9月1日、The Decoderが「Runway's Solaris is an AI system that generates software interfaces in real time」と題した記事を公開した。AIスタートアップRunwayが発表した「Solaris」は、コードを一切実行せずフレーム生成でUIをリアルタイムに描画する新カテゴリのAIモデルだ。その含意は単なる技術的新奇さにとどまらず、「アプリ」という概念そのものを問い直すものでもある。
「アプリ」という単位が消える?
Runwayが掲げる最も挑発的な主張から始めたい。「固定された単位としてのアプリが消える」というものだ。
現在は、買い物、メッセージ、予約といったタスクごとに専用アプリを開く必要がある。アプリのレイアウトや動作はリリースごとに固定され、ユーザーはその設計に従うしかない。しかしOSがその場で必要なインターフェースを生成できるなら、アプリを固定カタログに整理しておく理由は薄れる。Solarisはその世界への一歩目として位置づけられている。
コードを動かさずに、UIを「生成」する
通常のソフトウェアはこうだ。デザインをコードに落とし、OSがそのコードを解釈して画面を描画する。RunwayのSolarisはその前提を捨てた。コードを実行するのではなく、ユーザーの操作に応じてインターフェースをフレームごとに生成する。解像度は720p。クリック、ドラッグ、音声コマンドに対してモデルが直接応答し、画面を更新していく。
Runwayはこのアプローチを「Interface World Models」という新カテゴリと位置づけている。ここでいう「世界モデル(World Models)」とは、物理的・視覚的な環境の変化を予測・生成できるAIモデルの総称で、もともとロボティクスや強化学習の分野で発展してきた概念だ。Solarisはそれをインターフェース生成に転用した試みといえる。技術的な基盤は同社の動画生成モデルGen-4.5と、汎用世界モデルGWM-1の延長線上にある。
Runwayが示すユースケース
記事が紹介するユースケースは3つある。
- オンラインショッピング: 固定レイアウトの店舗ページではなく、ユーザーが商品を自分の写真にドラッグして試着できる、ユーザーごとに適応するショッピング体験。
- 家具・インテリアの可視化: 「テーブルを動かして」「ソファの色を変えて」といった音声指示に対してシーンがリアルタイムで反応する。
- チュートリアル・学習: チャットボットのようにテキストで答えるのではなく、次のステップを視覚的にその文脈の中で示す。例として「異なる素材を使った燃焼デモ」が挙げられている。
エージェント訓練環境としての可能性
Solarisをエージェント(自律的にタスクをこなすAI)の訓練環境として活用する構想もある。現在のAIエージェントがホテル予約のようなタスクで失敗しやすいのは、固定レイアウトで訓練されているため、実際のウェブサイトのバリエーションに対応できないからだと同社は説明している。Solarisは多様なUIパターンを動的に生成できるため、その問題を解消できる環境になりうるという考えだ。
業界的文脈
インターフェースをコードではなく生成モデルで描画するというアイデアはRunway固有ではない。MicrosoftはCopilot統合によるUI動的生成、GoogleはAndroidへのGemini組み込み、AppleはApple Intelligenceによるインターフェース適応をそれぞれ推進しており、「静的UIからの脱却」は業界横断的なテーマになっている。ただしSolarisはそれらとアプローチが根本的に異なる。既存のコード・レンダリングパイプラインを温存したまま生成AIを上乗せするのではなく、インターフェース全体をフレーム生成に置き換えるという点で、より急進的な立場をとっている。
※編集部の考察:競合が既存OS・ブラウザのスタック上で生成AIを活用するのに対し、RunwayはUIのレンダリング層そのものをモデルに委ねようとしている。この差異は「生成AIをツールとして使う」か「生成AIをインフラとして使う」かの設計思想の違いとも読める。
現時点での限界
記事は課題も率直に認めている。
「安定した読みやすいテキストの生成」が未解決の難問として挙げられている。インターフェースはテキストへの依存度が高いにもかかわらず、これが現状では難しい。長時間セッションの安定性も不明で、「正しそうに見えるが誤った結果」はまったく結果が出ないよりも悪いケースもある。スクリーンリーダーなどのアクセシビリティ技術との連携も未解決だ。
現時点ではリサーチプロジェクトという位置づけで、Runwayはパートナー企業を募集しており、フォームからアーリーアクセスに申し込める状態にある。
「インターフェースを生成する」というコンセプトは挑発的だが、テキスト描画の安定性という基礎的な問題が残っている点は、実用化への距離感を正直に示している。UIが毎回変わることをユーザーが本当に望むのか、という問いにRunwayはまだ答えを出していない。
詳細はRunway's Solaris is an AI system that generates software interfaces in real timeを参照していただきたい。