9月2日、runtimewire.comが「AIR Security raises $50M to filter what AI agents trust」と題した記事を公開した。公開マーケットプレイス上のスキルの12.4%が信頼できない外部リソースに依存しており、既存のスキャナーをすり抜けたスキルが26,000以上のエージェントに到達した——AIエージェントのアドオンを狙った攻撃の現実を自ら実証してステルスから姿を現したスタートアップ「AIR Security」が、その脅威への対策製品を引っ提げて登場した。
AIエージェント向け「ファイアウォール」という発想
AIエージェントのセキュリティ課題は、従来の「権限管理」だけでは対処しきれない側面がある。エージェントが何にアクセス「できるか」はパーミッション設定で制御できるが、エージェントのコンテキストに「何が入り込むか」は別問題だ。
AIR Securityの共同創業者Yair SabanとNiv Hoffmanはここに着目した。2人はイスラエル軍で出会い、後に攻撃的サイバーセキュリティや企業インフラ、AIセキュリティの研究に携わった経歴を持つ。2026年2月に設立したAIR Securityは、「すべての企業がネットワークを守るファイアウォールを持つように、AIエージェントを守るファイアウォールが必要だ」(Saban)というコンセプトで製品を構築している。
具体的には、エージェントが外部コンテンツや追加機能(スキル、プラグイン、MCPサーバーなど)を読み込む際にインラインで評価し、チェックに失敗したものをブロックする仕組みだ。
数週間で2段階の資金調達
資金調達は2ラウンドに分かれて実行された。
- Sequoia Capital が主導した最初のシードラウンドで1000万ドル
- Greenoaks が主導したフォローオンで4000万ドル(数週間以内にクローズ)
合計5000万ドルという異例のスピードは、AIプラットフォーム側が自前のセキュリティ機能を実装する前に、エージェント周りのコントロールポイントを確立しようとする競争を反映している。SabanはモデルプロバイダーがAIエージェントへの保護機能を追加していくことを想定しつつも、複数のモデル・エージェントフレームワーク・クラウド環境にまたがるベンダーニュートラルな製品が必要だと主張する。
エンジェル投資家にはCognitionのZach Frankel、Wiz共同創業者Yinon Costicaなどが名を連ねる。従業員は約40名で、米国での採用も開始している。ウォルト・ディズニーとコストコのCISO(最高情報セキュリティ責任者)を歴任したRyan Knisleyが最高戦略責任者に就任しており、大企業側の購買経験を経営幹部として組み込んだ格好だ。
「アドオンのサプライチェーン」が本丸
AIエージェントはスキル、プラグイン、MCP(Model Context Protocol)サーバー、サブエージェントを通じて機能を拡張できる。MCPはAIエージェントが外部ツールやデータソースと連携するための標準プロトコルで、Anthropicが策定し現在は業界横断で普及が進んでいる。これらのコンポーネントはコードを持ち込んだり、インターネットから変化する命令を取得したり、内部システムに接続したりする。
問題はインストール時点の審査だけでは不十分なことだ。クリーンだったプラグインでも、開発者アカウントが侵害されたり、参照パッケージが変更されたり、失効ドメインが第三者に取得されたりすれば、後から危険な存在になり得る。一度きりのスキャンでは、承認後に悪意あるものに変化した依存関係を検出できない。
AIR Securityは2026年6月の研究でその問題を実証している。公開マーケットプレイスとGitHubから収集した142,836件のライブスキルをスキャンした結果、17,822件(12.4%)が少なくとも1つの信頼できない外部リソースに依存していることを確認。これらのスキルは合計で約670万インストールに及ぶとされる。
また同社の研究チームは、既存のセキュリティスキャナーをすり抜けて配布されるスキルを実際に作成する実験も行った。そのスキルは26,000以上のエージェントに到達し、会話や接続システムへのアクセスが可能な状態になったという。ペイロードは被害を与えるものではなく、影響を受けたユーザーに通知するためのメールアドレス収集に留めたと公開記事で説明されている。なお上記の調査数値・到達数はいずれもAIR Security自身による報告であり、独立した第三者による検証は現時点では確認されていない。
競合との違いと現状
同カテゴリにはNoma Security、Zenity、Astrix Security、Operant AIなどが存在し、エージェント検出・アイデンティティ管理・ガバナンス・ランタイム監視で製品が重なる。
AIR Securityが差別化の軸に据えるのは、予防的フィルタリングとアドオンのサプライチェーンに対する継続的な再検証だ。多くの競合がエージェントの「発見」や「ガバナンス」に重点を置くのに対し、AIR Securityはエージェントが実際にコンテンツやアドオンを読み込む瞬間をインラインで捕捉し、事後検知ではなく事前遮断を徹底する点に主眼を置く。スキャナーが継続的に動作することで、インストール後に悪化した依存関係も検出対象になる設計だ。現時点で同社のスキャナーはオンラインで見つかるスキルやアドオンの約27%を拒否している。顧客は20社以上(そのうち約25%が大企業)で、金融サービスや製薬分野からの需要が強いとしている。
Sabanは今後も追加ラウンドの調達を見込んでいると述べており、当面の課題はAIプラットフォームがこの保護機能を標準装備する前に、エンタープライズ向けの独立した市場を確立できるかどうかにある。
詳細はAIR Security raises $50M to filter what AI agents trustを参照していただきたい。