9月2日、Techstrong AIが「U.S. Presses G20 for Light-Touch AI Rules and Economic Deregulation Ahead of Miami Summit」と題した記事を公開した。トランプ政権がG20の場でAI規制の最小化と経済規制緩和を各国に働きかけている動向を詳報しており、Elon Muskが会合で「新しいものはデフォルトで合法でなければならない」と発言するなど、国際的なAIガバナンスをめぐる外交戦が本格化している実態が浮き彫りになっている。
「デフォルト合法」を国際的な原則として提示するアメリカ
12月のマイアミG20首脳会議に向けた閣僚級会合が今週、ノースカロライナ州チャペルヒルで開催された。トランプ政権はここで、AI国際規制の枠組み作りに真っ向から反対する外交攻勢を展開した。
商務長官のHoward Lutnickとホワイトハウスの技術顧問Michael Kratsiosは、「カロライナ原則(Carolina Principles)」と呼ぶ政策フレームワークを提示した。その骨子は3点だ。
- 新たな規制機関の設立を避ける
- 新規ルールは「真に新規性のある課題」にのみ適用する
- 新興技術への商業的な参入経路を開放する
会合にはNVIDIAのJensen Huang、OpenAIのSam Altmanが対面で参加。MetaのMark ZuckerbergとGoogle DeepMindのDemis Hassabisはバーチャルで参加した。
バーチャル参加したElon MuskはEUの規制を名指しで批判した。
「新しいものはデフォルトで違法ではなく、デフォルトで合法でなければならない。EUでは規制水準が異常に高く、それが進歩を妨げている」
— Elon Musk(会合での発言より)
元ホワイトハウスAI政策責任者のDavid Sacksも、高度なAIモデルを航空や医薬品と同様に規制することに警告を発し、「厳格な監視体制は災害をもたらす」と述べた。
「コンセンサス方式」が最大の武器になる
今回の動向で技術・政策の観点から見逃せないのが、G20の意思決定メカニズムだ。G20はコンセンサス(全会一致)方式を採用しており、1カ国でも反対すれば合意文書に規制関連の文言を盛り込めない。
現在アメリカはG20の輪番議長国を務めており、この立場を活かして国際的なAIガバナンス機関の設立を事実上封じることができる。各国が12月のマイアミ首脳会議までに外交的なカードを切るかどうかが、今後の焦点になる。
反発する声も根強い
アメリカの主張に対し、各方面からの反発は明確だ。
カナダは「AIの成長は公共の安全と合わせて評価すべき」として押し返す方針を示した。欧州はすでに施行済みのEU AI法を根拠に異議を唱えており、金融安定理事会(FSB)もAIが引き起こすサイバーリスクへの警告を最近発したばかりだ。
国連パネルも「AIの進展が各国の政策立案を追い越している」と警告しており、OpenAIの自律エージェントが不適切にインターネットにアクセスするという問題も直近で発覚している。
同時進行する経済交渉の混乱
隣接するアッシュビルでは、財務長官Scott Bessentと元記事に記載のFRB議長がG20財務トラックを主導し、規制緩和・国内エネルギー増産・テック投資を「パンデミック後の世界債務353兆ドル」への処方箋として提示した。
一方、この財務会合ではロシアの財務相Anton Siluanovが2022年のウクライナ侵攻以来初めてG20に対面参加し、欧州各国の反発を招いた。ポーランド財務相は「ロシアは常に嘘をつく」と直言し、欧州代表団はSiluanovのG20公式集合写真への参加を阻止した。
Bessentはさらに中国を名指しし、1.2兆ドルの貿易黒字を問題視。「中国経済は弱体化しており、輸出で乗り切ろうとしている」として、内需主導への転換を求めた。
まとめ
AIの国際ガバナンスをめぐる構図は、技術的な議論というより地政学的な綱引きの様相を呈している。「規制はイノベーションを殺す」という米国と、「安全性なき成長は危険だ」という欧州・カナダの対立が、12月のマイアミ首脳会議で一つの決着点を迎える。コンセンサス方式を採用するG20において、議長国アメリカがどこまで各国の合意形成を主導できるかが、今後のAI政策の方向性を左右する。
詳細はU.S. Presses G20 for Light-Touch AI Rules and Economic Deregulation Ahead of Miami Summitを参照していただきたい。