9月6日、Futurismが「Hikers Rescued After Using Google AI to Plan Disastrous Trip」と題した記事を公開した。GoogleのAI「Gemini」に登山計画を丸投げした3人のハイカーが遭難し、救助される事態に至ったケースについて詳しく報じている。
GeminiのアドバイスでMount Shastaに挑み、遭難
カリフォルニア州カスケード山脈に位置するマウント・シャスタ(標高14,179フィート/約4,322m)。潜在的な活火山でもあるこの成層火山に、サクラメント近郊に住む3人の若い男性が登頂を試みた。計画立案に使ったのは、GoogleのAIチャットボット「Gemini」だ。
結果は救助隊の出動という形で終わった。
シカゴ・トリビューンの報道によれば、3人は「経験の浅いハイカー」であり、深夜になっても山頂を目指し続けた。マウント・シャスタでは、正午を過ぎたら引き返すことが推奨されているが、彼らはその常識を無視した形だ。急斜面を暗闇の中で下山することになった3人はシスキヨー郡の保安官事務所に電話で道を尋ねたが、指示とは別のルートを進んでしまい、隣接する峡谷に迷い込んだ。1人が膝を負傷したこともあり、そのまま一夜を峡谷で過ごすことになった。翌朝、地元の捜索救助ボランティアと米国森林局のレンジャーが合流し、3人を安全な場所まで誘導した。
問題の核心:食料も水も「足りなかった」
今回の遭難で特に目を引くのが、Geminiが提示した持ち物リストの不足だ。保安官事務所の声明によれば、3人は「グループが必要とする量をはるかに下回る食料と水しか持っていなかった」という。当初の計画では8時間の登山だったはずが、結果的に複数日にまたがる事態になったことで、その不足は致命的なリスクになった。
元記事によれば、Geminiが提示した具体的な水・食料の量は明示されていないが、保安官事務所は声明の中で不足の深刻さを強調している。
保安官事務所はこう付け加えた。
「旅行前には必ず地元のUSFS(米国森林局)マウント・シャスタ・レンジャーステーションに電話して正確な情報を確認し、旅行計画をAIだけに頼ることは絶対にしないでください」
相次ぐ「AIを信じた登山」の遭難事例
これは孤立した事例ではない。元記事でも複数の類似ケースが言及されている。
バンクーバー近郊の山でChatGPTを参考にハイキングを計画したグループが、5月初旬にもかかわらず残雪に足を取られ、スニーカーで雪山に踏み込む羽目になり救助を要請した事例がある。
また、観光客がAIチャットボットの案内で実在しないランドマークを目指して危険な場所に踏み込むケースも元記事内で報告されている。ペルーのアンデス山脈で「フマンタイ峡谷」という架空の地名を信じた2人の観光客が危険な状況に陥り、偶然近くにいたツアーガイドの助言で事なきを得たという。そのガイド、ミゲル・アンヘル・ゴンゴラ・メサ氏は元記事の取材にこう語っている。
「標高、気候の変化、ルートのアクセスは綿密に計画する必要があります。ChatGPTのようなプログラムは写真と名前を組み合わせてファンタジーを作り出す。気づいたら標高4,000mで酸素も電波もない場所にいた、ということになりかねない」
AIチャットボットが苦手な「現地の最新情報」
チャットボットの構造的な弱点として、リアルタイムの現地情報を持っていないという点がある。山の天候、積雪状況、コースの閉鎖情報、必要な装備量といったデータは、訓練データのカットオフ以降に更新されたものは反映されない。検索連動型のAIであっても、地元のレンジャーステーションが持つような細かい現地知識には及ばない。
加えて、チャットボットは「もっともらしい回答を生成する」という設計上、誤った情報であっても自信を持った口調で提示する傾向がある。今回のケースでは、Geminiが提示した持ち物リストが実際の山行条件に照らして根本的に不足していたにもかかわらず、3人がそれを信頼して出発してしまったことが事態を悪化させた。
今回の事例は、AIチャットボットの「それらしい回答を返す能力」と「正確で安全な情報を提供する能力」が必ずしも一致しないことを、改めて示している。
詳細はHikers Rescued After Using Google AI to Plan Disastrous Tripを参照していただきたい。