9月7日、PYMNTSが「Anthropic Said to Postpone IPO to Just Before Midterms」と題した記事を公開した。Anthropicの売上の約25%をわずか2社が支えている――そのような集中リスクを抱えた状態で、同社は評価額2兆ドル規模とも見られるIPOに臨もうとしている。そのIPOが米中間選挙直前の10月下旬に延期される見通しとなった。
IPO prospectus公開が「今週」から「9月下旬以降」へ
Reutersが9月4日(金)に報じたところによると、Anthropicは当初今週にもIPO目論見書(prospectus)を公開する見通しだったが、その時期が9月下旬以降にずれ込む見込みとなった。IPOのマーケティング開始は10月中旬以降が最短で、上場完了は米中間選挙の数日前になると、複数の関係者がReutersに語っている。
Anthropic自身はコメントを拒否している。PYMNTSも同社に問い合わせたが、記事公開時点で返答は得られていない。
IPOのスケジュール変更自体は珍しいことではない。Reutersも指摘しているように、企業は市場環境や規制当局との調整に応じてIPOカレンダーを調整することが多い。ただし今回の案件の規模は別格だ。
中間選挙直前というタイミングについては、市場・政治の両面から注目を集めている。選挙前後は政策の不確実性が高まりやすく、AI規制をめぐる議会の動向がAnthropicのビジネス環境に直接影響しうることから、このタイミングでの上場完了を目指す判断は、投資家・報道双方から政治的文脈でも読まれることになる。
評価額2兆ドル――「史上最大級のIPO」の可能性
一部投資家は、AnthropicのIPOが評価額2兆ドル規模に達しうると見ている。これがAI企業に対する市場の資金吸収力を試す大きな試金石となることは間違いない。
比較対象として、SpaceXは今年前半に1兆7,700億ドルの評価額で上場済みだ。元記事が伝えるのはあくまで「一部投資家がそう見ている」というトーンであり、2兆ドル規模での上場が実現した場合、それが史上最大規模の上場になりうるという文脈で言及されている点には注意が必要だ。
Anthropicはこのプロセスの一環として、150億ドルのリボルビング・クレジット・ファシリティ(revolving credit facility:銀行から必要に応じて繰り返し借り入れできる融資枠)の確定を目指している。大型IPOに先立って融資枠を確保し手元流動性を整えておくことは、この規模の案件では一般的な準備手順だ。その後、IPO引受銀行のアナリストとの会合を経て手続きが進む予定である。
通常、アナリスト向け説明会の後、目論見書を一般公開するまで数週間の間隔が置かれる。しかし関係者によれば、Anthropicはすでにアナリストの間での知名度が高いため、その窓口期間は短縮される見通しだという。
なお、同時期にはOpenAIも非公開でIPO申請を行ったと報じられており、AI大手の相次ぐ上場が検討されている。
収益の80%をトップ1%の顧客が占める
IPO延期のニュースと並行して、Anthropicの収益構造についても興味深いデータが出ている。決済・財務データ企業Rampの調査によると、AnthropicとOpenAIはともに、**上位1%の顧客が企業収益の80%**を生み出している。
Rampのリードエコノミスト、Ara Kharazian氏はLinkedInでこう述べた。
「これは、私たちが追跡している他のどのソフトウェアカテゴリにも見られない水準の集中リスクだ」
PYMNTSの分析によれば、Anthropicの場合、この集中を象徴するのがAIコードエディタのCursorとGitHub Copilotだ。CursorはAnthropicのAPIをモデルバックエンドとして大量消費するAIコードエディタであり、GitHub CopilotもAnthropicのモデルを利用している。この2社だけで、Anthropicが昨年達成した50億ドルの売上マイルストーンのうち約12億ドル、つまり全体の約4分の1を占めている。
たった2社が売上の25%を支えているという構造は、IPOを検討する投資家にとって重要なリスク要因となりうる。AI関連の収益が急拡大する一方で、その果実が一握りの企業に集中しているという現実は、Anthropicの事業評価において避けて通れない論点だ。CursorやGitHub Copilotが他のモデルプロバイダーへ切り替えた場合、あるいは両社の成長が鈍化した場合の影響は、目論見書で投資家が最も注視する開示事項の一つになると見られる。
詳細はAnthropic Said to Postpone IPO to Just Before Midtermsを参照していただきたい。