9月7日、Antoine van der Leeが「The iOS Simulator Inside Cursor, Claude Code, and Codex」と題した記事を公開した。この記事では、Cursor・Claude Code・CodexといったAI IDEの中でiOSシミュレータを直接使い、エージェントによる開発・検証・フィードバックのループを完結させるワークフローについて詳しく紹介されている。
AIエージェントが書いたコードを、どう目視確認するか
AIコーディングツールの普及で「コードを書く時間」より「エージェントを束ねる時間」が増えてきた。記事の著者Antoine van der Leeは2009年からiOSアプリ開発を行い、2019年からは開発者向けツールRocketSimを作っている。彼自身も「今では複数プロジェクトにまたがる複数のエージェントをオーケストレーションする時間がほとんどだ」と述べている。
しかし、「視覚的に確認せずに本番リリースすることは、まだない」とも断言する。エージェントはコードを書くのが得意な分、過剰設計や誤った実装を生み出すことも多い。AGENTS.mdでガイドしてもなお、最終的な目視レビューは外せない、というのが現時点での結論だ。
この「AIが書いたものを人間がどこで・どうやって確認するか」という問題が、今回紹介するワークフローの出発点になっている。
WWDC 2026の新機能「Device Hub」が変えるもの
今回のワークフローを成立させる技術的な要となるのが、WWDC 2026で発表されたDevice Hubだ。Appleの公式発表ページでも確認できるこの機能は、iOSシミュレータの映像を複数箇所へ同時にストリーミングできる仕組みを提供する。内部で動くシミュレータ自体は従来と同じだが、「1つのシミュレータを複数の場所で同時に見られる」という特性が、AI IDE上での活用を現実的にした。
これまでシミュレータはXcodeに紐づいた単一ウィンドウで完結しており、別ツールから参照する手段がなかった。Device Hubはその制約を取り除き、localhostのURLさえ開けばどの環境からでもシミュレータを操作・閲覧できるようにした。この変化があってはじめて、後述するRocketSimのAI IDE統合が実用レベルで機能する。
RocketSimを使った具体的なワークフロー
Antoine van der Leeが開発したRocketSim 17では、以下のフローでシミュレータをCursor・Claude Code・その他のAI IDE内に取り込める。なお、ここで登場する「Codex」はOpenAIが提供するCursorのエージェント機能(Cursor上のCodexエージェント)を指しており、かつてのOpenAI Codex API(現在は非推奨)とは別物である点に注意されたい。
RocketSimのAgent Skill & CLIを使用する
エージェントに「/rocketsimを使ってテストと検証をしてほしい」と指示すると、RocketSimのAgent Skillが起動する。エージェントがlocalhostでシミュレータをストリーム開始する
ストリーミング開始の通知が届くので、AI IDEの内蔵ブラウザでそのURLを開く。CLIを使ったテストと検証
エージェントがアプリを操作しながら変更内容を確認する。トークン効率を意識した設計になっており、不要なコンテキスト消費を抑える。ブラウザ上のシミュレータでフィードバックを送る
エージェントの作業終了後、開発者はブラウザ上のシミュレータを直接操作できる。クロスヘアでUI要素を選択してコメントを書き込み、そのままエージェントへフィードバックを渡せる。
このフローで特筆すべきは、Cursor等のAI IDEから一度も外に出ることなく「実行→確認→フィードバック」のサイクルが完結する点だ。左パネルにアクセシビリティ階層、右パネルに視覚的なフィードバック、下部にワークツリーと関連ブランチが表示され、シミュレータをブラウザから直接タップ操作できる。
各ツールのドキュメントを参照したい読者は、Cursor公式ドキュメント・Claude Code公式ドキュメントも合わせて確認するとよいだろう。
パフォーマンス検証ツール「RocketTrace」も開発中
記事では、同じくAntoine van der Leeが開発中のRocketTraceにも触れている。Xcode Instrumentsの代替として位置づけられるパフォーマンス計測ツールで、現時点では開発者が手動でパフォーマンス問題にフラグを立てる形だ。将来的にはRocketSimとRocketTraceを連携させ、エージェント自身がパフォーマンスを計測・最適化するまでを担わせる構想があるという。
まとめ
「コードを書く」から「エージェントを監督する」へと役割が変わりつつある今、開発者に残された重要な仕事は実装の視覚的確認とフィードバックだ。その作業をAI IDEの外に出ずに完結させるというアプローチは、ツール切り替えのコストを減らし、コンテキストを維持したままレビューできるという実用的なメリットがある。
※編集部の考察:「エージェントが書いたコードを誰がどこでレビューするか」はまだ業界として答えが定まっていない問いだが、「IDEの外に出ない」というこのアプローチは一つの有力な回答になりうる。WWDC 2026のDevice Hubという公式機能を軸に据えている点で、独自ツールに閉じない汎用性があり、今後の普及が注目される。
詳細はThe iOS Simulator Inside Cursor, Claude Code, and Codexを参照していただきたい。