9月4日、SiliconAngleが「Enterprise AI readiness trails the hype」と題した記事を公開した。エンタープライズ企業のAI導入実態がハイプ(誇大な期待)に大きく後れを取っている現状を報じており、「現在見られるエージェント型AIアプリケーションの約95%は、エージェントアーキテクチャを必要としない」という強烈な指摘が注目を集めている。
「AIパーティーには招待されていない」は勘違い——企業はまだスタート地点
VMware Explore 2026の会場でtheCUBE Researchの取材に応じたDavid Linthicum(Linthicum Research 創業者 兼 主任研究員)は、エンタープライズAIの現状をこう一言で表した。
「今、私たちはAIをようやく始めたところだ。みんな、AIの大きなパーティーが開かれていて自分だけ招待されていないと思っているが、現実には企業はまだ動き出したばかり。インフラをどう整えるか、どのくらいコストがかかるかを試行錯誤している段階だ。」
現在のAI活用は、LLM(大規模言語モデル)、エッジシステム、カレンダリング・ソフトウェア開発・プロセス自動化向けのエージェントに集中している。一方、サプライチェーン管理や在庫管理など、より厳格なデータ・セキュリティ・ガバナンス要件が求められるコア業務への展開はまだ広がっていない。
インフラ整備が先、AIは後
実験フェーズを超えて本番運用に移行しようとする企業にとって、最大の障壁はインフラだ。
Linthicumはイベント会場での対話についてこう述べた。「ここにいる多くの人と話しているが、彼らはまだAIシステムの準備ができていない。インフラをモダナイズし、オンプレミスでAIを動かせるようにするための道筋とパートナーを探している。」
Broadcomは、この課題に対してVMware AI Factoryを提供している。VMware Cloud Foundation上に構築されたこのプラットフォームは、ベアメタルインフラからモデルデプロイまでを自動化し、プライベートAI環境の構築を簡素化することを目的としている。
「エージェントブーム」への冷静な視点——95%は不要
この記事で最も注目すべき指摘は、エージェント型AIへの過剰な傾倒に対する警鐘だ。
Linthicumの見立てでは、現在見られるエージェント型AIアプリケーションの約95%は、エージェントアーキテクチャを必要としないという。
「現実には、みんなエージェントについて少し落ち着く必要がある。私が目にするエージェントAIアプリケーションの95%はエージェントである必要がなく、画鋲を打つのにハンマーを使っているようなものだ。使うべき理由も、使わない理由もある。」
「エージェント型AI」とは、LLMが自律的にタスクを計画・実行し、複数のツールやAPIを呼び出しながら目標を達成するアーキテクチャを指す。近年、AutoGenやLangGraphといったフレームワークの普及とともに急速に注目を集めている。
Linthicumが指摘するのは、エージェント化によって複雑性・運用コスト・セキュリティリスクが増大するにもかかわらず、それが本当に必要なユースケースかどうかの吟味が不十分なケースが多い、という点だ。ビジネス上の正当な根拠なしに自律エージェントを採用することのリスクは、現場でも軽視されがちだ。
まとめ:ハイプと現実のギャップをどう埋めるか
Linthicumの主張を整理すると以下の通りだ。
- 現状:大半の企業はAI導入の初期段階にあり、インフラ整備とコスト把握が最優先課題
- 採用の実態:LLMやシンプルな自動化が中心。コア業務へのAI統合はまだ限定的
- エージェント熱:大半のユースケースではオーバーエンジニアリングになっている
- 必要なもの:技術選定の前に「なぜエージェントが必要か」を問い直す判断力
CTOや技術責任者が「うちもエージェントを入れなければ」と焦る前に、自社のインフラ成熟度とユースケースの妥当性を冷静に評価することが求められる、というのがLinthicumの一貫したメッセージだ。
詳細はEnterprise AI readiness trails the hypeを参照していただきたい。