9月8日、GamesIndustry.bizが「European game developers are more concerned that AI will pressure them to work faster rather than take their job」と題した記事を公開した。欧州のゲーム開発者がAIに対して抱く最大の不安は「失業」ではなく「加速圧力」であることが、業界調査によって明らかになった。
「クビになる」より「もっと速く働け」が怖い
欧州のゲーム開発者が抱くAIへの不安は、一般的に語られる「仕事を奪われる」という懸念とは少し異なる方向を向いている。
採用・転職プラットフォームInGame Jobの共同創業者であり、ゲーム業界の雇用動向調査を長年手がけてきたValues Value創業者のTanja Loktionova氏がまとめた報告書「Talent Signals Reshaping the Games Industry」によると、**欧州のゲーム開発者の61%が、生成AIによって「より速く、より多く」働くよう圧力をかけられることを懸念している。一方、「AIによって職を失う、または需要が下がる」と考えているのは35%**にとどまる。
この調査は第10回Big Games Industry Employment Surveyのデータを基にしており、完全版は2026年11月に公開予定だ(暫定版サマリーはこちら)。2022年以降、欧州ゲーム業界では大規模なレイオフが相次いでおり、こうした不安感が高まる下地は十分にある。
スキル評価が困難になる、という見落とされがちな問題
この調査で目を引くのが、**「AIによってスキルの実力が測りにくくなる」と答えた開発者が46%**に上るという点だ。
採用・昇進・評価のあらゆる場面で、「この人が書いたコードやデザインは、本人の実力か、AIの補助によるものか」が判別しにくくなる。ゲーム業界では特に、アーティストやプログラマーが自身のポートフォリオ(作品集)によって評価される文化が根強く、採用担当者がスキルを直接見極める手がかりとしてきた。AIが生成に深く関与するようになると、この判断基準そのものが揺らぐ。
また、ジュニア開発者や未経験者ほど影響が大きい。豊富な実績がないスタート地点の人材にとって、ポートフォリオはキャリアへの数少ない入口だ。「AI補助の成果物か否か」の疑念が採用側に広がれば、若手が業界に足がかりを得ることはより難しくなる。
加えて、半数強の開発者が「生成AIが仕事の品質を下げる」と懸念している。スピードを上げろという圧力と、品質低下への不安が同時に存在している状況だ。
倫理的な懸念を持つ開発者は**29%と少数派で、「特に懸念なし」は12%**だった。
現場への影響はすでに現実のものに
調査に回答した開発者の78%が、すでにAIによって働き方が変わったと答えている。内訳は「大きく変わった」が33%、「ある程度変わった」が45%で、「変化なし」は22%にすぎない。
採用サイドの動向も出ている。会社創業者の35%が、AIツールで代替できると判断し、採用を見送った経験があると回答した。実際に人件費の削減手段としてAIが機能し始めていることを示すデータだ。
また、創業者の48%が現在赤字で運営しており、60%が意図的に小規模チームを維持していると答えた。業界全体がスリム化・効率化に動いている背景が見える。
Gamescom Devの調査とも一致するトレンド
先月公開されたGamescom Devの年次スピーカー調査でも、83%が生成AIはチーム構成や生産性に影響を与えると回答しており、今回の結果と方向性は一致している。
AIの雇用への影響について同調査では、「チームの縮小より役割の変化をもたらす」と考える人が36%、「チームが小さくなる」と予想する人が33%、「個人の生産量が上がる」と見る人が14%、「人員削減にはつながらない」とした人が17%だった。
「AIに仕事を奪われるか」という問いより、「AIに急かされ続けるか」「自分のスキルが正当に評価されるか」という問いの方が、現場の開発者にとってリアルな懸念として浮かび上がっている。レイオフが続く業界環境の中で採用規模が縮小し、そこにスキル評価の信頼性まで揺らぐとすれば、開発者——とりわけキャリア初期の人材——が置かれる状況は、数字以上に厳しい。スピードと品質、そして評価の透明性はAI時代のキャリアにおける中心的な課題になりつつある。
詳細はEuropean game developers are more concerned that AI will pressure them to work faster rather than take their jobを参照していただきたい。