9月4日、Kiro公式ブログが「Agentic engineering in the cloud」と題した記事を公開した。PCを閉じても、席を外しても、エージェントは動き続ける——そんな開発体験を実現するクラウド実行機能が、今回正式リリース(GA)となった。Kiro Web・クラウドセッション・クラウド設定の3機能が同時にGAとなり、AIエージェントIDEとしてのKiroがローカルを超えた新しい開発スタイルを提案している。
Kiroは、AWSが開発・提供するAIエージェント搭載のIDE(統合開発環境)だ。コーディング補助にとどまらず、仕様策定から実装・テスト・PRまでをエージェントが一貫して担う「agentic engineering」を志向しており、2025年にパブリックプレビューが開始された比較的新しいツールである。公式ドキュメントはkiro.dev/docsから参照できる。
ローカルで始めて、クラウドで走らせる
ちょっとした修正のつもりが大きな作業になる、作業中に席を外さなければならない、複数のリポジトリにまたがってしまう——そういった状況で、ローカルのIDEやCLIからシームレスにクラウド実行へ移行できる仕組みが正式提供となった。
今回のアップデートの核心は、「エージェントの作業をクラウドに委ねたまま、どのデバイス・インターフェースからでも続きを拾える」という点だ。長時間かかるリファクタリングや複数リポジトリにまたがる変更を、ローカルマシンの電源を落としたままクラウドに丸ごと任せられる体験は、従来のIDEでは実現できなかったものである。
クラウドセッション:切断してもエージェントは止まらない
クラウドセッションは8月にプレビュー提供が始まった機能で、今回GAとなった。IDEやCLIから開始したセッションは、ローカルマシンではなくKiroのクラウドサンドボックス上でエージェントが動作する。接続を切っても処理は継続し、後からブラウザ・エディタ・ターミナル・モバイル、あるいは別のマシンから同じセッションに戻ることができる。
使い方のイメージとしては:
- IDEで実装の途中まで進めたら、クラウドセッションに切り替えて処理を任せる
- フレームワークのアップグレードや大規模リファクタリングなど、時間のかかる作業をクラウドで走らせている間、別の仕事に移る
- 複数リポジトリにまたがる変更(バックエンドサービス・SDK・フロントエンドなど)を1つのセッションで処理し、プルリクエストまで通す
クラウドセッションは共有クレジットを使用し、クラウドコンピュート分の追加課金はないとされている。
クラウド設定:ローカルの環境をそのままクラウドへ
もう一つの目玉がクラウド設定(Cloud Configuration)だ。ローカルの.kiro設定ファイルをクラウドにアップロードすることで、クラウドセッションでもローカルと同じセットアップを使えるようになる。
.kiro設定ファイルには、steering(エージェントの振る舞いや制約を定義する指示ファイル)、カスタムエージェント、スキル、フック(特定のイベントをトリガーにエージェントを自動起動する仕組み)などが含まれる。これらをクラウドにアップロードしておくことで、ローカルと同じルールやワークフローをクラウドセッションでも再現できる。
設定の同期は双方向にも機能する。クラウド設定を新しいローカルセッションに自動で読み込む「設定同期」も有効化できるが、ローカルファイルが優先されるため、既存のローカル設定が上書きされる心配はない。
Kiro Webの主な活用パターン
Kiro Webはブラウザ上でエージェントを動かすインターフェースで、5月のプレビュー以来、日常的に使う開発者が増えているという。ローカル環境のセットアップなしにエージェントを呼び出せるため、レビュー対応や定型作業の自動化といった用途で特に活用されている。公式が挙げる具体的な使い方は以下のとおりだ。
- PRのレビューコメント一括対応:
/kiro fixコマンドでレビュースレッドをまとめて解消 - ブラウザバグの再現から検証まで:Playwrightを使ってブラウザ上でバグを再現し、修正後の動作を実ブラウザで検証
- Automationsによる定期実行:依存関係の更新、Issueのトリアージ、チェンジログ更新、ドキュメントのズレ検出などをスケジュール実行。人が毎回起動する必要がない
対応プランと認証
対応リージョンはUS East(バージニア北部)で、Pro・Pro+・Pro Max・Powerサブスクリプションに含まれる。
チーム・エンタープライズ向けには、AWS IAM Identity Center・Okta・Microsoft Entra IDを使ったSSOに対応。管理者がKiroコンソールで1つのトグルをオンにするだけで、チームメンバーがクラウドセッションを利用できるようになる。
詳細はAgentic engineering in the cloudを参照していただきたい。