9月4日、Euronewsが「Workers say AI makes them look more skilled than they are, study finds」と題した記事を公開した。この記事では、AIが職場での自己評価と他者評価にどのようなズレを生み出しているかを示した大規模調査の結果について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「AIのおかげで実力以上に見られている」——64%が認めた
AI活用プラットフォームのUse.AIが、米国・英国・カナダ・EU・ラテンアメリカの就労者9,684人を対象に調査を実施した。結果は職場のAI利用実態をかなり率直に描き出している。
- **64%**:AIがなければ独力では完成できなかった業務にAIを使ったことがある
- **52%**:AIによって実際より経験豊富に見られていると感じる
- **43%**:まだ対応できると感じていない職責をAIの助けで引き受けた
- **35%**:AIなしでは現職の業務の一部を遂行するのが難しい
- **25%**:雇用主が自分の実力を過大評価していることを心配している
さらに踏み込んだ数字もある。**39%がAIを使って作成した成果物をその旨を伝えずに提出したことがあり、30%はAIが実質的に作り上げた仕事で称賛を受け入れたと回答している。そして19%**は、AI補助による成果が昇進に貢献したと答えた。
多くの職場にはAI使用の開示義務がないため、これらは必ずしもルール違反ではない。ただし、パフォーマンス評価がどこまで人間の能力を反映しているか不透明になっているのは事実だ。
「報告義務」より「マテリアルな貢献」を基準に
調査を実施したUse.AIの共同創業者兼CEOのIhor Herasymovは、Euronewsのインタビューで、全面的な開示義務化には否定的な立場を示した。
「AIがあらゆる日常業務に組み込まれていく中で、すべてのやり取りを申告させるのは現実的でない。より有用な基準は、AIが成果物の実質に大きく関わったかどうかだ。分析・提言・プレゼンテーション・コードなど重要なアウトプットの相当部分をAIが生成した場合は、開示すべきだ。」
目的は監視ではなく、マネージャーが「仕事の質」と「人間の貢献」の両方を判断できるだけのコンテキストを与えることだとHerasymovは述べている。また、成果物を提出した人間が内容を理解し、説明責任を負うことを明確にするポリシーが必要だとも主張する。
完成物では「実力」が測れなくなった時代の評価
ここで重要な論点がある。AIを上手く使いこなすこと自体がプロフェッショナルとして評価されるスキルになりつつある以上、AI補助で成果を出すことが即「能力の偽装」を意味するわけではない。問題は、完成した成果物からその人の実力が読み取れなくなった点だ。
Herasymovは、今後の評価に必要な能力として以下を挙げている。
- AIが出した回答の誤りを検出できるか
- 不完全な情報下で判断を下せるか
- AIが予期しない出力をした際に対処できるか
そして特に強調したのが「問題の定義力(Problem framing)」だ。
「正しい問いを立て、前提を疑い、なぜその行動が他より優れているかを説明できるか。それは磨かれた最終アウトプットだけからは到底推測できない。」
現時点では、AI時代に適合したパフォーマンス評価の定型はまだ確立されていないとHerasymovは認めている。「AIで何を生み出せるか」と「何を実際に理解しているか」の区別が、昇進・評価の判断においていっそう重要になるとしている。
自社サービスへの懸念も正面から認める
35%が「AIなしでは業務の一部が困難」という調査結果についてHerasymovは、AI販売側として利益相反があるにもかかわらず、率直に懸念を認めた。
「AIで答えを生成できても、その答えが間違っているときに気づけない、なぜ適切かを説明できない、あるいはシステムに頼れない場面で適切な判断が下せない——そうなると、それはもはや補完ではなく依存だ。AIで速くなり、できることが広がっても、独立した判断力が弱まるなら、それはトレードオフだ。雇用主も技術企業もそれを認識して対処すべきだ。」
加速するAI自律性がさらに問題を深刻化させる
背景として見落とせないのがAIの進化速度だ。AI評価非営利団体METRのデータによると、AIの自律性が倍増するまでの期間は、かつての8ヶ月トレンドから4.7ヶ月にまで短縮している。また2025年初頭から2026年初頭にかけてAIの自律的な能力は前年比1,400%増を記録した。
AIツールのダウンロード数は15,000件から1,180万件(780倍)に、AIをアプリやデータソースに直接接続するための標準規格MCP(Model Context Protocol)の公開ツール数は約17万7,000件(35倍)へと拡大した。MCPはいわゆる「エージェントAI」を実現するための基盤技術で、AIが単に手順を説明するだけでなく、実際にタスクを実行できるようになる。
エージェントAIが人間の直接操作なしに多くの工程をこなすようになるほど、「その成果物に名前を連ねた人間が何をしたのか」は一層わかりにくくなる。
詳細はWorkers say AI makes them look more skilled than they are, study findsを参照していただきたい。