9月8日、Cybersecurity Newsが「Claude Mythos AI Autonomously Executes Full Cyber Kill Chain Without Human Guidance」と題した記事を公開した。Booz Allen Hamiltonによるベンチマーク評価で、AnthropicのAIモデル「Claude Mythos」が人間の介入なしにサイバーキルチェーン全段階を自律的に完遂した唯一のモデルと評価された——この事実は、AI×セキュリティの文脈における一つの到達点を示している。
キルチェーンを単独で走り切った唯一のモデル
米国のコンサルティング大手Booz Allen Hamiltonが公開した報告書「Cyber Weapon Index」は、米中18モデルを自律型攻撃者として本番相当のエンタープライズネットワークに対してテストした結果をまとめたものだ。評価はモデル自身の申告ではなく、ネットワークおよびホストのテレメトリ(実際の通信・操作ログ)を根拠にしている点が重要である。
なお、「Claude Mythos」はAnthropicが一般向けに正式リリースしたプロダクトモデルではなく、本報告書の評価フレームワーク内で使用された研究・評価目的の内部名称である。商用APIで公開されているClaudeの各バージョンとは区別して読む必要がある。
その中でClaude Mythosは総合スコア80(脆弱性調査74、キルチェーン達成度86)を記録し、18モデルの中で唯一、サイバーキルチェーンの最終目標まで到達したモデルと評価された。
サイバーキルチェーンとは、攻撃者が標的を侵害するまでの一連のフェーズ——偵察、初期侵入、権限昇格、横移動(ラテラルムーブメント)、目標達成——を指すフレームワークだ。防御側はどこかのフェーズで攻撃を止めることを目標とする。
今回のテストでClaude Mythosが実行したのは以下の流れだ:
- 窃取した従業員の認証情報を起点に侵入
- ネットワーク内を横移動しながら権限昇格
- ドメイン管理者(Domain Administrator)権限の取得まで自律的に到達
認証情報ありのシナリオでは全試行で最終目標に到達した(ただし報告書では具体的な試行回数が明示されておらず、サンプル規模は不明である点に留意が必要だ)。さらに困難な「認証情報なし」のシナリオでも、外部から侵入し権限を自力で引き上げることに成功したと報告書は述べている。
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Attack lifecycle(出典:GitHub)
ソースコードなしで未知の脆弱性を発見
この評価で際立ったもう一つの結果が、コンパイル済みバイナリに対するゼロデイ脆弱性の発見だ。テストではソースコードを与えずにコンパイル済みソフトウェアの弱点を特定できるかどうかが問われた。
テストに使われた未知の脆弱性を特定できたのはAnthropicのフロンティアモデル群のみであり、それを実際に悪用(エクスプロイト)できたのはClaude Mythosだけだったと報告書は述べている。
他の17モデルはどこまで到達したか
Claude Mythosほど完遂はできなかったものの、他モデルの結果も無視できない水準だ:
- 4モデル:ドメインアクセスと制御まで到達
- 4モデル:ラテラルムーブメント(横移動)まで到達
- 2モデル:クレデンシャルアクセスまで到達
- 17モデル(18中):ネットワークへの自律侵入に成功
報告書は「攻撃者が全フェーズを単独で完走しなくても、人間のオペレーターに有利なスタート地点を与えるだけで十分な破壊をもたらせる」と指摘している。つまり、AIがキルチェーンの途中までを自動化するだけでも、攻撃の敷居は大幅に下がる。
何が脅威で、何がそうでないか
記事は重要な留保も明示している。
- 本評価は制御された環境でのベンチマークであり、実際の組織への侵害が確認されたわけではない
- 「Claude Mythos」という名称はGitHub上にも関連プロジェクトが存在するが、マルウェアキャンペーンとの関連は確認されていない
- 評価はBooz Allen Hamiltonが設定した特定のシナリオに基づくものであり、普遍的な性能の証明ではない
脅威の本質は「マルウェアが完成した」ことではなく、自律的な攻撃推論能力がすでにここまで到達しているという事実そのものだ。防御側が各フェーズで攻撃を遮断する従来の前提が、AIによる高速・自律的な進行によって崩れつつある。
詳細はClaude Mythos AI Autonomously Executes Full Cyber Kill Chain Without Human Guidanceを参照していただきたい。