9月5日、The Next Webが「Why the EU called ChatGPT a search engine, not a platform」と題した記事を公開した。欧州委員会はChatGPTを「プラットフォーム」ではなく「検索エンジン」と呼んだ。この分類の選択は、単なる言葉の問題ではない。どちらのカテゴリに収めるかによって、OpenAIが負う法的責任の範囲が根本的に変わる——そこに今回の指定の核心がある。
EUがChatGPTを「検索エンジン」と呼んだ理由
欧州委員会は今週、ChatGPTを**デジタルサービス法(DSA)上の「Very Large Online Search Engine(非常に大規模なオンライン検索エンジン、VLOSE)」に指定した。これによりOpenAIには、GoogleやBingと同様の透明性義務とリスク軽減義務が課され、違反時には全世界年間収益の最大6%**の制裁金が科される可能性がある。
だが、Politicoの報道によれば、この指定は意図的に範囲を狭く設定されており、ChatGPTの「会話」機能の大部分はDSAの対象外となる。具体的には、地方選挙の候補者を検索するような問い合わせはDSAの対象になるが、「誰に投票すべきか」を巡る対話型のやり取り——そこで誤情報が混入する可能性があるにもかかわらず——は対象外になり得る。
なぜ「プラットフォーム」と呼ばなかったのか
欧州委員会にはもう一つの選択肢があった。ソーシャルメディアやマーケットプレイスをカバーする「Very Large Online Platform(VLOP)」への指定だ。こちらはより広範なコンテンツモデレーション義務を伴うが、それ以上に重要な法的効果がある。
プラットフォーム法の根幹には**セーフハーバー(safe harbour)**の原則がある。ユーザーがアップロードしたコンテンツについては、プラットフォーム企業は原則として責任を負わないという考え方だ。DSAはこの原則を引き継いでおり、VLOPに指定された企業はコンテンツモデレーション義務を負う一方で、第三者が生成したコンテンツについてはセーフハーバーによる責任免除を得る構造になっている。
これをチャットボットに適用すると、「人間とAIの対話の産物はユーザー生成コンテンツか」という問いが生まれる。もしそうだとすれば、モデルが生成したテキストは、企業が「ホスト」する第三者コンテンツとみなされる。つまりOpenAIは、自社製品が出力するすべての文章について責任を負わなくて済む可能性が生じる。欧州委員会がVLOP指定を避けたのは、まさにこの法的譲歩を与えないためだと読める。モデレーション義務と引き換えにセーフハーバーを与える——そのトレードオフをChatGPTには適用しないという判断だ。ただし、その選択にはコストがある。
「安全な選択」が生む盲点
DSA交渉の主要メンバーだったデンマークの欧州議会議員、クリステル・シャルデモーゼ(Christel Schaldemose)は、ChatGPTは「検索エンジンをはるかに超えた存在」であり、チャットボット固有のリスクはDSAの最も強力な義務の対象外だと指摘する。彼女が名指しした問題は、感情的依存と操作的・依存性を高めるデザインだ。
この問題の規模は小さくない。AXAの2026年版メンタルヘルスレポートでは、世界の成人の最大60%がセラピー目的でチャットボットを利用していると報告されている(同レポートより)。米カリフォルニアでは、16歳のAdam Raineの両親がAIチャットボットへの依存に関連して提訴している。
しかしこれらは「会話レイヤー」のデザイン上の問題であり、今回の指定が及ばない領域だ。
既存カテゴリのどれにも収まらない
アムステルダム大学准教授(法学)のジョアン・ペドロ・クィンタイス(João Pedro Quintais)は、ChatGPTを「検索エンジン、オンラインプラットフォーム、そして自らコンテンツを生成するパブリッシャーという三つの機能を持つハイブリッド」と描写する。
DSAは2022年に策定されており、このような存在を想定していない。DSAはそもそも「他者が生成したコンテンツをいかに扱うか」を規律する法律であり、モデル自身がコンテンツを生成するという構造はそのアーキテクチャの外側にある。欧州委員会が分類の決定に約1年を要したことは、この問題の難しさを示している。
AIアクト側の「別の盲点」
欧州委員会にはDSAと並行するもう一つの手段がある。**AIアクト**だ。昨年8月から汎用AIモデルの開発者には体系的リスクの評価・軽減義務が課されており、8月末には各AI企業へのセキュリティ手続きに関する聴取も始まった。
ただしAIアクトが想定する「体系的リスク」の内容は、核・生物兵器、モデルの制御喪失、自律的なハッキング、大規模操作といったものだ。AccessNowのダニエル・ロイファー(Daniel Leufer)はこの点を明確に批判する。
「このガイダンスは、いわゆる実存的リスクに焦点を当てており、基本的権利へのリスクには十分注意を払っていない」(Politico取材より)
チャットボットへの依存症を抱える10代の若者は、AIアクトの意味での「体系的リスク」ではなく、DSAの「検索リスク」でもない。どちらの規制にも明確に収まらないというのが現状だ。
規制の次の一手
欧州委員会はすでに別の文脈で突破口を開いている。子どもに向けた依存性デザインを理由にMetaを調査したDSA事例では、インターフェースの設計そのものを規制対象とした。AccessNowのロイファーは、今回の指定をChatGPTにも同じアプローチを適用する機会と見ている。
指定の全文はまだ公開されていない。OpenAIの会話レイヤーに対する義務の範囲は、正式な情報提供要求が出るまで明確にはならない。
そして本質的な問いも未解決のままだ。モデルが生成した一文の責任は誰が負うのか。この問いへの答えは、今週付けられたラベルよりずっと大きな意味を持つ。
詳細はWhy the EU called ChatGPT a search engine, not a platformを参照していただきたい。