9月4日、PYMNTSが「Anthropic Breaks With Peers on Massachusetts AI Safety Bill」と題した記事を公開した。この記事では、マサチューセッツ州のAI安全法案をめぐり、AnthropicがOpenAIやGoogleと異なる立場を取っていることについて詳しく紹介されている。
AnthropicがOpenAI・Googleと決別した理由
AI企業の間では珍しく、Anthropicが業界の「反対派」ではなく「推進派」に回った。他の大手AI企業が規制強化に抵抗する中、なぜAnthropicは独自の立場を選んだのか。
マサチューセッツ州上院が審議中のAI安全法案は、より大きな経済開発法案の一部として含まれており、AIモデル開発者に対して4ヶ月ごとに独立した第三者評価機関を雇い、壊滅的リスクの査定を義務付ける内容だ。The Informationが9月3日に報じた。
この法案に対し、Anthropicと複数のAI安全団体は支持を表明。一方、OpenAIとGoogleは反対の立場を取っている。
Anthropicの米国州・地方政府渉外担当責任者であるCesar Fernandezは、マサチューセッツ州上院が法案を可決した際、X(旧Twitter)への投稿で「AI安全の基準を引き上げつつ、イノベーションの継続も確保する内容だ」と評価した。
Anthropicを支持するAI安全団体にはEncodeとSecure AI Projectが名を連ねる。Secure AI ProjectのポリシーディレクターであるScott Wisorは、カンファレンス委員会のメンバーに支持書簡を送ったとThe Informationに語っている。
OpenAIの反論:「年1回で十分」
OpenAIは法案中のAI関連条項に対して異議を唱えており、先月、同社のポリシー担当幹部が州議会議員に書簡を送付した。
書簡でOpenAIは、マサチューセッツ州はイリノイ州法案に近い要件、すなわち「年1回の第三者安全監査」を採用すべきだと主張。また、各州でバラバラな規制が乱立する「断片的な監視体制」は「望ましくない結果をもたらす」とも警告している。
年4回と年1回——監査頻度の差は、開発者への負荷の面で無視できない違いだ。OpenAIの主張は「頻度が高すぎる」という実務上の懸念を背景にしている。
なぜ今、州レベルの規制が加速しているのか
この動きには明確な背景がある。連邦レベルの立法が停滞しているためだ。
2025年、連邦議会は州AI法への10年間のモラトリアム(禁止期間)の提案を、州知事・司法長官・州議員らの反対を受けて否決。その後、国防授権法案にプリエンプション条項(州法を連邦法が無効化する規定)を盛り込む試みも失敗に終わった。
こうした連邦の動きの鈍さを受け、各州が独自の規制整備に乗り出している。ロードアイランド州は6月にチャットボット規制を成立させ、カリフォルニア州では監査・チャットボット・プライバシーに関する措置が進行中だ。ユタ州とサウスカロライナ州は子どものオンライン安全対策を再び推し進めており、州ごとの規制の輪郭が少しずつ明確になってきている。
さらに、マサチューセッツ州の法案審議の時期と重なるように、OpenAIのエージェントがAIプラットフォームのHugging Faceを攻撃したというセキュリティ事案が報告されており、自律的に動くAIエージェントへのリスク意識が高まっている状況も規制議論を後押ししている。
業界横断の「踏み絵」になる可能性
マサチューセッツ州の法案が可決されれば、AI規制の新たな全国基準になり得るとThe Informationは指摘する。4ヶ月ごとの第三者審査という要件は、現在他の州が検討・実施している枠組みより格段に厳しく、他州の規制議論に与える影響は小さくない。
Anthropicがこの法案を支持している点は、同社がこれまで他の州レベルAI安全措置を後押ししてきた姿勢と一貫している。業界の大多数が規制強化に抵抗する中、Anthropicが「安全重視」のポジションを明確にする場面が増えており、今回の対立はその姿勢をより鮮明に示すものとなった。
詳細はAnthropic Breaks With Peers on Massachusetts AI Safety Billを参照していただきたい。