9月7日、The Next Platformが「Dell Says AI Will Drive 75 Percent Of Datacenter Demand By 2030」と題した記事を公開した。この記事では、DellがAIシステム事業の急成長と2030年に向けたデータセンター需要予測を発表したことについて詳しく紹介されている。
2030年にAIがデータセンター需要の75%を占める
Dellの最高執行責任者(COO)兼副会長のJeff Clarke氏は、同社のFY2027第2四半期決算説明会で次のように述べた。
「エージェント型AIの需要がデータセンターと基盤インフラを再形成している。推論(Inference)はトレーニングを上回り、純粋な需要として存在している。推論が生成するトークン数は2030年までに87倍の3,600京(quadrillion)トークンに達すると見ている。トレーニング需要も5倍の850ゼタフロップスに成長する。エンタープライズ向けエージェントAIは2028年に最大のワークロードになると予想される。そして2030年までにAIがデータセンター需要全体の75%を占め、同期間に200GWの電力が追加される。その半分はネオクラウド、ソブリン、エンタープライズという我々の顧客層に当たる。この試算では、今後の市場機会は1兆ドルを超える。」
この「75%」という数字は、インフラ投資やシステム調達の意思決定に直結する予測だ。現時点でデータセンターの電力需要においてAI用途がどの程度かは事業者によって異なるが、Dellはネオクラウド(規模の小さい専業クラウド事業者)、ソブリン(政府・国家機関系)、大企業という3つの顧客層が成長の中核を担うと位置づけている。
決算数字:AIシステムが牽引する異次元の成長
7月31日に終了した四半期の主要指標は以下のとおりだ。
- 製品売上: 411億1,000万ドル(前年同期比+71.8%、前四半期比+7.9%)
- 製品・サービス合計: 469億7,000万ドル(前年同期比+57.7%)
- 営業利益: 53億6,000万ドル(前年同期比3.1倍)
- 純利益: 41億3,000万ドル(前年同期比3.55倍、売上高比8.8%)
純利益率8.8%という数字に注目したい。Dellはかつてハードウェアの薄利多売モデルによって利益率の低さを指摘されてきた企業だが、記事はこの水準を「ソフトウェア企業並みの8〜10%に近づいている」と表現しており、事業構造の変質を端的に示している(※「スーパーマーケット並み」という表現は記事の論旨に基づく編集部の意訳)。
サーバー・ネットワーク事業は前年同期比2.1倍の269億3,000万ドルに達した。このうちAIシステム単体では164億ドル(前年比2倍)を売り上げ、受注残(バックログ)は950億ドルに膨らんでいる。そのうち609億ドルが当該四半期内に受注したものだ。バックログは1年前の8.1倍という水準であり、需要が今後も継続的に売上へ転換されることを示唆している。
従来型サーバーの更新需要も同時に爆発
AI需要だけでなく、旧世代サーバーの更新サイクルも同時に火を噴いている点がこの決算のもう一つの軸だ。
DellのインストールベースにはPowerEdge 14G世代以前のサーバーが120万台以上残っている。14Gは2017年発表・2018年量産開始であり、現在8年以上稼働していることになる。Clarke氏によると、現行の17G機に対して旧サーバー6〜8台分を集約でき、来月投入予定の18G機では12〜14台分の集約が可能になるという。
AI投資によって企業のデータセンターでは電力とスペースの確保が急務となっており、旧世代サーバーの刷新がその解決策として機能するという構図だ。更新後の機器はメモリ(DRAM)・フラッシュ・CPUなども大容量構成となるため、1台あたりの単価も上昇しており、Dellの従来型サーバー事業(ネットワーク含む)は前年同期比2.2倍の105億3,000万ドルという過去最高を記録した。これはAI向け需要とは独立した、いわば「もう一本の柱」が同時に立ち上がっていることを意味する。
Q4には従来型サーバー売上がAIサーバーを上回る見通しであり、AI需要と更新需要が同時進行している状況は記事中で「harmonic resurgence(調和的な回復)」と表現されている。
AI顧客数は急拡大、ただし競合も虎視眈々
Clarke氏によると、「AIファクトリー」(AI推論・学習用のサーバークラスタ)を導入したユニーク顧客数は6,500社に達している。最初の3,200社を獲得するのに8四半期かかったが、次の3,300社はわずか3四半期で閉じた。獲得ペースの加速は、エンタープライズ層へのAI導入が本格化していることの裏付けといえる。
Dellはこの成功を「グローバル展開能力が他社に比肩するものはない」と主張するが、記事はSuperMicro、IEIT Systems(旧Inspur)、Sanmina(ZT Systems事業を取得)、Quanta Computer、Foxconnなど競合の存在も明示している。Dellが競合優位を築けている背景には、NvidiaからのGPU割り当てを安定的に確保できていることが大きく、Nvidiaとしてもハイパースケーラーへの依存を分散させたい意図がある。
ストレージ事業ではAI向け並列ファイルシステム「Project Lightning」が複数顧客でベータ運用中だが、VAST Data・WEKA等の専業ストレージベンダーとの競合においては、記事の記者は「競合他社は今のところさほど脅威に感じていないだろう」と冷静に評している。
詳細はDell Says AI Will Drive 75 Percent Of Datacenter Demand By 2030を参照していただきたい。