9月2日、trellner.comが「Three sites made 215,128 "best software" pages for AI. Perplexity cites them」と題した記事を公開した。AIの「おすすめソフトウェア」回答を支える引用元の実態を調査した結果、機械生成ページを大量に量産した正体不明のサイト群がPerplexityの参照先として機能していることが明らかになった。
AIに「おすすめのCRMソフトは?」と質問すると、もっともらしい回答が返ってくる。だが、その根拠として引用されているURLが実際にどのようなサイトなのかを、ほとんどのユーザーは確認しない。AIは回答を生成する前にウェブから文書を取得し、その内容を根拠として回答を条件付ける「グラウンディング」と呼ばれるステップを踏む(RAGなどの仕組みがその代表例だ)。AI回答への信頼が高まる一方で、このグラウンディング層に流れ込む情報源の品質検証はほぼ手つかずのまま——今回の調査はその死角を正面から突いた。
「AIのおすすめ」の根拠を調べる
調査手法はシンプルだ。「CRMソフトウェア」から「博物館コレクション管理ソフトウェア」まで380のソフトウェアカテゴリについて、perplexity/sonarとperplexity/sonar-proの2モデルにOpenRouter経由でトップ5を問い合わせた。Perplexityを選んだ理由は、回答生成時に参照したURLを公開しているため、引用元を直接検証できるからだ。合計760回のAPIコールで7,534件の引用URLが得られた。
引用の6割は訪問者がほとんどいないサイト
得られた引用URLのうち、59.8%がTrancoランキング10万位より下のドメインだった。Trancoランキングはウェブトラフィックに基づくドメイン人気ランキングで、引用されたドメインの36.5%(751ドメイン)はトップ100万にすら入らない。引用ドメインの中央値Trancoランクは71,611位だ。
開設時期も新しい。Wayback Machineで確認すると、ランク外ドメインの初回キャプチャ中央値は2020年、ランク内ドメインは2011年。ランク外ドメインの16.6%は2025年以降に初めてキャプチャされている。「根拠ある情報源」として引用されているサイトの多くが、ごく最近に出現した無名ドメインだということになる。
引用数上位にベンダーのマーケティングブログ
引用数の上位にはg2.comやgartner.comといった定番のソフトウェアレビューサイトが並ぶ一方で、Gartnerを上回る引用数で上位に入ったのがguideflow.comだ。このサイトはインタラクティブなプロダクトデモを販売するSaaSベンダーで、レビューサイトでも比較ディレクトリでもない。にもかかわらず、そのブログが380カテゴリのうち96カテゴリで194回引用されている。
「3Dレンダリングソフトウェア」「IVRソフトウェア」「RFIDソフトウェア」「建築事務所向けソフトウェア」——guideflowが競合しない市場のリスト記事が、「何を買うべきか」という問いへの回答根拠になっている。コンテンツマーケティングブログを運営すること自体は多くの企業が行う正当な手法だ。問題は、それをグラウンディング層が「信頼できる参照元」として扱う点にある。
「グラウンディングページ」を自称する謎の3サイト
最大の問題として報告されているのが、wifitalents.com、worldmetrics.org、gitnux.orgの3サイトだ。この3サイトは合計181回引用され、380カテゴリのうち41カテゴリに登場した。
3サイトには次の共通点がある。
- 2023年12月〜2024年5月の間にNameCheapで登録(いずれも2023年12月以前には存在しない)
- DNSを同一のCloudflareネームサーバーペアに委任
- ページテンプレート・ナビゲーション構造が同一(Services, Market Data, Software Advice, Editorial Process, Company)
- それぞれ6記事のブログを持ち、18記事すべてが互いのブランドについての内容
そして規模が異常だ。3サイトのサイトマップに列挙されたURLは計315,202件。うち/best/<something>-software/形式のページだけで215,128ページに上る。対してブログ記事はそれぞれ6本ずつ。ほぼ全ページが機械生成によるソフトウェア比較ページだということになる。
決定的なのが自己説明だ。worldmetrics.orgとgitnux.orgのHTMLタイトルは<Brand> — Facts & Grounding Pageという形式で、メタディスクリプションには次のように書かれている。
Verified facts about Gitnux: an independent market research company publishing industry statistics, custom research, and software Best Lists. Company, legal, methodology, and compliance details in one machine-readable record.
「グラウンディング」はエンドユーザーが使う言葉ではなく、RAGなどで情報取得ステップを指す技術用語だ。「機械可読なレコード(machine-readable record)」という表現も同様。これらのページは人間ではなく、AIのクローラーに向けて書かれていると記事は指摘する。
品質の問題も明白だ。「プロジェクト見積もりソフトウェア」という同一カテゴリをこの3サイトで比較すると、ランキングが一致しない。Gitnuxの1位はWorldmetricsのトップ5にすら登場しない。3サイトはそれぞれ3名ずつ、計9名の「スタッフ」をクレジットし、Gitnuxは結果を「AI-verified · Expert reviewed」と表示している。さらに3サイトすべてのbyline行に未展開のテンプレート変数が含まれていた(「Within the next 26 days」「Within the next 40 days」という文字列がそのまま表示されている)。
引用先の1%超は到達不能、ギャンブルサイトへのリダイレクトも
モデルが回答に含めた1,502件のベンダーサイトについても検証した。10ドメインはDNSレコード自体が存在せず、404や無応答を含めると17ドメイン(1.1%)が到達不能だった。特に目を引く例が以下だ。
graphiql.com:GraphiQLの公式サイトとして提示されたが、そのようなサイトは存在しないdryad.co:研究データリポジトリDryadのURLとしてsonarが提示したが、実際にはインドネシアのオンラインギャンブルポータル「BIGSLOT288」にリダイレクトmontecarlo.com:データ品質ツールMonte CarloのURLとしてsonar-proが提示したが、実際にはモナコのMonte-Carlo Société des Bains de Merホテルグループにリダイレクト
これらはPerplexityが「悪意ある選択」をしているわけではなく、グラウンディングの仕組み上、ドメインの信頼性を深く検証しないまま取得・引用してしまう構造的な問題として理解すべきだ。
調査の限界とデータ公開
記事は自らの限界も明示している。測定対象はPerplexityのみで、ChatGPT・Gemini・Copilotには当てはまらない。380カテゴリはニッチ寄りに設計されており、一般的なクエリではロングテール比率が下がる可能性がある。また、これらの情報源を除外すれば回答が変わるかどうかは検証していない。
調査の全データセット——引用URL、推薦結果、Trancoルックアップ、ベンダー生存確認スクリプト——はCC BY 4.0ライセンスで公開されている。「AIが何を根拠に答えているか」という問いは、生成AIが情報インフラとして定着しつつある今、ユーザーにとっても開発者にとってもより重要になっている。
詳細はThree sites made 215,128 "best software" pages for AI. Perplexity cites themを参照していただきたい。