9月1日、InfoWorldが「Broadcom says that enterprise AI agents need two things: Data they can trust and boundaries they can't cross」と題した記事を公開した。BroadcomがエンタープライズAIエージェントの実用化に必要な2つの条件として「信頼できるデータ基盤」と「越えられない境界」を定義し、Tanzu Platformの具体的なアーキテクチャを通じてその実現方法を示している。
AIエージェントの「2大条件」をBroadcomが定義
エンタープライズ向けAIエージェントの導入が加速する中、現場のエンジニアが直面するのは「どのデータを信じてよいか分からない」「エージェントが意図しない操作をしないか不安」という2つの根本的な問題だ。BroadcomはこれをTanzu Platformの設計思想として正面から取り上げ、アーキテクチャレベルで回答を示している。
条件1:信頼できるデータ基盤(AI-Ready Data Foundation)
BroadcomのVMware Tanzu担当バイスプレジデント、Purnima Padmanabhan氏はこう説明する。
「エージェントを構築する際に3つのデータソースがあったとして、わざわざデータレイクハウス全体を構築する必要はないはずだ。」
Tanzu Platformでは、エージェント開発者がデータソースを指定するだけで、バックグラウンドで適切なサイズの環境が自動的にデプロイされる。データの配置方法や構成をユーザーが意識する必要はなく、Tanzuがデータのタイプに基づいて自動的に整理する設計だ。
「データをどこに置けば最も効率的にアクセスできるかを我々が判断する。開発者はデータソースを指定してインジェストを開始するだけでいい」とPadmanabhan氏は述べた。
この仕組みの核心は**Tanzu Data Intelligenceに組み込まれた技術だ。構造化・非構造化データの統合、クレンジング、ベクトル化(vectorization)、そしてMCPゲートウェイ**の提供までを一貫して担う。
「ウェアハウス、構造化・非構造化データの統合、クレンジング、ベクトル化、MCPゲートウェイの提供——我々はこれらのサンドボックスサービスを大規模に運用し、本番環境のビジネスアプリケーションに活用する方法を知っている」
ここで登場するMCP(Model Context Protocol)は、AIモデルが外部ツールやデータソースと標準化された方法でやり取りするためのプロトコルで、Anthropicが提唱し業界で普及が進んでいる。Tanzuはこのゲートウェイを内包することで、エージェントが複数のデータソースに安全かつ一貫した形でアクセスできる経路を提供する。
条件2:越えられない境界(Guardrails)
エージェントがどれだけ高性能であっても、企業システムにおいては「やってはいけないこと」を確実に守らせる仕組みが必要だ。Tanzu Platformはエージェントの動作範囲をプラットフォームレベルで制約するガードレール機能を備えており、個々のエージェント実装に安全性を委ねるのではなく、インフラ層で境界を強制する設計を採っている。
Padmanabhan氏は、このガードレールを「エージェントが越えることのできない境界線」と表現する。具体的には、エージェントがアクセスできるデータの範囲、呼び出せる外部APIやツールの種類、実行できる操作の種別といった制約をプラットフォーム側で定義・管理する。これにより、個々のエージェント実装の品質に依存することなく、組織全体のセキュリティポリシーやコンプライアンス要件をインフラとして一元的に適用できる。
エンタープライズ環境では、あるエージェントが誤って顧客データを社外サービスに送信したり、権限外のシステムを操作したりするリスクが常に存在する。Tanzuのガードレールはこうしたシナリオをエージェントコードの外側で遮断することを目的としており、開発者が「守る」ための実装コストを削減しながら、運用側が「守られている」ことを確認できる構造を提供する。
「データレイクハウス不要」の主張が意味すること
従来のエンタープライズデータ活用では、AIやアナリティクスのためにデータレイクやデータウェアハウス(まとめて「データレイクハウス」と呼ばれる)を構築・運用する大規模なプロジェクトが前提だった。Broadcomのアプローチはこの前提を崩し、エージェント構築のリードタイムを大幅に短縮することを狙う。
なお、「データレイクハウス不要」はBroadcom側が強調するメッセージであり、あくまで用途に応じた適切なサイズの環境を自動構成するという設計思想を指す。大規模なデータ基盤が一切不要になるという主張ではなく、エージェント構築のために改めてフルスケールのデータ基盤を用意しなくてよいという文脈で理解するのが正確だ。
「エージェント構築プロセスが格段に速くなる」とPadmanabhan氏が強調するように、これはデータエンジニアリングのコストと時間を削減し、アプリケーション開発者がより迅速にAIエージェントを本番投入できる環境を目指したものだ。
VMwareが長年積み上げてきたデータ管理の知見が、このアーキテクチャの裏付けになっているとBroadcomは主張している。
詳細はBroadcom says that enterprise AI agents need two things: Data they can trust and boundaries they can't crossを参照していただきたい。