9月12日、Matthias Bastianが「Nvidia wants to pour up to $10 billion into Anthropic's record-breaking IPO」と題した記事を公開した。NvidiaがAnthropicのIPOに最大100億ドルを投じようとしている——その背景にあるのは単なる財務的な出資ではなく、チップを売った相手に投資し、そのカネが再びチップ発注として戻ってくる循環構造だ。The Economistはこの構造を「AI業界の中央銀行」と表現している。
NvidiaはなぜAnthropicのIPOに巨額を投じるのか
Reutersの報道によると、NvidiaはAnthropicの計画中のIPOに最大100億ドルを投資する交渉を進めている。AnthropicはこのIPOで最大1,000億ドルの調達と、約2兆ドルの企業評価額を目指しており、実現すれば史上最大規模のIPOとなる。
NvidiaはIPO前にあらかじめ株式を確保するアンカー投資家として参加する見通しだ。アンカー投資家とは、公開市場での取引開始前に大口出資を確約することで上場を安定させる役割を果たす機関投資家を指す。著名な大口投資家がアンカーとして参加することは、他の投資家の参加意欲を高めるシグナルとして機能する。
AnthropicとNvidiaはすでに深く結びついている
両社の関係は今に始まったものではない。AnthropicはNvidiaのGPUで事業を運営しており、2025年にはAzureコンピュートを通じてNvidiaチップに300億ドル規模の購買契約を締結している。
Anthropic自体の成長も急速だ。元記事によれば年間売上高(ARR)は2025年末時点の約9億ドルから、2026年7月時点では65億ドル超へと拡大している。IPOは米国中間選挙(2026年11月)前に完了する見込みとされている。
The Economistが「中央銀行」と呼ぶNvidiaの循環構造
この取引が単なる大型投資案件にとどまらない理由は、Nvidiaが業界全体で構築している構造的な立ち位置にある。The Economistが指摘するように、NvidiaはAI業界において事実上の中央銀行的な役割を担っている。AnthropicやOpenAIといった顧客企業への直接投資にとどまらず、データセンターの資金調達を支援する約3,000億ドルの保証まで引き受けているとされる。
構造としてはシンプルだ。NvidiaがAI企業や関連インフラに資金を流し込み、そのカネはチップの発注という形でNvidiaに戻ってくる。投資と収益が自己強化的に循環する仕組みだ。自社製品の需要を顧客への出資によって直接生み出すという点で、通常の事業会社の域を超えた、業界インフラの提供者としての性格を持ち始めている。
IPOに対する懸念も残る
以前の報道では、中国のAI競合の台頭や政治的な逆風を理由に、一部の投資家がIPOに懐疑的な見方を示していることも伝えられている。2兆ドルという評価額の妥当性を問う声は今後も続くとみられる。DeepSeekをはじめとする中国勢の急速な台頭は、米国AI企業の競争優位の持続性に対する疑念を投資家の間で高めている。
それでもNvidiaがアンカー投資家として名乗りを上げることで、IPOへの市場の信頼感を高める効果は大きい。Nvidiaほどの規模と業界影響力を持つ企業がIPOを支持するという事実は、懐疑的な投資家に対する強力なシグナルとなりうる。
詳細はNvidia wants to pour up to $10 billion into Anthropic's record-breaking IPOを参照していただきたい。