9月10日、The Next Platformが「Broadcom Rides Rocketing Trend For Custom AI Accelerators」と題した記事を公開した。この記事では、BroadcomがカスタムAIアクセラレーター(XPU)市場で急速に存在感を高め、NVIDIAへの対抗軸として台頭しつつある状況について詳しく紹介されている。
F2022〜F2028で売上100倍という数字
Broadcom CEOのHock Tanは、2026会計年度第3四半期の決算発表でウォール街に対し、AI関連チップ事業の見通しを示した。GenAIブームが始まったF2022の26億ドルから、F2028には2,300億ドルへ——F2022比で約100倍という成長予測だ。
この数字を額面通りに受け取るかどうかは別として、すでにF2026Q3の実績としてAI関連売上は167億4,000万ドル(前年同期比3.22倍、前四半期比54%増)を記録しており、うちAIコンピュート122億ドル、AIネットワーキング45億ドルとなっている。全社売上は295億9,000万ドル(前年同期比85.5%増)、純利益は3.17倍の130億9,000万ドルに達した。
「チップ・シェパード」というビジネスモデル
BroadcomのXPU事業の本質は、自社設計のチップを売るのではなく、顧客が設計したカスタムチップの製造・パッケージングを一手に引き受ける「チップ・シェパード(chip shepherd)」モデルにある。GoogleのTPU設計支援はすでに7年のキャリアがある。
現在のXPU顧客は6社。Google、Anthropic、OpenAI、Metaは確定で、残り2社はByteDance(TikTok親会社)またはAppleとみられる。AWSはTrainium 4のパッケージング・統合でBroadcomを利用している。
6社合計の総コンピュート容量は約30ギガワット。XPUシステムのコストは1ギガワットあたり約120億〜150億ドルとされ、これはNVIDIAの「Grace-Hopper」システム(同180億ドル)や「Vera-Rubin」システム(同400億ドル)と比べてコスト効率が高い。
※編集部の考察:NVIDIAのH100・B200系GPUへの集中依存が調達コストや供給リスクの観点から課題視される中、Google・Meta・Amazonといったハイパースケーラーがこぞって自社カスタムチップ開発を加速させている。Broadcomはその受け皿として機能しており、いわば「NVIDIA依存からの分散」を実現するインフラプレーヤーとしての地位を確立しつつある。
Anthropicがトップ顧客へ、OpenAIが追う
各社の調達計画が具体的な数字で示されている点が興味深い。
Anthropic:今年1ギガワットのIronwood(TPU 7)を展開中。2027年に5ギガワットのTPU 8i、2028年に10ギガワットのTPU 9を計画。Tanは「2027年にAnthropicが最大のXPU顧客になる」と明言した。Google自身よりもAnthropicの方が多くのTPUを買う構図になっている。
OpenAI:「Jalapeno」XPUのチップ開発をBroadcomに委託。2027年に1.3ギガワット、2028年にさらに5ギガワットの展開を計画。Jalapeno後継チップはすでにテープアウト(設計完了・製造送付)に近づいており、第3世代の設計も両社で進行中だ。2028年にはOpenAIがBroadcomの第2位顧客となり、GoogleがBroadcomの3位に降格する見通し。
Meta:MTIA(Meta Training and Inference Accelerator)を3世代にわたって展開し、F2028末までに3ギガワットの容量を確保する見込みだ。
ネットワーキングチップも急拡大、そして未発表のTomahawk 7
XPU事業と並行して、BroadcomのEthernetスイッチASICも急速に採用が広がっている。Tomahawk 6(100/200 Gb/sec SerDes対応)はAIクラスターのスケールアウトネットワーキング用途で全主要ハイパースケーラーが採用。さらにレイテンシを抑えてXPU間のコヒーレントメモリ相互接続に使えるTomahawk Ultraバリアントも予想以上の早さで普及が進んでいるという。
また、まだ正式発表されていないTomahawk 7(204.8 Tb/sec、400 Gb/sec SerDes、ポートあたり3.2 Tb/sec)がすでにテープアウト済みとのこと。2027年末〜2028年初頭にスイッチ製品として登場する見込みだ。
「Googleはクラウドだから、顧客がNVIDIAを求める」
記事の中でTanが語った、ある逆説的な構造が際立つ。AnthropicがGoogleのTPUをGoogle自身より大量に購入しているという事実について、記事はその理由をこう説明する——Googleはクラウドであり、クラウドの顧客はNVIDIA GPUを求めるからだ。
GoogleはTPUをクラウドサービス(Google Cloud TPU)として外部提供しているが、一般的なクラウド利用者はNVIDIA GPU搭載インスタンスを好む。一方でAnthropicのような自社モデル開発専業の企業は、NVIDIA依存を避けてコスト効率の高いカスタムXPUを積極採用できる。
財務状況と今後の展開
現金残高は239億8,000万ドルだが、VMware買収に伴う負債が594億2,000万ドル残っている点は引き続き課題だ。
今後の展開として、記事はBroadcomがCPUのシェパード事業にも進出する可能性を指摘している。すでに富士通の次世代Arm Server CPU「Monaka」のパッケージング支援を行っており、ハイパースケーラー各社が独自Arm CPUを開発する流れの中で、CPUチップレットのパッケージング統合事業が次の成長軸になりうるとしている。
なお、BroadcomはかつてArmサーバーCPU「Vulcan」を自社開発していたが、これをCavium Networksに売却した。その後、Cavium Networks自体がMarvellに買収されたため、結果的にVulcan技術はMarvellの手に渡った経緯がある。Broadcomが自社CPUから撤退し、他社チップの製造・パッケージング支援に軸足を移したことは、現在のチップ・シェパード戦略の原点ともいえる。
詳細はBroadcom Rides Rocketing Trend For Custom AI Acceleratorsを参照していただきたい。