9月5日、Inside AIが「Delivery Riders Demand Platforms Open AI Black Box Over Pay Cuts」と題した記事を公開した。この記事では、フードデリバリーライダーたちがAIアルゴリズムによる賃金決定の不透明性に対し、データ収集と法的手段を武器に闘っている実態について詳しく紹介されている。
「同じ時間働いて、稼ぎは半分」
エジンバラのフードデリバリーライダーたちが、DeliverooやUber Eats、Just Eatのアルゴリズムに対して透明性の公開を要求している。彼らの主張は単純だ。同じ時間働いても、4年前と比べて収入が半分になった。その原因がAIによる動的価格設定にあると疑っているが、プラットフォーム側は詳細を開示しない。
7年のライダー経験を持つDavidはこう語っている。
「同じ時間数働いて、稼ぎは4年前の半分だ。まったく意味がわからない。」
8年選手のXabier Villaresも同様だ。
「この3年で劇的に変わった。週4〜5日、夜と昼を中心に働けば家賃と生活費を賄えていた。今はもうそれが不可能だ。」
個々の体感にとどまらず、ライダーたちは自らデータを記録し、収入低下を数字で裏付けようとしている。その取り組みが、研究者との連携や法的手段へとつながっている。
ライダー自身が記録したデータが証拠になる
特に注目されるのが、DeliverooライダーのDylan(スコットランドで5年以上のキャリア)が2023年半ばから自力で収集してきた詳細な記録だ。
- 1時間あたりの注文件数:3.6〜3.8件で横ばい
- 1件あたりの平均フィー:2023年の£3.67 → 2026年前半で£3.42に低下
Dylanは確定申告のために記録をつけていたが、そこに異変を発見した。
「同じ量の仕事をこなしているのに、収入が大幅に下がっていることに気づいた。同じ仕事量で、かなり少ない報酬しか得られていない。」
さらに彼が問題視するのが「スタック注文(stacked orders)」だ。これは近接する2〜3件の配達をまとめて受ける仕組みで、個別の配達と同じフィーは支払われない。Dylanは「提示されるオファーの中には、馬鹿にしているとしか思えないものもある」と述べている。
Deliverooのアルゴリズム「Frank」と顔認証トラブル
Deliverooは自社のアルゴリズムを「Frank」と命名し、「超スマート」なシステムとして紹介している。機械学習を使って注文タイミングを予測し、どのライダーにどの注文を割り当てるかを決定するという。
しかし現場では別の問題も起きている。ライダーのGraeme Francesは事故で黒目になった後、顔認証チェックに失敗しアカウントにアクセスできなくなった。人間のサポートスタッフにも連絡がつかず、手動レビューを申請したが、結果が出たことも自分でログインして初めてわかったという。Deliveroo側は「写真がぼやけていたため」と説明している。
Francesはこの経緯を踏まえ、「プラットフォームは不透明性に依存している。誰にいくら払うかを決める『ブラックボックス』の中身は誰にもわからない」と指摘する。
研究者と連携した「集団行動の実験」
ライダーたちはセント・アンドルーズ大学とエジンバラ大学の研究者が設立した慈善団体「Workers' Observatory」を通じて組織化している。同団体は今後10年分の研究資金を確保済みで、動的価格設定(dynamic pricing)のアルゴリズムに関する実証実験も実施している。
ダンファームリン(ファイフ)では、複数のライダーが同時にログオンして低報酬のオファーを一斉に拒否する実験を行った。一部のライダーは短期的な報酬増を確認したが、別のライダーはペナルティを受け、実験直後に1人がアカウントを停止された。プラットフォーム側はオファー拒否を理由にした停止はないと主張しているが、停止の理由は不明のままだ。
Observatory所長でセント・アンドルーズ大学ビジネススクール講師のCailean Gallagherは述べる。
「膨大な知識とデータのインフラが隠されている。私たちがやろうとしているのは、この仕組み全体がどう動いているかを地道に理解することだ。」
アムステルダムの集団訴訟が欧州全体の試金石に
9月第1週、英国・オランダほか複数国のUberドライバーがアムステルダムでUberに対する集団訴訟を起こした。AIシステムが個々のドライバーの「受け入れ可能な報酬水準」に基づいて賃金を押し下げており、データ保護法に違反するという主張だ。訴訟規模は数十億ドルに達する可能性がある。
オックスフォード大学とコロンビア・ビジネス・スクールの共同研究では、2023年に導入された動的価格設定アルゴリズムがUberドライバーの時間あたり収入を「実質的に低下させた」と報告している。Uberは個別ドライバーの行動に基づいた価格調整を否定しており、差異はGPSなど他の要因によるものだとしている。
アルゴリズムの透明性を求める動きは、欧州のプラットフォーム労働規制とも連動しており、この訴訟の結果がAI駆動型賃金システムの規制枠組みに影響を与える可能性がある。
詳細はDelivery Riders Demand Platforms Open AI Black Box Over Pay Cutsを参照していただきたい。