9月7日、The Newsが「Authors accuse OpenAI of renaming LibGen datasets to hde their origin」(※原題ママ。"hde"は"hide"のタイポと思われる)と題した記事を公開した。著者らがOpenAIのAI学習データにLibGen由来の海賊版書籍が含まれるとして、データセット名の改変を証拠に著作権侵害を訴えていることについて詳しく紹介している。
「Books1」「Books2」の正体
訴状の核心は、データセット名の改変だ。原告側の著者たちは、OpenAIがLibGen(海賊版書籍の大規模ライブラリ)からトレントでダウンロードした書籍を学習に使用し、GPT-3を紹介する論文の中でその内部データセット名を「Libgen1」「Libgen2」から「Books1」「Books2」に静かに書き換えたと主張している。
LibGenはロシア発の大規模な海賊版コンテンツリポジトリで、数百万冊の書籍や学術論文を無断公開してきた。AI企業が学習データとしてLibGenを利用した疑惑は以前から業界内で語られていたが、今回の訴状はその具体的な証拠として名称の変遷を突きつけた形だ。
削除という「自白」
訴状がさらに重視するのは、2022年夏にOpenAIがLibGen由来のファイルを削除したという事実だ。原告側は「OpenAIがこれまで削除した学習データセットはこの2つだけ」と強調し、改名と削除を組み合わせることで、OpenAIは訴訟が起こされる前から自社の行為が法的に問題あると認識していたと主張している。
「GPT-5がマーティンの続きを書く」発言も証拠に
訴状はOpenAIが2022年に採用したGogine氏の2025年の投稿も引用している。同氏はGPTモデルの文章品質向上を担当しており、その研究目的をジョージ・R・R・マーティンの「氷と炎の歌」シリーズ未完の2冊を補完させることだと説明。「マーティンが早死にしても、GPT-5が彼のシリーズを自動補完する」と記述していた。原告側はこの発言を、OpenAIが著作物を学習に利用していることの証左として援用している。
訴訟の構図
今週ニューヨークで提出されたこの申立書は194タイトルを対象とし、損害賠償の審理に先立ち、Sidney Stein判事に責任の有無を先行判断(サマリー・ジャッジメント)するよう求めている。
本件は複数の訴訟を統合したものだ:
- Authors Guildのクラスアクション
- TremblayおよびSilvermanによる訴訟(2023年カリフォルニア発、その後ニューヨークへ移送)
原告側はまた、マイクロソフトの間接責任も問うている。2019年、2021年、2023年に締結された契約に基づく総額約130億ドルのOpenAIへの投資を根拠としている。
一方、OpenAI側は同日に対抗の申立書を提出し、書籍の利用はフェアユース(公正利用)に当たると主張している。
法的な争点:フェアユースか「不可侵の侵害」か
原告側は2025年のBartz対Anthropic連邦地裁判決にも言及している。同判決はAI学習をフェアユースとして扱う可能性を示唆したが、その一方で海賊版ライブラリからの書籍ダウンロードは「本質的かつ取り返しのつかない侵害」と判断している。この判例を引きながら、原告はLibGenからのダウンロード行為自体をフェアユースの対象外と位置づけている。
AI著作権訴訟をめぐる法的文脈として、米国著作権法第107条(フェアユース条項)や、AI学習と著作権の関係を論じた米国著作権局の2023年ガイダンスも参照されたい。また、本件と並行して進む関連訴訟として、New York Times対OpenAI・Microsoft訴訟も同週にサマリー・ジャッジメントの申立書が提出されており、AI著作権訴訟の戦線は一段と広がっている。
なお同週、ニューヨーク・タイムズ、デイリー・ニュース、Center for Investigative ReportingもOpenAIとマイクロソフトを相手に独自のサマリー・ジャッジメント申立書を提出している。
データセット名の改変という技術的に地味な事実が、AI業界最大級の著作権訴訟の核心に据えられた。学習データの出所管理がいかに法的リスクに直結するかを示す事例として、今後の判決の行方が注目される。
詳細はAuthors accuse OpenAI of renaming LibGen datasets to hide their originを参照していただきたい。