9月5日、The Newsが「TikTok owner ByteDance finalizes $29.6 billion loan amid AI growth drive」と題した記事を公開した。TikTokの親会社ByteDanceが296億ドル(約4.3兆円)の大型シンジケートローンを確定させた。特筆すべきは、この巨額融資が完全無担保である点だ。資産も株式も差し出さずに300億ドル近くを調達できるという事実は、国際金融機関がByteDanceの信用力をいかに高く評価しているかを端的に示している。
当初目標の1.5倍、需要が規模を押し上げた
ByteDanceが当初設定していた借入目標は200億ドルだった。しかし参加金融機関からの引き合いが300億ドル超に達したため、最終的な融資額は296億ドルまで拡大された。
本案件はCitigroupとJPMorgan Chaseが主幹事を務め、アジアにおける今年2番目に大きいドル建て融資となった。
条件面も好条件が揃う。参照金利はSOFR(担保付翌日物調達金利。かつての国際指標金利LIBORの後継として2023年に完全移行した短期金利指標)に対して68ベーシスポイント上乗せ(前回2024年の107億ドル融資では85bp)と、借入規模が約3倍に膨らんだにもかかわらずスプレッドは縮小している。返済期間は3年で、5年への延長オプション付きだ。
そして繰り返しになるが、本融資は無担保である。ByteDanceは資産も株式も担保として差し出していない。関係者はThe Newsの取材に対し、このような超大型融資が無担保で成立したことを「極めて異例」と語っており、金融市場においていかに例外的な案件であるかが伝わる。
資金の用途:データセンターとAIチップ
公式の用途は「一般事業目的およびインフラ拡張」とされているが、記事は実態を明確に指摘している。資金の大部分はAI関連インフラへ投じられる見通しだ。
具体的には以下が挙げられている:
- データセンターの大規模拡張(内モンゴルを含む複数地域でのクラスター整備)
- 大規模言語モデル(LLM)の学習に必要な専用ハードウェアの確保
ハードウェア調達の動きも具体化している。Reutersは今年6月、ByteDanceが上海のAIチップメーカーIluvatar CoreX(天数智芯)からAI推論用チップを購入する交渉を進めていると報じた。またBaiduとの同様の調達協議も検討中だという。
欧米製GPU(NVIDIAなど)への輸出規制が強化される中、中国テック企業が国内チップメーカーとの調達ルートを整備しつつある流れとも一致する動きだ。
テック大手が「借金でAIを買う」時代
ByteDanceの今回の動きは、業界全体のトレンドを体現している。次世代AIモデルの開発に必要な計算資源のコストは急騰しており、自社キャッシュフローだけで賄える規模をとうに超えつつある。記事は「テック大手が次世代AIに必要な膨大な計算能力を調達するために債券・融資市場に依存する度合いが増している」と明記している。
この傾向は欧米勢でも顕著だ。Metaは2024年にAIインフラ投資のために大規模な社債発行に踏み切り、MicrosoftはOpenAIへの追加出資を含むAI関連支出の増大に対応すべく資本市場を積極的に活用している。いずれも「稼いだ分で投資する」モデルから「まず資本を確保してから攻める」モデルへの移行を示しており、ByteDanceの今回の融資もその文脈で読み解ける。
※編集部の考察:ByteDanceは国内外の競合から激しいプレッシャーを受ける立場にある。無担保かつ好条件での大型調達が成立した背景には、TikTokを核とした収益基盤への金融機関の高い信頼があるとみられるが、米国での規制動向が今後の信用評価に影響する可能性は引き続き注視が必要だ。
詳細はTikTok owner ByteDance finalizes $29.6 billion loan amid AI growth driveを参照していただきたい。