9月2日、Techstrong.aiが「OpenAI, Anthropic Turn Apple Macs into AI Workhorses, Triggering Hardware Shortages」と題した記事を公開した。OpenAIとAnthropicがApple Mac miniを大量購入してAIエージェント訓練に活用し、深刻なハードウェア不足を引き起こしている実態について詳しく報じている。
NVIDIAではなくApple Macを選ぶ理由
OpenAIがここ数ヶ月で数万台規模のMac miniおよびMac Studioを調達したと、The Informationが報じた。用途はLLMの事前学習ではなく、強化学習(Reinforcement Learning)とAIエージェントの訓練だ。
具体的には、デジタルインターフェースを操作する・コードを書く・複数ステップのワークフローを人間のように管理する、といったタスクをこなすAIを開発するために使われている。競合のAnthropicも同様のアプローチを取っており、Amazon Web Services(AWS)経由でMac miniのキャパシティを調達していると報じられている。AWSはApple Siliconを搭載したMac専用のEC2インスタンス(Mac1・Mac2インスタンスファミリー)を提供しており、AnthropicはこのインフラをAIエージェント訓練のスケールアップに活用しているとみられる。
なぜNVIDIA GPUクラスタではなくMacなのか。鍵は**Apple M系チップのUnified Memory Architecture(UMA)**にある。
従来のサーバー構成ではシステムRAMとグラフィックスメモリが分離されており、データ転送のボトルネックが生じる。AppleのUMAでは、CPU・GPU・Neural Engineが同一チップ上の単一高速メモリプールを共有する。
AIエージェントの訓練では、画面を観察→操作→フィードバックを解析、という高速なフィードバックループをOSレベルで繰り返す。この「OSと継続的にやり取りするワークロード」においては、UMAのメモリアーキテクチャが標準的な並列計算環境より有利に働く。
新製品の技術的背景:M6・M5 Max/Ultraの世代進化
今回の需要急増を受けてAppleが前倒し投入した新製品には、チップ世代の大きな刷新が伴っている。
新Mac miniに搭載されたM6チップは、M4世代からの移行にあたる。Appleのチップロードマップ上では「M6」はM4の後継にあたり、プロセスノードの改善によってパフォーマンスと電力効率の双方が向上しているとされる。一方、新Mac Studioに採用されたM5 MaxおよびM5 Ultraは、M4 Max/Ultraの後継チップだ。M4世代と比較して、Neural Engineのスループット向上やメモリ帯域幅の拡大が図られており、複数のAI推論タスクを並列処理するワークロードへの親和性が高まっている。Mac StudioはUltra構成において複数のダイを高速インターコネクトで接続することで、単体チップの制約を超えたメモリ容量と帯域幅を実現しており、これが「複数台を連携させてより大規模なローカルAIワークロードを処理する」という用途に適している。
品薄と異例の製品発表前倒し
この大量購入は市場にも直接影響を与えている。Mac StudioおよびMac miniの高RAM構成モデルの納期が、2週間から約2ヶ月へと延伸した。業界全体のRAM不足と重なり、一般ユーザーの購入にも支障が出ている状況だ。
Appleは異例の対応を取った。通常は秋に行う製品更新サイクルを前倒しし、8月下旬に新Mac miniおよびMac Studioを発表した。財務面への影響も数字に出ている。AppleのMacセグメントの四半期売上は104億ドル、前年同期比29%増を記録した。この伸びの一部は、想定外の企業需要によるものだ。
Appleが直面する構造的な問題
この状況はAppleに独特の課題を突きつけている。もともとクリエイティブ職や一般消費者向けに設計されたMacが、大手AIラボの重要インフラとして機能するようになったが、Appleには専任のエンタープライズ部門が存在しない。
OpenAIとAnthropicが今回Macを選んだのは、あくまでも「AIエージェント訓練」という特定ワークロードへの適合性によるものだ。※編集部の考察:LLMのゼロからの事前学習にはNVIDIAのGPUクラスタが依然として主流とみられているが、元記事はこの点について明示的には言及しておらず、ユースケースごとのハードウェア使い分けが進んでいると読むのが自然だろう。自律エージェントの訓練には「持続的でメモリ負荷の高いOS操作に最適化された環境」が必要であり、そのニーズにたまたまMacが合致した形である。
Appleが大規模エンタープライズクラスタへの対応を戦略的に取り込むか、あるいはAIブームの受動的な受益者にとどまるか——その判断が今後の焦点となる。
詳細はOpenAI, Anthropic Turn Apple Macs into AI Workhorses, Triggering Hardware Shortagesを参照していただきたい。