9月1日、The Next Webが「The US will ask the G20 not to build anything to govern AI」と題した記事を公開した。米国がG20においてAI統治のための新たな国際機関設立に反対する方針を打ち出した——単に「こういうルールにすべき」という主張ではなく、「ルールを書ける機関そのものを作らせない」という、より根本的な戦術だ。
「規制機関を作るな」——米国がG20でとった戦術
ホワイトハウス当局者がReutersに明かしたところによると、この立場はノースカロライナで9月2日から2日間開かれたG20会合に先立って表明された。会合にはOpenAIのSam Altman、NVIDIAのJensen Huangが対面で参加し、Elon MuskはビデオでジョインするというG20レベルの外交会議としては異例の顔ぶれとなった。議長役は商務長官のHoward LutnickとホワイトハウスのAI顧問Michael Kratsiosが務めた。
この会合は12月にマイアミで開催されるG20首脳サミットに向けた一連の交渉の皮切りである。今週示された米国の立場が、他の参加国が今後3か月かけて交渉するベースラインになる。
なぜ「機関設立阻止」が効くのか
G20自体に強制力はなく、規制機関を直接作ることもできない。しかし、G20が合意した言語(コミュニケ)は、各国の規制当局が国内で動く際に引用する参照点となる。国際的な監視に言及する文言が一度合意に盛り込まれれば、後から覆すのは首脳スピーチの撤回よりはるかに難しい。
米国はすでに2月のパリAIサミットでも同じ立場を取り、JDバンスが「規制でAIを麻痺させるな」と警告した。米国はその際、規制されたAI利用に関する国際声明への署名を拒否している。今回との違いはフォーラムの規模と政治的重みだ。
欧州・中国・途上国——各国の温度差
欧州はすでに米国が阻止しようとしているものを構築済みだ。EU AI Actは施行済みであり、Digital Services Actは主要プラットフォームへの執行が進んでいる。Cyber Resilience Actも今月発効した。マイアミで何かが合意されてもAI Actが覆るわけではないが、G20が「国際監視は不要」というコンセンサスを形成すれば、欧州の執行姿勢が世界標準の「テンプレート」ではなく「アウトライアー(外れ値)」に見えてしまうリスクがある。
カナダはイノベーションと公共の信頼・安全のバランスを求める立場を示しており、米国と距離を置く。中国は出欠すら表明していない。
途上国の事情はさらに複雑だ。AIモデルを自国で開発する能力も、AI産業を規制する行政体制も持たない国々は、国際標準の整備から最も恩恵を受けられる立場にある。共通の基準があれば、自国のデータ保護や安全要件を国際的な枠組みに乗せることができるからだ。しかし皮肉なことに、G20の交渉テーブルでそれを強く主張するための外交資本と交渉力が最も乏しいのも、こうした国々である。結果として、機関を作らないという米国の方針は、声の小さい国々の利益を構造的に後回しにする効果を持つ。
「今作ることへの懸念」には一理ある
記事は米国の反対論を公正に整理している。今ガバナンス機関を立ち上げれば、誰もまだよく理解していない技術を前提に設計され、すでに変わってしまった状況のために任命されたスタッフが運営し、一度設立されれば修正が遅い——そういうリスクは確かに存在する。
また、記事が「誰も正面から言わない競争上の側面」と指摘する点も重要だ。主要なAIモデル開発企業を国内に抱える国は、そうでない国と比べて国際監視から得るものが少ない。
さらにタイミングの問題もある。今週、金融安定理事会(FSB)の議長がG20財務相に対し、「AIによるサイバーリスクが金融安定への最も差し迫った脅威」と警告した。その警告を発したのが、まさに米国が温存させようとしている既存の多国間機関だというのは皮肉な構図だ。国連のパネルも別途、AIの発展が科学的理解と政府政策の両方を追い越していると警告している。
12月のマイアミまでに何かが動くか
G20はコンセンサス方式で動く。AI統治について何も書かれないコミュニケは、それ自体が「何も統治不要」という主張の勝利を意味する。
今後3か月の焦点は二つだ。第一に、米国が受け入れないと明言した文言を書き込むために外交資本を使う覚悟のある国がいるかどうか。第二に、その試みに対して米国がどこまでの妥協を示すか——あるいは完全に拒否するか——だ。現時点でその動きを見せている国は記事中に明示されていないが、欧州とカナダの立場が交渉の焦点になる可能性は高い。サミットまでの3か月は、AIガバナンスの国際的な構造を左右する交渉期間となる。
詳細はThe US will ask the G20 not to build anything to govern AIを参照していただきたい。