略の重要性をこう語った。「Anthropicとの問題を抜きにしても、ペンタゴンが単一モデルに完全依存していたこと自体が問題だった。この業界は毎月——ひょっとすれば毎週——リーダーが変わる。複数のモデルを持つことが最優先だ」。
現場の反応も興味深い。Michael氏によると、Palantir Mavenの戦闘要員からのフィードバックは以下のようなものだったという。
- OpenAIのChatGPT:Anthropicより評判が良い
- xAIのGrok:両者よりはるかに速い
「ミッションによって、それぞれ異なる特性がある」とMichael氏は述べた。
DODの非機密ツールである**GenAI.mil**(政府向けにチューニングされたフロンティアAIモデルへのアクセスプラットフォーム)には、2026年8月にGrokとChatGPTが追加されたばかりだ。
現場の本音:「政府システムで同じ生産性は出せない」
カンファレンスに出席したDOD関係者が匿名を条件にDefenseScoopに語ったコメントが、AIの現状を率直に示している。
ある関係者はGenAI.milを積極的に活用しているとしつつも、限界を正直に認めた。
「私は個人でAnthropicのClaudeを契約している。自宅のPCなら20分でできる仕事が、政府システムでは4時間かかる。GenAI.milにAPIアクセスはないし、エージェントも作れない。受信トレイの中でGenAI.milは動かせない。ドットミルドメインの外で持てる超高生産性は、今のところ内側では持てない」
別の関係者はこう釘を刺した。「AIの旅路において、今どこにいるかを過大に売り込まないことが重要だ。ビジョンはある。しかしそこに至るまでにはまだ多くの課題がある」。
機密環境でのAI活用という難題が、先進的な政策・調達の裏側でまだ解決されていない現実が透けて見える。
詳細はDOD poised to move all classified AI workloads off Anthropic by Octoberを参照していただきたい。