9月7日、The News Internationalが「High-paying jobs booming despite heavy AI exposure」と題した記事を公開した。この記事では、AIの影響を強く受ける職種であっても高給求人が急増しているという米労働統計局(BLS)のデータについて詳しく紹介されている。
「AIに侵食される」はずの職種で求人が増えている
「AIが仕事を奪う」という議論は数年来続いている。Goldman Sachsが2023年に公開したレポートでは、生成AIが全世界で3億人分の雇用に影響しうると試算され、特にソフトウェア開発や分析系の知識労働が代替リスクにさらされるとされてきた。しかし米労働統計局(BLS: Bureau of Labor Statistics)が公開した最新データは、その前提を揺さぶる内容だ。
BLSが分析した831職種のうち206職種が「AIの影響:非常に高い」に分類された。この「非常に高い」という評価は、LLM(大規模言語モデル)がその職種の業務タスクをどれだけ支援できるかを示すもので、「その職が危険にさらされているか」とは別の指標だとBLSは明示している。
そして、この206職種のうち100以上の職種で年間中央値給与が7万5,000ドル以上であり、いずれも2035年まで成長が続くと予測されている。
ソフトウェア開発者:AI時代の最大の受益者
最もわかりやすい例がソフトウェア開発者だ。
- 2035年までの新規求人数予測:174,700件(元記事が示す数値。純増ではなく新規求人総数として提示されている)
- 総雇用者数:約190万人に達する見込み
- 年間中央値給与:136,000ドル(為替レートにより変動するため、ドル建て表記を基準とする)
BLSはこの成長の要因として、AI・IoT・ロボティクス・自動化分野での継続的な開発需要と、コネクテッドデバイスや電気自動車の普及に伴うセキュリティソフトウェアへの需要増加を挙げている。
コードを書く仕事がAIに最も侵食されるという見方が根強い中、実際の雇用統計は逆方向を示している。
「AIに強い」はずの職種も同じブラケットに
マネジメントアナリスト、データサイエンティスト、財務マネージャーも、ソフトウェア開発者と同じ「AIの影響:非常に高い」カテゴリに入っており、いずれも今後10年で数万単位の雇用増が予測されている。
意外なところでは人事スペシャリストもこのカテゴリに含まれている。履歴書のスクリーニングや応募者の仕分けといった業務がAIツールに置き換えられつつあるためで、これらのタスクが高露出度の分類を押し上げている。会計士・監査人、市場調査アナリストも同様で、「反復的な分析作業をAIに投げ、その結果に人間の判断を加える」という構造が共通している。
AIの影響が低い成長職種も存在する
一方、急成長しているにもかかわらずAIの影響度が低い職種もある。BLSのデータでは、フィジシャン・アシスタント(診療補助師)やオプトメトリスト(検眼師)がそれに該当する。身体的診察や対面での臨床判断を伴う業務は、現時点ではLLMによる代替になじみにくいという整理だ。
データが示す構図
今回のBLSデータが示すのは、「AIに触れる仕事=消える仕事」という単純な図式が成立しないということだ。むしろAIを道具として組み込んだ職種ほど、需要が拡大しているという傾向が読み取れる。
エンジニアにとってのキャリア判断軸として、「AIに代替されるか」よりも「AIと協働する形で業務が設計されているか」という問いの方が実態に即しているかもしれない。
詳細はHigh-paying jobs booming despite heavy AI exposureを参照していただきたい。