9月11日、SiliconAngleが「Ayar Labs bags $150M in additional late-stage funding to help make bigger AI chip clusters」と題した記事を公開した。光インターコネクト技術を手がけるAyar Labsが1億5000万ドルの追加調達でシリーズEを6億5000万ドルに拡大し、累計調達額が10億ドル超に達した。注目すべきは資金の規模だけではない——市場でシェアを競い合うはずのNvidiaとAMDが、同じ一社に揃って出資しているという異例の構図が、この技術の戦略的重要性を端的に示している。
銅配線がAIクラスターのボトルネックになっている
AIデータセンターの拡張を阻む壁として、今「銅インターコネクト(銅配線による接続)」が業界の共通課題になっている。GPUを数千台規模で連結しようとすると、銅ケーブルには致命的な3つの問題が生じる。
- 距離限定: 信号劣化により、長距離での伝送品質が保てない
- 電力消費: 大規模クラスター全体を銅線でつなぐと、エネルギーコストが持続不可能な水準になる
- 発熱: 高性能プロセッサへの接続が集中すると過熱し、ワークロードが停止する
このボトルネックを光インターコネクト(光ファイバーを用いたチップ間接続)で解消しようとしているのが、2015年創業のAyar Labsだ。シリコンフォトニクスと呼ばれる技術領域——シリコン基板上に光学素子を集積し、電気信号ではなく光でデータを伝送する手法——において、同社は最前線に位置する企業の一つである。この分野ではIntelもシリコンフォトニクス製品を展開しており、競合環境は活発化している。
TeraPHY:銅をシリコンフォトニクスで置き換える
Ayar Labsの主力製品は**TeraPHY**と呼ばれる光学エンジンだ。銅配線の代わりに光インターコネクトを用いることで、帯域幅・電力効率・レイテンシのすべてで優位に立ち、データセンター内のGPUをより大規模かつ遠距離で接続できる。
さらに同社はコパッケージドオプティクス(Co-packaged Optics)技術も開発している。これはTeraPHYの光学エンジンをGPUと同じサーバーのASICソケットに直接搭載するもので、接続性をチップレベルで強化する。コパッケージドオプティクスは現在、次世代AI・クラウドデータセンターのアーキテクチャとして業界全体で注目を集めている技術領域だ。OIF(光インターネットフォーラム)をはじめとする標準化団体でも議論が進んでおり、大手クラウドプロバイダーも採用に向けた評価を進めているとされる。
NvidiaとAMDも出資——なぜチップメーカーが動くのか
今回の追加調達(出資者名は非公開)により、シリーズEは6億5000万ドルに拡大した。これは3月に実施したシリーズE第一弾(5億ドル、Neuberger Berman主導)に今回の1億5000万ドルを追加した合計であり、外部調達の累計はこれを含めて10億ドル強に達した。
【資金調達の内訳まとめ】
| ラウンド | 金額 | 主な出資者 |
|---|---|---|
| シリーズE(3月) | 5億ドル | Neuberger Berman、Nvidia、AMD、MediaTek |
| シリーズE追加(今回) | 1億5000万ドル | 非公開、Wiwynn |
| シリーズE合計 | 6億5000万ドル | — |
| 累計調達総額 | 10億ドル超 | — |
3月のラウンドにNvidia、AMD、MediaTekが名を連ねたことは業界内で大きな注目を集めた。GPU市場で熾烈に競合するNvidiaとAMDが同一企業に同時出資するのは、通常では考えにくい構図だ。しかしその動機は明快である——大規模クラスター化の恩恵を最も直接的に受けるのは自社GPUの需要が拡大するチップメーカー自身であり、光インターコネクトの普及は彼らにとって市場拡大と同義になる。
また今回、台湾のデータセンターインフラ企業**Wiwynnとの戦略的パートナーシップも明らかになった。Wiwynnは同社に投資を行い、ラックスケールのAIシステムを共同開発している。このシステムにはSuperNova遠隔光源技術**が活用される。SuperNovaとは、光源(レーザー)をチップや光学エンジンの外部に分離配置し、ラック単位で集中管理する設計手法で、発熱源の分散と光源の効率的な運用を両立させるものだ。この技術をWiwynnのラックレベルサーバーアーキテクチャに統合することで、銅インターコネクトが抱える電力・複雑性の課題に対処する。Wiwynn CEOのWilliam Lin氏は「銅インターコネクトの電力・複雑性の限界を解消する明確な道筋が見えている」とコメントしている。
2028年の量産に向けたタイムライン
共同創業者でCEOのMark Wade氏は、Reutersの取材に対して2028年初頭の大量市場投入を目標に掲げると語った。
調達資金はすでにインドのベンガルール(バンガロール)に新しいチップ設計センターの設立に充てられており、今回の追加分は量産準備の加速に使われる。スケジュールは以下の通りだ。
- 2027年末まで:顧客製品向けの量産資格取得を完了
- 2028〜2029年:顧客の製品ランプアップ時期に合わせて出荷開始
「私たちは光学チップを製造し、それを顧客の製品に組み込む。顧客が2028〜2029年に量産を始めるなら、私たちは2027年末までにすべてを量産対応状態にしておかなければならない」とWade氏は述べている。
同社のAI分野での存在感が急速に高まったのは近年のことで、2015年創業から2020年の3500万ドル調達まで外部資金はほぼなかった。AIブームが光インターコネクト開発に現実的な緊迫感をもたらした結果、ここ数年で状況が一変した。光インターコネクト市場全体としても成長が加速しており、Ayar Labsのような専業スタートアップへの投資が活発化している背景には、銅配線の物理的限界がAIインフラ設計者にとって「いつか来る課題」から「今まさに直面している障壁」へと変化したことがある。
詳細はAyar Labs bags $150M in additional late-stage funding to help make bigger AI chip clustersを参照していただきたい。