9月4日、TechSpotが「New York City bans generative AI for elementary and middle school students」と題した記事を公開した。一度はAI禁止を「過剰反応だった」として撤回したニューヨーク市が、わずか2年余りで再び小中学生への生成AI使用禁止に踏み切った。全米最大の公立学校区による今回の方針転換は、教育現場におけるAI利用をめぐる揺り戻しとして注目される。
一年間の「モラトリアム」として設定
今回の禁止措置は恒久的なものではなく、2026〜2027年度の1年間限定のモラトリアム(猶予期間・一時的な停止措置)として位置づけられている。対象は公立学校の就学前教育(プレスクール)から8年生(中学2年相当)までの生徒で、学習者向けの生成AIツールの使用が全面的に禁じられる。
高校生については完全禁止ではないが、監督付きのパイロットプログラムやキャリア教育プログラムにおいて承認済みのツールのみ使用可能だ。また全高校生を対象に、年2回のAIリテラシー基礎教育が実施される。AIコンパニオンチャットボット(会話相手として機能するAI)については全学年で禁止となる。
スクリーンタイムにも制限が設けられた。授業中の端末利用は中学生で45分以内、小学生で30分以内に制限される。ただし、アクセシビリティツール、試験、遠隔学習、コーディングやロボティクスといった承認済み活動は例外とされている。
教師への影響と今後のレビュー
教師も規制の対象だ。授業計画への承認済みAI活用は認められるが、成績評価、行動監視、または生徒に関する重要な意思決定への使用は禁止される。
政策の運用に関しては、連合チームが2027年4月にレビュー結果と提言をまとめ、翌年度以降の方針を判断する材料とする予定だ。
Schools ChancellorのKamar Samuels氏は声明で次のように述べた。
「子どもたちの成長を支える、人と人とのつながり、好奇心、創造性を守るための枠組みを整えている」
市長のZohran Mamdani氏も、「学校では毎日、子どもたちに質問し、前提を疑い、なぜかを問うことを教えている。AIについても同じ義務がある」と語っている。
2023年のChatGPT禁止との違い
ニューヨーク市が学校でのAI使用を禁じるのはこれが初めてではない。2023年初頭にはChatGPTの使用が禁止されたが、その後「チートや不正確な情報、批判的思考力の低下といったリスクに過度に注目していた」として撤回された経緯がある。
今回の措置は、その反省を踏まえた上で再び禁止に踏み切ったものだ。前回との違いは、スクリーンタイム制限やリテラシー教育の組み込み、1年後のレビュー設計など、より構造的な枠組みが設けられている点にある。単純な禁止から、段階的・検証的なアプローチへの転換とも読める。
ロサンゼルス学区も同様に、全学年の生徒端末で生成AIツールへのアクセスを一時的にブロックしており、ニューヨーク市の動きは全米規模のトレンドの一部とも見られる。
AI不正利用対策の現状
学生によるAIを使った不正行為は以前から深刻な問題とされており、2024年8月時点ですでに「蔓延している」と報告されていた。対策としては、手書き課題、口頭試験、LLMに単純に入力しても解けない問題の設計など様々な試みがなされてきた。最近では、ある大学教授がプロンプトに不可視のテキストを埋め込むトラップを仕掛け、32名の学生のAI不正を検出したケースも話題になった。
研究では、AIに答えを与えさせる形での使用は自律的な学習能力を低下させ、感情面や信頼関係にもリスクをもたらす可能性があるとされており、今回の禁止措置はこうした懸念を政策に反映させたものといえる。
詳細はNew York City bans generative AI for elementary and middle school studentsを参照していただきたい。