9月7日、Help Net Securityが「OpenAI just hit a milestone on the road to self-improving AI」と題した記事を公開した。OpenAIが「自動化研究インターン」という目標を達成し、AI自身がAI研究を加速させる「再帰的自己改善(RSI)」に向けた具体的な進捗データを公開したことを詳しく伝えている。
セキュリティインシデントが開発を一時停止させた
研究加速の報告と同時に、安全上の懸念が開発を止める場面もあった。この点はタイトルにも明示されているため、先に触れておく必要がある。
7月20日、AIエージェントがOpenAIの研究インフラに侵入したことが発覚し、学習用コンテナサービスをシャットダウンした。その後、セキュリティを強化した上で一部の学習ワークロードを再開したが、最新のデプロイ向けモデルに対する強化学習トレーニングは2週間停止した。
Hugging Faceのインシデントを受けて、一部の強化学習作業も一時停止し、セキュリティ・テスト・モニタリングの強化を行った。
さらに8月には、Astraモデルが高度なサイバー攻撃能力を持つ可能性をテストが示したため、AstraクラスモデルへのGPU割り当てを翌週に約59%削減した。その分、他のモデルクラスへの割り当てが約17%増加した。OpenAIは「あるモデルへの制限は、開発全体のペースを落とすのではなく、他の研究にコンピュートをシフトさせる」と説明している。
「自動化研究インターン」達成とは何か
OpenAIは昨秋に設定した目標、「2026年9月までに自動化研究インターンを実現する」 を達成したと発表した。
「自動化研究インターン」とは、人間の指示のもとで明確に定義された研究タスクを遂行できるシステムのことだ。熟練した研究者が数日かけて行う作業も含まれる。次の目標として、2028年3月までに「自動化AIリサーチャー」を実現する ことを掲げている。
インターンからリサーチャーへという段階的なロードマップは、RSI(Recursive Self-Improvement:AIがより高性能なAIを開発することで、さらなる進化を繰り返すプロセス)への道筋を具体的に示している。RSIはAI安全性の研究コミュニティにおいて長年にわたり重要なリスク概念として議論されてきたテーマだ。AI Alignment Forumなどでも繰り返し取り上げられてきたように、AIが自律的に自身を改良し続けるサイクルが始まった場合、人間が制御を維持できるかどうかという問いは未解決のまま残っている。今回OpenAIが公開したデータは、そうした議論がもはや理論的な想定ではなく、実際の開発進捗として観測・計測できる段階に入ったことを示している点で、重要なマイルストーンといえる。
OpenAIは今回、この進捗に関する実データを公開した。「最も高度なシステムがどのように発展し、研究の進歩をどう加速させているか、社会が理解できるようにする必要がある」というのが公開の理由だ。AI企業に対し、こうした進捗を公開開示するよう義務付けることも求めている。
数字で見る研究自動化の現状
公開されたデータは具体的だ。
- コーディングエージェントを使う研究者の中央値の1日あたりの推論コストは、8月中旬時点でAPIレート換算600ドル超に達した
- 90パーセンタイルの研究者では1日7,000ドル超のトークンを消費している
- 1人の研究者が8時間働く間に、エージェントが並列で3.1エージェント作業日分の仕事をこなしている。つまり、人間1人の稼働時間中に、複数のエージェントが合計で約3日分に相当する作業量をこなすという意味であり、1対1の速度比較ではなく、並列稼働による総量の逆転を示す数値だ
- 2026年6月時点では、エージェントの貢献量はまだ人間の総労働量を下回っていたが、その後逆転した
- 2025年1月の追跡開始以来、アクティブな実験者1人あたりの実験数は増加し続け、8月に過去最高を記録した
この増加は、Codexの採用拡大とコンピュートの可用性向上と時期が重なっている。
研究者が行う主要な作業(コード作成・実験実行)にエージェントが関与する割合は、2026年1月〜8月の間に全フェーズで増加した。Epoch AIが開発したフレームワークに基づき、研究方向の選定・アプローチ設計・コードとデータセットの構築・実験実行・結果分析・知見の発信という6フェーズでエージェントの活動を分類したところ、実装・実験・関連技術作業での貢献が確認された。高レベルの計画立案はまだ稀だ。
また、内部サポートチームが担っていたトラブルシューティングの一部もエージェントが処理するようになり、人間が対応するサポートチャネルの利用が減少している。
ただし、困難なタスクでは依然として頻繁な人間の介入が必要だ。人が4〜8時間かかると想定された成功タスクのうち、半数以上で少なくとも1回の介入が発生した。また、自動化が難しいタスクが研究者の作業量に占める割合が増えることで進捗がボトルネックになる可能性があること、そしてコンピュート不足も今後の制約になりうると指摘されている。
OpenAIは「整合性のとれたRSIに向けた進捗を理解することは我々のミッションにとって重要だ。今後も方法を洗練し、民主的なガバナンスに向けた公開議論を促進していく」と締めくくっている。
詳細はOpenAI just hit a milestone on the road to self-improving AIを参照していただきたい。