9月3日、The Stackが「Broadcom's revenue booms, but AI labs need help buying custom chips」と題した記事を公開した。NVIDIAのGPUに依存しない「カスタムAIチップ」という選択肢が現実的な市場を形成しつつある中、その最大の受益者の一社であるBroadcomが過去最高収益を記録した。ただし、急成長の裏には顧客集中という構造的リスクも浮かび上がっており、決算後の株価はむしろ下落した。
四半期収益は過去最高、AI部門が全社を牽引
Broadcomは2026年度第3四半期(FY2026 Q3)の決算を発表し、全社売上高は296億ドル(約4.3兆円)を記録した。前年同期比で86%増という大幅な伸びであり、これは全社ベースの数字だ。
なかでも成長をけん引しているのがAI部門で、AI関連収益の伸びは前年比221%増と、全社平均を大きく上回る。この急拡大を支えているのが、AIラボやハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)向けに設計されるカスタムチップ、いわゆるXPU(カスタムAIアクセラレータ)への需要だ。XPUはNVIDIAのGPUのような汎用品ではなく、特定顧客のワークロードに特化して設計されるチップであり、AI推論・学習の最適化手段として近年急速に注目を集めている。
現時点でBroadcomのAI部門収益の大半を支えているのは、わずか6社のカスタムチップ顧客だ。この「6社」という数字が、後述する投資家懸念の核心にもなっている。
CEOは「需要は指数関数的」、2027〜2028年も強気見通し
決算説明会でCEOのホック・タン氏は、XPU顧客からの需要について「指数関数的な成長を見せている」と述べ、「2027年・2028年にかけてコンピューティングインフラへのニーズはさらに膨らむと見込んでいる」とコメントした。
CFOのAmie Thuener氏もAI部門の収益が2027年・2028年に再び倍増する見通しを示しており、経営陣全体として強気の姿勢を崩していない。足元の需要拡大を踏まえると、中期的な成長余地は大きいという判断だ。
それでも株価は下落、投資家が警戒する集中リスク
強気な業績・見通しにもかかわらず、決算発表後の時間外取引でBroadcomの株価は約3%下落した。
調査会社Morningstarは、この割安評価の背景として特定AIラボへの収益依存を挙げている。元記事によれば投資家はOpenAIやAnthropicを念頭に置いた顧客集中リスクを意識しているとされているが、Broadcomの公式発表における「6社のカスタムチップ顧客」という情報が示すのはあくまで顧客数の少なさであり、特定社名との対応関係は元記事の引用・分析の範囲内で読む必要がある点に留意したい。いずれにせよ、少数顧客が収益の大部分を支える構造は、1社でも需要が鈍化すれば業績への打撃が大きいという集中リスクとして、市場に意識されている。
背景:XPU市場の構造変化とBroadcomの立ち位置
XPUへの注目が高まる根本的な背景には、AI学習・推論コストの急膨張がある。NVIDIAのH100/H200といったGPUは汎用性が高い反面、特定ワークロードに対しては電力効率やコスト面での最適化に構造的な限界がある。大規模なAI投資を続けるハイパースケーラーやAIラボにとって、自社ワークロードに最適化されたカスタムシリコンは、コスト競争力とインフラ自律性の両面で魅力的な選択肢となってきた。
こうした需要に対して、Broadcomはチップのアーキテクチャ設計から製造パートナーとの連携支援まで、カスタムシリコン開発の上流工程を担う存在として位置づけられている。大規模AIラボが独自チップの調達・開発を加速させる中で、そのパートナーとしてのBroadcomへの依存が深まっているというのが、今回の決算が浮き彫りにした構図だ。
成長の勢いは疑いようがないが、少数顧客への高い依存度という構造が解消されない限り、投資家の慎重姿勢も続く可能性がある。XPU市場の拡大とともにBroadcomが顧客基盤をどこまで多様化できるかが、中長期の評価を左右する焦点となりそうだ。
詳細はBroadcom's revenue booms, but AI labs need help buying custom chipsを参照していただきたい。