9月3日、TechCentralが「Brussels places ChatGPT under the Digital Services Act」と題した記事を公開した。欧州委員会がChatGPTをデジタルサービス法(DSA)上の「超大型オンライン検索エンジン」に指定し、より厳格な規制の対象としたことを報じている。
生成AIサービスがDSAの規制対象に正式に組み込まれたのは、今回が初めての事例だ。GoogleやMetaといった既存の巨大プラットフォームを主な対象として設計されたDSAが、AIチャットボットにまで適用範囲を広げたことは、EU規制当局がAIをデジタルインフラの一部として本格的に位置づけ始めたことを示す歴史的な転換点といえる。
ChatGPTが「検索エンジン」として規制される
欧州委員会(European Commission)は、OpenAIのChatGPTをデジタルサービス法(DSA: Digital Services Act)上の「超大型オンライン検索エンジン(VLOSE: Very Large Online Search Engine)」に指定した。
指定の根拠となったのは、ChatGPTの月間ユーザー数1億5,900万人(約1.6億人)という規模だ。DSAがVLOSEとしての厳格な義務を課す閾値は月間4,500万ユーザーであり、ChatGPTはそれを大きく上回る。
この分類で注目すべき点は、欧州委員会がChatGPTを「ハイブリッドサービス」と定義していることだ。ChatGPTはユーザーの質問に答えるチャットボットであると同時に、インターネット上の情報を検索して回答を生成する機能も持つ。この「検索機能」の存在が、単なるAIアシスタントではなく検索エンジンとして位置づけられた理由である。
4か月以内にコンプライアンス対応が必要
今回の指定を受け、OpenAIは4か月以内にVLOSEに課される義務を履行しなければならない。具体的な義務の骨子は以下のとおりだ。
- リスク評価の実施:サービスが社会・ユーザーに与えるリスクを体系的に評価し、軽減措置を講じる
- 透明性義務の拡大:サービスの仕組みや運用に関して、より広範な情報開示が求められる
- 研究者・当局へのデータアクセス提供:規制当局や認定研究者からのデータ開示要求に応じる義務を負う
- 法令違反への能動的な対応:違反が発生した場合、受動的に対処するだけでなく、積極的に措置を講じる必要がある
DSAのVLOSE義務の主軸は、コンテンツの個別審査よりも「リスク評価・透明性確保・データアクセス提供」にある点は押さえておきたい。生成AIチャットボットという性質上、従来の検索エンジンやSNSプラットフォームとは異なる形でのコンプライアンス対応が求められることになる。
欧州委員会側にも変化がある。今回の指定により、委員会はChatGPTのサービス機能や関連システムを評価するための調査権限を取得する。
同時指定されたRedditとRoblox
今回の指定はChatGPTだけにとどまらない。RedditとRobloxも同時に規制対象に加わったが、両者の分類はChatGPTとは異なる。両社は「超大型オンライン検索エンジン(VLOSE)」ではなく、「超大型オンラインプラットフォーム(VLOP: Very Large Online Platform)」として指定された。
今回の指定追加により、DSA上で指定を受けたプラットフォームおよび検索エンジンの数は合計23となった。
背景:DSAとAI規制の交差点
DSAは2023年に大規模プラットフォームへの適用が開始されたEUの主要な規制フレームワークだ。これまではGoogle、Meta、TikTokといった既存のプラットフォーム・検索エンジンが主な対象だったが、今回のChatGPT指定はAIサービスが正式にこの枠組みに取り込まれた最初の大きな事例となる。
EU AI法(AI Act)とDSAという二つの規制が並走するなかで、生成AIサービスがどちらの枠組みでどう扱われるかは業界全体の関心事だった。両規制は守備範囲が異なり、AI Actが高リスクAIシステムの開発・提供側の義務を定めるのに対し、DSAはデジタルサービスの流通・プラットフォーム運営上の義務を定める。今回の指定は、既存のDSAの解釈をAI時代に合わせて拡張するアプローチを示したものであり、両規制が相互補完的に生成AIサービスに適用されていく方向性を示唆している。
詳細はBrussels places ChatGPT under the Digital Services Actを参照していただきたい。