9月1日、CNBCが「Apple enters John Ternus era as AI challenges and memory crunch intensify」と題した記事を公開した。Appleの新CEO John Ternusが就任初日から直面するのは、デバイス価格を押し上げるメモリ(DRAM/NANDフラッシュ)の供給不足と、OpenAIへの依存が続くApple Intelligenceの遅れという二重の重圧だ。今秋のiPhone発表を前に、ポストCook時代のAppleが問われている。
Steve Jobs、Tim Cookに続く3人目のCEOが誕生
9月1日付けで、John Ternusが正式にAppleのCEOに就任した。Steve Jobs(2011年退任)、Tim Cookに続くAppleの歴史上3人目のCEOとなる。Ternusは25年のApple在籍歴を持ち、直近ではハードウェア担当SVP(上級副社長)を務めてきた人物だ。カスタムシリコン・バッテリー・メモリアーキテクチャを長年専門的に追いかけてきたエンジニア出身のトップという点で、前任のCookとはキャラクターが異なる。
Cookは会社を去るわけではなく、エグゼクティブチェアマンとして引き続き世界の政策立案者との交渉などに関与する。これはTernusにとって一定の安全網となるが、「船を操る人物が誰か」という対外的なメッセージの複雑さも生む。リーダーシップ移行を専門とするコンサルティング会社KotterのCEO、Kathy Gersch氏は次のように指摘する。
「Tim Cookに通用したやり方が、John Ternusにも同じように通用するわけではない。会社は新しい環境に置かれており、進化と競争を続けなければならない」
三重苦:メモリ高騰・Apple Intelligenceの遅れ・OpenAI依存
Ternusが就任初日から直面する最大の問題が、メモリの供給不足と価格高騰だ。ここでいうメモリとは、主にDRAM(Dynamic Random Access Memory:高速な一時記憶に使われる半導体メモリ)とNANDフラッシュ(ストレージに使われる不揮発性メモリ)を指す。AIサーバー向けチップへの需要爆発がこれら半導体メモリの需給を急速に逼迫させており、Appleは2026年6月にMacBookとiPadの値上げをすでに実施済みだ。iPhoneについてはまだ値上げを発表していないが、多くのアナリストは今秋の発表を予測している。Cookは値上げ前にWSJの取材に対し「コスト増加を顧客に転嫁せざるを得ない」と明言していた。
この問題は短期では解消しない。メモリ・部品の供給不足は収まる気配がなく、ガジェット全般の永続的な価格上昇につながる可能性がある。
一方、AI戦略の遅れも深刻だ。OpenAIやGoogle、MetaがAI機能・スマートグラス・新型デバイスで攻勢をかける中、Apple Intelligence(Appleが展開するオンデバイスAI機能群の総称)の核心機能の一部はOpenAIへの依存に頼っている状態で、自社完結したAIプラットフォームの構築は道半ばだ。Siriの対話能力の向上もその一環として位置づけられているが、競合との差は依然大きい。
元記事によると、株価は2026年に入り約17%上昇しており、Androidライバル勢がメモリ不足に苦しむ中で市場シェアを伸ばしている。しかしKeyBancのアナリスト、Brandon Nispel氏(数少ない「売り」推奨アナリストの一人)はこう警告する。
「成長が販売数量から来るなら良いが、値上げによる売上増に投資家はプレミアムを払わない。持続可能ではないからだ」
9月9日のiPhoneイベントが最初の試金石
Ternusとして初の大舞台は9月9日のApple年次発表イベントだ。新型iPhoneとApple Watch(Appleが展開するスマートウォッチシリーズ)の発表が予定されており、新CEOとして初めて世界に向けてメッセージを発信する場となる。折りたたみiPhone(フォルダブル)も今秋登場との見方があり、価格は最大2,500ドルとの予測もある。
ハードウェアエンジニア出身のTernusに対し、Deepwater Asset ManagementのGene Munster氏はその専門性を評価する。
「プロダクト出身の人材を選んだことは重要だ。今後数年でTernusがやるべきことは採用の活性化であり、優秀な人材を呼び込むことだ。Appleはまだ自己変革を必要としている」
CookのAppleはAirPodsやApple Watchを世に出したが、業界を塗り替えるような製品は生まれていないという見方は根強い。Vision Proも販売は振るわなかった。現在はスマートホームデバイス、ロボット、AIカメラ搭載AirPodsなど複数の新カテゴリを開発中とされており、MacOSのベータ版にもその痕跡が見つかっている。
ただし、就任直後のTernusの発言は慎重だ。7月の決算説明会でアナリストから競争環境について直接問われた際、彼は「Timが言ったことを繰り返す」と答えるにとどめた。自らのビジョンを公の場で明確に語った機会はほとんどない。メモリ高騰とAI競争という急を要する課題を前に、新CEOが9月9日の舞台でどのようなビジョンを示すかが注目される。
詳細はApple enters John Ternus era as AI challenges and memory crunch intensifyを参照していただきたい。