9月5日、PYMNTSが「OpenAI and Anthropic Get 80% of Revenue From 1% of Customers」と題した記事を公開した。OpenAIとAnthropicの収益が上位1%の顧客に80%集中しているという、エンタープライズAI市場の極端な収益構造について詳しく紹介されている。
上位1%が収益の80%を占める——「他のソフトウェアカテゴリでは見たことがない」
法人向け経費管理プラットフォームのRampが独自データを集計したところ、OpenAIとAnthropicの両社において、上位1%の顧客が企業収益全体の80%を占めるという結果が明らかになった。Rampのリードエコノミスト、Ara Kharazian氏はLinkedInでこう述べている。
「これは、我々が追跡している他のどのソフトウェアカテゴリにも見られない水準の集中リスクだ」
この数字が衝撃的なのは、「AIを使う企業の数が増えている最中にもこの集中度が維持されている」という点だ。顧客層の裾野が広がっても、支出の構造は変わっていない。
CursorとGitHub Copilotだけでアンソロピック収益の約25%
集中の実態が最もくっきり見えるのがAnthropicだ。コーディング支援ツールのCursorとGitHub Copilotの2社だけで、Anthropicの年間ARR(年間経常収益)50億ドルのうち約12億ドル——全体の約4分の1——を叩き出したとVentureBeatが報じている。この50億ドルはAnthropicが2025年に達成した年間ARRのマイルストーンであり、累積売上ではない点に注意が必要だ。
注目すべきは顧客の重なりだ。GitHub CopilotはMicrosoftが所有しており、そのMicrosoftはAnthropicの最大のライバルであるOpenAIに130億ドルを投資している。つまりMicrosoftは、競合する2大AIラボの両方に対して主要顧客かつ投資家という立場にある。
Anthropicの顧客構成をさらに掘り下げると、年間10万ドル以上を支払う顧客が現在約6,000社(1年で7倍増)、年間100万ドル以上の顧客は約2ヶ月で倍増し1,000社超に達したという。急成長の数字は華やかだが、収益の裏側にあるCursorとCopilotへの依存は、成長の速さと同じだけリスクの大きさも示している。
従量課金モデルが「2顧客で25%」を可能にした構造的理由
なぜたった2社がここまでの比重を持てるのか——背景にはAIのコスト構造がある。
従来のSaaSはシート単価×ユーザー数で収益が決まる。しかしAI APIは使用量(トークン数)に応じた従量課金が基本だ。CursorやGitHub Copilotはコードを生成するたびにAPIを呼び出すため、ユーザー1人あたりのトークン消費量が他のツールとは桁違いになる。企業が「何席使うか」ではなく「AIが何をどれだけするか」で費用が跳ね上がる構造が、2社の突出した支出を生んだ。
研究会社Sacraによれば、Anthropicの総収益の約80%がエンタープライズ・スタートアップ向けAPIからの従量課金で構成されており、RampのデータはこのSacraの分析を外部から独立して裏付けた形だ。
OpenAIとAnthropicの市場シェア逆転
エンタープライズAPI市場におけるシェアの変動も興味深い。Menlo Venturesの「2025 State of Generative AI in the Enterprise」レポートによると:
- **Anthropic:約40%**(2023年は12%)
- **OpenAI:約27%**(2023年は50%)
- Google:約21%
2023年時点でOpenAIが50%を握っていたシェアが、2年間でAnthropicに逆転された。3社合計で約88%のLLM API利用を占める寡占状態は変わっていないが、その内訳が大きく動いている。なお、このレポートを出したMenlo VenturesはAnthropicの投資家でもある。投資家が自社ポートフォリオ企業に有利なデータを公表する場合、調査設計や回答者属性に意図せぬバイアスが混入しやすい。このシェア数値はひとつの参照点として読むのが妥当だろう。
一方OpenAIは、9,000以上の組織がAPIで100億トークン以上を処理し、そのうち約200組織が1兆トークンを超えたと自社レポートで公開しているが、特定顧客の収益比率は非開示だ。
次の「ヘビーユーザー」候補は金融業界
IT・コーディングツール以外でこの集中が再現されるとすれば、次の候補として金融業界が挙がる。PYMNTSの2026年8月のEnterpriseレポートによると、金融企業の**95%がAIをデータ・技術業務に広範に組み込んでいると回答している。さらに80%**が今後12ヶ月で支出を増やす見込みで、削減予定の企業はゼロだ。調査対象とした75の業務タスクのうち27でAI活用が過半数に達しており、医療・メディア業界を上回る採用水準にある。
銀行や決済企業は膨大なトランザクション量を抱えており、AIが本番稼働に移行すれば従量課金ベースの支出が急増する可能性がある。コーディングツールと同様に「処理量に比例して課金が跳ね上がる」ユースケース——大量の契約書審査、リアルタイム不正検知、取引データの要約など——が広がれば、金融業界が次の「上位1%」を形成する展開もあり得る。ただし、採用率の高さが同じ支出カーブを描くかどうかはまだわからない。
エンタープライズAIの収益構造は、SaaSの常識とは異なる論理で動いている。顧客数が増えても収益の集中が解消されない理由は、ビジネスモデルそのものに内在している。
詳細はOpenAI and Anthropic Get 80% of Revenue From 1% of Customersを参照していただきたい。