9月5日、Global Newsが「Employers, job seekers increasingly using AI in the hiring process - National」と題した記事を公開した。採用プロセスにおいて、AIツールの活用が雇用主・求職者の双方で急速に広がっている——それどころか、企業側が導入したAI審査システムを、求職者側もAIでくぐり抜けようとする構図が現実のものになりつつある。
採用のあらゆるフェーズにAIが入り込んでいる
カナダの雇用市場が厳しさを増す中、企業側は応募書類のふるい分け、候補者の評価、採用フローの効率化に様々なAIツールを導入している。
トロントの役員採用会社BES Executive SearchのプレジデントであるJason Murrayは、企業がAIを活用する目的を次のように説明する。
「時間管理のために使っている。ランク付け、仕分け、要約のために」
一部のツールは従来の一次面接をそのまま置き換えている。トロントを拠点とする**Ribbon**は、人間の採用担当者の代わりに会話型ボットが候補者と対話するAI面接プラットフォームを開発した企業だ。北米のHRtech市場では、採用コスト削減と選考スピード向上を目的としたこうしたAI面接ツールへの関心が急拡大しており、Ribbonはその代表的なプレイヤーの一社として位置づけられている。
オタワの**Knockri**は録画形式の面接動画をAIで分析し、候補者の回答から職務上の成功予測につながる行動特性やスキルを抽出する仕組みだ。採用担当者がすべての動画を視聴する代わりに、AIがスコアリングした結果をもとに選考を進める形式をとる。日本でもHireVueなどの類似サービスが一部の大手企業に導入されており、AIによる動画面接評価は決して対岸の話ではない。
KnockriのCEO兼共同創業者Jahanzaib Ansariは設計思想についてこう語る。
「そのポジションにおける成功予測因子と相関する特定の行動やスキルを見ている」
同氏は自身の経験も踏まえ、職務と無関係な特性が不当に評価されないよう設計されていると強調した。
「私はひどい吃音を持って育った。だからそれは減点対象にならない」
法規制も動き出した
こうした動きを受け、行政も対応を始めている。**オンタリオ州は2024年に新ルールを導入**し、採用・選考にAIを使用する際は求職者への開示を義務付けた。求人票中のAI言及件数が幅広い職種で急増していることを受けた措置で、透明性の確保が法的要件となった形だ。
AIツール支持派は「主観的な印象ではなく職務関連能力に集中することで、人間のバイアスを一部排除できる」と主張する。一方で、批判的な声も根強い。**LinkedIn**などのプロフェッショナル向けSNSでは、「人間が確認する前に自動システムに弾かれた」と疑う候補者の投稿が頻繁に見られる。採用プロセスのブラックボックス化に対する不信感は、カナダに限らず広く共有されている懸念だ。
Murrayは慎重な姿勢を崩さない。
「正しく使わなければ、これらのテクノロジーは私たちを後退させる可能性がある」
求職者側のAI活用と「やりすぎ」の境界線
求職者側もAIを積極的に使い始めている。履歴書の作成、カバーレターのカスタマイズにとどまらず、さらにはオンライン面接中にリアルタイムで回答を生成するツールまで登場している。面接官の質問を音声認識で拾い、即座に回答案を画面に表示するタイプのソフトウェアで、面接という「評価の場」そのものの前提を揺るがしつつある。
こうしたツールの存在について、MurrayはAIへの過度な依存を強く懸念する。
「応募プロセスから本人が完全に不在になるようなAI技術が出てきている」
ただし、雇用主側がすべての活用を同等に受け入れるわけではない。Ansariは一部のAI活用を、自力で考えることが求められる場面での計算機使用に例えた。
「面接や評価の特定の場面では、計算機ではなく自分の頭を使ってほしい」
履歴書作成の補助ツールとして使うことと、面接中にリアルタイムで回答を丸ごと生成させることの間には、雇用主が許容する範囲に明確な温度差がある。どこまでをAI支援とし、どこからを不正とみなすか——その線引きはまだ業界全体で合意されておらず、採用の透明性をめぐる議論はこれからも続くとみられる。
AIが採用プロセスに深く組み込まれるにつれ、テクノロジーを活用する範囲と依存しすぎる境界線をどこに引くか、雇用主・求職者ともに判断を迫られている。
詳細はEmployers, job seekers increasingly using AI in the hiring process - Nationalを参照していただきたい。