9月2日、CNBCが「AI token prices are hitting new record lows」と題した記事を公開した。インテリジェンス企業Silicon Dataが算出するLLM Token Expenditure Index(LLMトークン支出指数)が月曜日に97セントまで下落し、今夏の高値から半値以下となる過去最低値を更新した。中国発オープンソースモデルの台頭と大手の値下げ競争が、構造的なトークン価格デフレを引き起こしている。
「指数97セント」が意味すること
LLM Token Expenditure Indexは、インテリジェンス企業Silicon Dataが昨年末に創設した指数で、ChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、Gemini(Google)といった主要LLMのトークン市場価格を日次で集計・指数化したものだ。1指数単位あたりの価格が下落するということは、主要モデルのトークン単価が全体的に下がっていることを示しており、APIや各種チャットボットを利用するエンジニアや企業のランニングコストが直接的に下がることを意味する。
なお、Silicon DataはAIコスト動向を専門に追跡するリサーチ・インテリジェンス企業であり、同指数はLLM市場の価格トレンドを定点観測するベンチマークとして機能している(※同社の詳細な調査方法論は公式サイトで公開されている)。
今回の97セントという水準は、指数創設以来の最低値であり、今夏の高値から半値以下に落ち込んだ計算になる。
価格下落の主因:中国オープンソースモデルと動的価格設定
スイスの資産運用グループSyzグループの最高投資責任者(CIO)であるCharles-Henry MonchauがLinkedIn投稿で分析した内容によると、価格下落を主導しているのは以下の2つの要因だ。
- Moonshot AIのKimi K3など、中国発のオープンソースモデルの台頭。フロンティアラボのモデルより低価格で利用できる
- OpenAIが7月末にGPT-5.6の2モデルで値下げを実施。他のフロンティアラボも需給に応じて価格が変動する「動的価格設定」を導入し始めている
また、モデル1トークンあたりの製造コスト自体の低下も、指数価格を押し下げる要因になっているとMonchauは述べている。
モデルベンダー側には「二重の圧力」
エンジニア視点ではコスト削減は歓迎だが、モデル提供側には深刻な問題をはらむ。Monchauはこう記している。
「フロンティアモデルラボが最も直接的なダメージを受ける。トークンデフレで収益は圧縮される一方、コンピュート投資の固定費は変わらない。戦略的な対応は明確だ。差別化の軸を、オープンウェイトモデルとの差がすでに数ヶ月単位に縮まった『モデルの生の性能』から、ディストリビューション・メモリ・コンテキストへとシフトさせるしかない。」
この状況は、AnthropicとOpenAIのIPO計画にも影を落とす可能性がある。元記事によれば両社はIPOに向けた動きを進めているとされているが、トークン価格の下落が続けば収益モデルの説得力が問われることになる。
投資家・市場への影響
NvidiaやMicrosoftをはじめとするメガキャップ企業が、AIインフラ拡張に数十億ドル規模の投資を続けている中、トークン価格の下落は投資利回りの再試算を投資家に迫るものでもある。記事によれば、この記事が公開された翌日(火曜日)、テクノロジー株が市場全体の下落を主導し、Nasdaq総合指数は約1%下落、S&P 500も約0.4%下落した。
ただし、この株価下落とトークン価格下落の因果関係については注意が必要だ。記事は両者を同日の出来事として並べて報じているが、株価下落の直接の原因がトークン価格指数の動向にあるとは明示されておらず、市場全体のマクロ動向も同時に作用している可能性がある。
LLMの利用コストがここまで急速に下がっていることは、日々APIコストを意識しながら開発するエンジニアにとって追い風だ。一方で、このコスト競争がモデルプロバイダーの持続可能なビジネスモデルをどう変えていくかは、業界全体の構造問題として今後も注視が必要だ。
詳細はAI token prices are hitting new record lowsを参照していただきたい。