9月5日、The Next Webが「AI cloud firm Nscale seeking $3.5B in pre-IPO financing from Nvidia and Third Point」と題した記事を公開した。英国のAIクラウド企業Nscaleの契約残高が、わずか4週間で510億ドルから1,030億ドルへと倍増した。その主因はAnthropicとの大型契約であり、同社は現在ニューヨーク上場前の資金調達としてNvidiaやThird Pointから最大35億ドルを手当てしようとしている。
契約残高が4週間で倍増、Anthropicとの450億ドル契約が主因
Nscaleが投資家に示している契約総額は約1,030億ドルだ。わずか4週間前に報じられた数字は510億ドルだった。その差を埋めるのが、8月26日にAnthropicと締結した450億ドルの計算資源供給契約である。
この契約が成立する前、同じ供給枠はMicrosoftとGoogleにも打診されていた。Semaphorの報道によれば、Microsoftは夏にデータセンターポートフォリオの見直しを経て撤退し、Googleも自社の設備投資計画を精査した上でパスした。その結果、Anthropicが契約を取った。
Nscaleは投資家に対し、年間売上高約181億ドル、調整後利益約136億ドルを生み出せると説明しているが、これは正式なガイダンスではなく「例示的な数字」と位置づけている。この数字は、締結済みの長期契約がすべて履行されることを前提として試算されたものであり、現時点の実績とは切り離して読む必要がある。実際、2025年通期の売上高は約3,300万ドルで、直近四半期でようやく1億ドルを超えた段階だ。契約残高の急拡大と足元の売上規模の乖離は大きく、長期契約の履行状況が今後の評価軸となる。
調達の構造:NvidiaがGPUの買い手に融資する構図
今回の調達は大きく2本立てだ。
- 最大15億ドルの転換社債:Daniel Loebが率いるヘッジファンドThird Pointが主導。IPO価格に対して二桁台のディスカウントで設定され、バリュエーションが上がるにつれてディスカウントは縮小、300億ドルで調整が止まる仕組み。
- 約20億ドルのNvidiaからの出資:Nscaleは約194,000基のVera Rubin GPUを発注済みであり、NvidiaはGPUの買い手に対して融資する格好になる。
Vera RubinはNvidiaのBlackwellアーキテクチャの後継世代にあたる次世代GPU製品群で、現時点ではまだ広く市場に出回っていない最先端チップだ。その大量発注先に対してNvidiaが自ら資金を供給するという構図は、GPU販売の拡大とエコシステム育成を同時に狙った戦略とも読める。
Goldman Sachsが調達全体のアレンジを担当している。なお、協議は継続中であり、金額・投資家の構成はいずれも変わり得る。
ノルウェーの冷気と水力発電が支えるインフラ
欧州側の事業基盤となるのが、ノルウェー北部のNarvikプロジェクトだ。ABN AMRO、DNB、Nordea、SEB、そしてノルウェー国営の輸出金融機関Eksfin から計7億9,000万ドルのコミット済みデットファイナンスを受けている。
立地の利点は明確で、北極圏に近い冷涼な気候による自然冷却と、ノルウェーの水力発電による低炭素電力を活用する。顧客はMicrosoftだ。ノルウェーの輸出信用制度はノルウェーの電力と労働力を使うプロジェクトを支援するために存在しており、同案件はその要件を満たしている。
なお、Nscaleは英国のソブリンAI計画にも組み込まれており、BTおよびNvidiaと連携した国内データセンター構想にも関わっている。
上場先はニューヨーク
ロンドン創業・欧州最大のAIインフラ企業が、北欧の国営金融機関の支援を受け、英国の国家AI戦略にも組み込まれながら、株式を売り出す先として選んだのはニューヨークだ。
取締役会にはSheryl SandbergとNick Cleggが名を連ねる。Cleggは英国副首相を務めた政治家だが、その後Meta(旧Facebook)でグローバル担当副社長として長年政策・渉外を統括した経歴を持ち、テック業界との接点も深い人物だ。Nscaleが設立されたのはわずか2年前であり、その成長速度とIPO前の資金調達規模は、現在のAIインフラ投資の熱量を端的に示している。
詳細はAI cloud firm Nscale seeking $3.5B in pre-IPO financing from Nvidia and Third Pointを参照していただきたい。