9月8日、Matthias Bastianが「Anthropic reportedly signs $517 billion in compute deals after Dario Amodei warned rivals about reckless risk」と題した記事を公開した。AnthropicがCEO自身の警告とは裏腹に、総額5170億ドル規模のコンピュート契約を締結したと報じており、AI設備投資競争の現状を鮮明に映し出す内容だ。
CEOが「無謀なリスク」と警告した、その11ヶ月後
2024年初頭、AnthropicのCEO Dario Amodeiは、競合他社(主にOpenAI)に対して「投資のペースが速すぎる」と警告を発した。その言葉は「彼らは自分たちが取っているリスクを本当に理解していない」というものだった。
それから約11ヶ月後、Anthropicは総額最大5170億ドル(約75兆円)相当のコンピュート契約に署名した、とThe Informationが報じている。
この構図は単なる皮肉にとどまらない。AmazonやGoogleといった大手クラウド事業者がAnthropicへの巨額出資を続けるなか、AI各社はモデル開発の優位を確保するために計算リソースの囲い込みを急いでいる。Anthropicも例外ではなく、競争圧力が経営判断を大きく左右していることをこの契約は示している。
規模の実態:14.8ギガワット超の計算リソース
契約の内訳を見ると、Anthropicは2025年10月以降、すでに保有していた1〜2ギガワットの計算能力に加えて、少なくとも14.8ギガワットを新たに確保した。さらに自社データセンターの建設も計画中だという。
ギガワット単位で語られる計算リソースは、AI開発においてはGPUクラスタの規模感を電力消費量で表したものだ。大規模言語モデルのトレーニングには膨大な電力を要するため、業界ではこの指標が実力の代理変数として使われている。
ただし、The Informationは「Anthropicの計画総容量はOpenAIが掲げる2030年までに30ギガワットという目標にまだ届かない可能性が高い」とも指摘している。一方で、Anthropicの契約の多くは2030年以降まで延びており、単純な比較は難しいとも述べられている。
収益との乖離
どちらの会社も、現時点では契約規模を収益だけでカバーできる段階にはない。
- Anthropic:年換算収益(ARR)は650億ドル超(Bloomberg報道。OpenAIのARRを上回る数字であり、算定条件・時点によって変動しうる点には留意が必要だ)
- OpenAI:2025年7月時点で400億ドル超
Anthropicの収益規模はOpenAIを上回るとされるが、5170億ドルという契約総額との差は依然として大きく、両社ともに将来の成長を織り込んだ賭けに出ている状況だ。
立場が入れ替わったAltmanの「警告」
興味深いのは、現在OpenAI CEO Sam Altmanが「ネオクラウドプロバイダー(新興クラウド事業者)の動きは持続不可能な愚かさだ」として、コンピュート過剰投資に警鐘を鳴らしていることだ。技術進歩によって、今日の高コストプロジェクトが将来的に「悪い賭け」になりうると主張している。
かつてAmodeiが競合を批判し、今はAltmanが過熱を戒める——警告の発信者が入れ替わった構図は、このレースの激しさを端的に示している。AI設備投資をめぐるこうした言説と実態のずれは、Anthropicに限らず業界全体に通底するジレンマでもある。各社が「安全」や「持続可能性」を掲げながら、競合に遅れまいと資本を積み上げる構造は、今後も続くとみられる。
詳細はAnthropic reportedly signs $517 billion in compute deals after Dario Amodei warned rivals about reckless riskを参照していただきたい。