9月2日、SiliconAngleが「Broadcom beats expectations as AI labs double down on custom chips」と題した記事を公開した。BroadcomがAIカスタムチップ需要の急拡大を背景に第3四半期決算で市場予想を上回り、今後2年でAI関連収益を「倍増→再倍増」の合計4倍に拡大する見通しを示したという内容だ。足元では翌四半期の売上見通しが市場予想をわずかに下回り株価が下落する場面もあったが、CEO Hock Tanは顧客ごとの具体的な展開計画を示しながら長期投資への強い確信を表明した。
Nvidiaに依存しないAIチップの流れが加速
AIチップといえばNvidiaのGPUが主役という構図が続いているが、Broadcomはその構図に楔を打ち込む存在として台頭している。同社はGoogle、Meta、OpenAIといった主要AIラボのカスタムAIアクセラレータ設計を手掛けており、いわば「AIラボ専用チップのODM」として機能している。
今回の第3四半期決算では、その需要の大きさが数字に如実に表れた。
売上・利益ともに予想超え、ただし株価は下落
Broadcomが発表した第3四半期決算の主な数字は以下の通り:
- 売上高:299.59億ドル(前年同期比+86%、前年は161.05億ドル)
- 調整後EPS:3.32ドル(市場予想3.24ドルを上回る)
- 純利益:130.9億ドル(前年同期の41.4億ドルから3倍超)
- 半導体部門売上:167億ドル(前年比3倍、市場予想152億ドル超え)
ただし、翌四半期(第4四半期)の売上見通しを348億ドルの中間値として示したところ、市場予想の350.3億ドルをわずかに下回り、時間外取引で株価は約2%下落した。年初来でも+6%にとどまっており、S&P 500の+12%に劣後している。
Jalapeno、MTIA、Ironwood——顧客別チップの最新状況
決算説明会でCEOのHock Tanが示した顧客ごとの状況が具体的で注目に値する。
OpenAI向け「Jalapeno」:同社が共同開発したカスタムプロセッサで、LLM推論に特化した設計。2027年にはOpenAIが約1.3ギガワット分のJalapenoを展開する見込みで、その後5ギガワット超まで拡大する見通し。現在OpenAIはすでに第2世代Jalapenoのテープアウト(製造向け設計確定)を準備中で、開発チームは第3世代のコンセプト検討にも入っている。
Google向け「Ironwood TPU8i」:Googleの最新テンソル処理ユニット(TPU:ニューラルネットワーク演算に特化したGoogleのカスタムチップ)で、設計をBroadcomが担う。Google Cloudの顧客向けに来年約5ギガワット分の展開が予定されており、さらに10ギガワット追加の視野もある。TanはGoogleに対して「今後数年、毎年数百億ドル規模のプロセッサを出荷できる」と述べた。
Meta向け「MTIA」:推論と大規模レコメンデーション向けに最適化されたカスタムアクセラレータで、量産出荷が進む予定。
2027年にAI収益を倍増、翌年さらに倍増
Tanは2027年度(会計年度)に向けて強気な見通しを示した。
- AI関連収益を115億ドルへ倍増(現在比)
- さらに翌年に230億ドルへ再倍増
- 2027年度のEPS目標:30ドル
すなわち「2年で合計4倍」という構造であり、単純に4倍と言うより「毎年2倍ずつ積み上げる複利的な成長シナリオ」として提示されている点が重要だ。市場予想を下回る足元の見通しとは対照的な強気姿勢で、カスタムチップへの長期投資需要に強い確信を示している。
「残余価値保証」という異例の支援策
CFOのAmie Thuenerは、「現在のキャッシュフローと大規模な先行投資の間のギャップを埋める」支援を主要顧客に対して行っていると説明した。
さらにTanは、AIラボ2社に対して「残余価値保証(residual value guarantee)」という偶発債務の形での支援を検討していると明かした。残余価値保証とは、資産(この場合はカスタムチップ)が将来一定の価値を下回った場合に保証者(Broadcom)が差額を補填する約束を指す。顧客側は投資回収リスクを低減でき、チップの大規模導入に踏み切りやすくなる一方、Broadcomはチップの市場価値が想定以上に下落した場合に損失を被るリスクを引き受けることになる。チップサプライヤーが顧客の財務的リスクにここまで直接関与するのは業界でも異例であり、Broadcomがいかにこれらの顧客との関係を戦略的な長期投資と位置づけているかを示している。「Broadcomにとってこれらの企業に投資し支援することは、経済的に合理的だ」とTanは述べている。
なお、同社の時価総額は現在1.7兆ドル超。ChatGPTが登場した約4年前と比べ、株価は6倍以上に上昇している。
詳細はBroadcom beats expectations as AI labs double down on custom chipsを参照していただきたい。